112 フライパンピザ
「あ、僕は灯りを出す魔法も得意だね。犬の使役魔を使う事にも長けるんだけど、仕事の関係で育てづらくてね」
シュタインが俺にじゃれるクマールへとちょっかいを出す。
「ヌマー」
クマールの方はシュタインに対してあまり興味が無いとばかりに軽く鳴いて俺にじゃれる動作を続けている。
「おや、つれないね。犬には割と懐かれるんだけど」
「クマールはタヌクマって東の方に生息する魔物らしいからなー。犬じゃ無いって事なんだろう」
犬っぽいのにどうも違うみたいなんだよな。
こう……小型のクマみたいな特徴もあるし……ちなみに撫でた感覚だとお腹がふかふかでありながら張りがあってポンポンと軽く叩くと喜ぶ。
リズミカルに叩きたくなる。
「処分されそうになっていたのを購入したのだ。リエルとほぼ同じスキル構成なのだぞ」
「へー僕が隠れてたのに気付きそうになっていたし、ファーストスキルが把握って所かな」
「ああ」
「ちょっと侮り過ぎて気付かれかけて焦ったよ」
一応、クマールの方が俺より把握の力は強くなる可能性が高いからなぁ。
既に俺より一部分は上って事なのだろう。
「ヌマー」
そんな訳で干し肉を水から煮出し、一緒にパンプキンプラントの実の一部も煮て簡易スープにして、途中で見つけた薬草でサラダも作成……事前に小麦粉を練ってピザ生地を作ってフライパンに載せてフォークで穴を開けて片面を焼いてひっくり返し、チーズを乗せ干し肉を刻んでベーコン代わりにして蓋をしてじっくりと焼く。
把握で上手く焼ける所を確保すればフライパンでピザを焼ける。
もちろんルナスに頼んで火力は適度に調整するぞ。
「よし、完成っと。ルナスのリクエストであるチーズピザのハチミツ掛け」
本日の目玉料理をみんなの前に差し出す。
「ヌマー!」
クマールがキラキラとした瞳で、作ったチーズピザのハチミツ掛けを見て涎を垂らしている。
ハチミツが好きみたいだからな。きっと気に入ってくれるだろう。
「おおー宮仕えの冒険者パーティーでもここまでの代物をホイっと出せるのは中々居ないよ」
シュタインが感心したように言う。
「そうだろうそうだろう。リエルのこれは絶品だぞ」
我が事のようにルナスが自慢している。
みんなを支えるために色々と覚える合間に習得した料理なんだけどさ。
こう言った場だからこその味の補正があるのは自覚している。
把握による評価は上々って所だ。
ただ、城下町の料理店には劣る出来だという自覚はある。




