106 善悪内包
「よーし、では行くぞー!」
「はあ……」
ルナスとシュタインは気が合うのか検証とばかりに今度はフレッシュゾンビ化した俺と一緒に近接戦闘を始める。
「君は棺桶の近くで待機してないと危ないよ」
「ヌマー……」
クマールがルナスと一緒に戦う俺の身体を見つめている。
ああ……すまない。
俺は幽体離脱状態で棺桶の上に漂っているんだけどな。
死んだフリ仲間であるから体があんな風に使われている事が気になるんだな。
その気持ち、本当によくわかるぞ。
「はああ!」
ルナスがストーンゴーレムをあっさりと切り飛ばし、ガーゴイルを俺の体がクロスボウで乱暴に射貫いて隙を作って殴りかかって倒して戦闘は終了した。
「うむ。やはりリエルの速度は普段の二倍くらいだな。死んだフリをする事で私の勇者の怒りを発動させ、少年の死霊術で身体は無敵且つ二倍の動きを見せる。実に有効的な戦術だ」
「まあ……そうなんだろうけどさ」
「リエルの死んだフリが引き金で起こせる、他に無い運用方法なんだよ。これでどこまで行けるか見物だね」
「実に素晴らしい」
「ちなみにゾンビ化したリエルの肉体は独自の経験値も加算されるからそっちのLvも同時に稼げるよ」
俺の身体は使役魔か!
いや、ネクロマンサーからしたらゾンビは使役魔なのか?
ああ、クマール、俺もある意味お前と同類となってしまったな。
なんで俺がシュタインの使役魔なんかに……俺はどこへ向かっているんだろうか。
などと思いながらどんどん俺達は迷宮内を進んで行く。
そうして……マシュア達と決別した迷宮の32階へと戻ってきた。
「ここはグレーターデーモンが出てくる階層だったっけ」
「うむ。少年も来た事はあるのかね?」
「何度かね。教会と国の合同で宮仕えの勇者パーティーと一緒に来てLv上げをしていたよ。3人と一匹だとあの時よりも稼げるんじゃないかな。僕も死霊術の強化をしておきたいね」
「とりあえずこの階層でクマールと少年のLvを底上げしてから潜って行こうではないか。何、そんなに時間は掛けず潜れば良いさ」
って感じで前回潜った時と同じくルナスの魔法で秒殺しながら時々俺をゾンビ化させて近接で戦ってグレーターデーモン達を蹂躙していった。
「少年は聖なる魔法は使えるのかね?」
「一応使えるよ。じゃないとこっちの魔法が本命だって隠せないからね」
「ふむ……墓守とは不思議なスキルなのだな」
「墓守は墓場の番人って意味のスキルだからね。アンデッドの善も悪も内包しているんだ。ターンアンデッドも得意だし、ネクロマンシーも使えるよ」
光と闇の魔法の両方を使える希少スキルか。
本当に凄いスキルだな。




