116 先入観
「物語にあるじゃないか。何もしなければお金になるものが湧き出る状況で我慢できずに弄くって台無しにする話とか」
「ああ、色々とあるな」
神様から授かったとか迷宮で見つけたとか、いろんなシチュエーションでそう言った不思議な道具の話は出てくる。
欲望を抑えきれずにやってはいけないという事をして何もかも失ってしまうって昔話だ。
子供達に聞かせる教訓的な要素って奴だな。
「リエルの意思を無視した命令というのは同じ事になりかねないのさ。リエルは自らが授かったスキルの重さをもう少し考えるべきだよ」
そんな事を言われてもな。
今まで散々ゴミだと罵られて来たのだから素直に受け入れるのは簡単じゃない。
先入観って結構根強いよな。
「という訳だリエル、他の勇者の加入は私が許さんぞ」
「僕もだね。死霊術士の加入はやめて欲しいな」
なんとも白々しい二人だ。
かといって他に二人と同じスキルを持った人物を仲間にするとして、二人のように話しやすい間柄になれるかというと……怪しいよな。
顔色を伺ってくるか命令してくる可能性が高い。
脅される事だってあり得る。
なら二人の要望を聞いておく方が危険が少ないし、無難かな。
手の内を真摯に見せて協力を申し出た二人な訳だし。
「善処するよ……っていうか、一応リーダーはルナスなんだからその辺りの虫除けはルナスが出来るでしょ」
「かといって私も常に君と共にいる訳ではないだろう。その間に姦計に――」
ってルナスが言おうとして途中で黙った。
続きを言ったら否定しただろうが、ルナスが何故黙ったのかわかるので微妙な心境だ。
「リエルだからねー。難しいんじゃない?」
なんだよその、人付き合いが下手くそだから俺じゃあり得ないって言いたげな顔は!
「話術や情報収集は得意だぞ!」
「他人を仲間に入れさせるような交渉は得意なのかな?」
「命じられれば出来る程度にはやれるぞ」
という所で、俺自身のスキル構成の話となって馬鹿にされた時の記憶が蘇る。
ちなみにルナスの場合は勇者って証明する証を持っている為に不要なんだ。
勇者になるって生半可なスキル持ちじゃなれないから、具体的なスキル構成を話す必要すら無い。
けどレンジャーとなるとどういったスキル持ちなのかとか話さないといけない。
プリーストや魔法使い、賢者とかなら使える魔法を見せるだけで良いけどさ。
ただ……これでも人は今まで嫌って程見てきた。
マシュアやルセンの例もあるし、警戒は強まってしまうだろう。
自然と俺は何処かで壁を作っているのかも知れない。




