113 食事
「それじゃあいただきます。あんまり深い祈りをすると冷めちゃうよね」
シュタインが祈りを軽くしてからチーズピザのハチミツ掛けを頬張る。
「うん。中々良い味付けをしてるね。把握って下に見る人いるけどリエルみたいながんばる人が持ってると中々侮れないね」
「それなりに質の良い食材だって事もあるけどな。それでも料理系のスキル持ちには敵わないさ」
「持ってても負ける怠惰な連中だっているんだから誇れば良いのにね」
「まったくだ」
「ヌマー!」
美味しいー! っとクマールは声を上げてくれている。
そんなに喜ばれると嬉しくなるな。
「もうちょっとハチミツを掛けて良いぞー」
「ヌマー」
ハチミツを追加投入するとチーズピザに小麦色の綺麗な蜜が大量に掛かる。
ケーキのハチミツ漬けとかクマールに食べさせたらどれだけ喜んでくれるか楽しみだな。
あんまり甘やかしすぎるのはいけないか?
ただ……クマールの食べられる物は確かに人が食べるものとあまり違いがないのはわかる。
「おいリエル、さっきからクマールに構い過ぎだぞ。私にも構ってくれ」
何を言っているんだ、ルナスは。
クマール相手に嫉妬は大人気無さ過ぎだろう。
「ルナスのリクエストじゃないか」
「パンプキンプラントの料理はこれだけか?」
「ああ、それは明日作ろうかと思ってる」
パンプキンプラントの実の部分は中々の量を確保出来ている。
まだ消費し切る事は無い。
ハチミツと合わせてパイにすると腹持ちがよさそうだけど今夜は量が多くなりすぎるだろう。
なんだかんだ小麦粉は迷宮で確保は出来ない訳だし。
「明日の献立も決まってるなんて楽しみだね」
「食料確保は冒険者なら当然だろ。レンジャーなら覚えて当たり前だ」
「それが出来てる冒険者ってのもそんなにいないと思うけどね。持ち込んだ食材を軽く炙って食べるとか簡易な料理で終える人も多いし」
「うむ……この辺りの食料確保はリエルのお陰で今まで助かっていたな」
マシュアやルセンがいる頃も冒険をしている最中に色々と俺が作っていたし、食糧確保もしていた。
さっさと行きたがるマシュア達は採取に関してブツブツ言う時が多かったけどな。
「美味しい食事は迷宮での精神の回復効果があるのだぞ。リエルのお陰で助かるな」
ここでふと、マシュア達と冒険していた頃のルナスを思い出す。
割と黙々と食べつつ『美味いぞ。助かる』って感じで一言二言の淡泊な感想だったっけ。
で、みんなが食べている所を輪から離れるとも言いがたい微妙な距離で遠くを見ていた。
今はそんな事をしなくなったけど、何か理由があるのだろうか?




