102 無限無敵ゾンビ
「リエルが嫌なら私も強く言う事は出来ん……君が影のリーダーなのだからな」
「ふふふ……僕が諦めると思うかい?」
ルナスが妥協を見せた所でシュタインが不敵に答えやがる。
出来れば諦めて欲しい所だけど、隙あらば使いそうだな。
かといってシュタインを口封じに殺すとかそんな物騒な考えをするつもりもない……けど、コイツ、一度やると決めたら諦めるって事が無いのを知っている。
というより頼み込めば許可してもらえる話だからこそ頼んでくるんだ。
「ね? 結局はリエルが決定権を持っているんだからさ」
「はぁ……断っても絡んで来るんだろ。成功したらどうするんだ?」
「これからよろしくお願いするよ! リエルお兄ちゃん! 僕もできる限りこのパーティーで協力させてもらうよ」
「誰がお兄ちゃんだ! そんな死んだフリを望む弟キャラは嫌だ」
本当、笑えない冗談ばかりぶちかます奴だよ。シュタインは。
「無限無敵ゾンビリエルの誕生……なんとも魅力的だと思わない?」
いや、そんなロマンを語るみたいな口調で言われてもな。
シュタインの感性がよくわからん。
本当、拒んでも来るだろうし……。
「ルナスが居れば戦闘はすぐに終わるってのに……」
少なくとも迷宮の34階までは圧勝だし、俺の見立てでは40階より先の階層でもしばらくは戦えるはずだ。
そこで当初の予定通りLvを上げて行けばより強くなっていけるはずだ。
「出来る事は多いに超した事はないでしょ。そもそも迷宮の深い所で僕と同じ死霊術を使う相手と出会ったらどうするつもりさ」
「なるほど……確かにそうだな。ネクロマンサーに君が使われる危険性は大いにある」
「死んだフリを任意解除すれば術も解除出来るだろ」
おそらくそれは出来ると思う。
解除と同時にまた死んだフリをすればルナスが術者を仕留められる。
「さすがリエル、頭良いね。対策がすぐ出てくる」
「褒めても頷かないぞ」
「単純に手数が増すって事でさ……ついでに僕を仲間にしておくれよ」
「前置きをしなければ幼なじみって事で頷いたんだがな……」
「あらら、手の内を見せたせいで失敗か」
別に失敗って訳じゃないけど……まあ、マシュアやルセンみたいに俺を無能だと見てないから良いのかね。
こちらの事情も知っているし、上手く抱え込めれば色々と優遇してくれる奴ではある。
だからこそ頷かざるを得ないんだけどさ。
「はぁ……わかったよ。シュタイン、お前の事だから手の内を開けた風だけど、他にも何か裏があるんだろ? ルナスの抹殺に金を積まれていたって所か?」
ドラーク残党がそんな回りくどい手を使うとは思えない。
単純に暗殺目的が大きいのが真相だろう。
仕事に私情は挟まないとは言いつつ問答無用でルナスの抹殺をしなかったのはシュタインなりの配慮だろう。
「あらら……リエルは騙せないね」




