101 一流の戦士
事情を説明してきた所で薄々感じてきた事を提案してきた!
「何を言っているんだ、君は!」
そうだそうだ!
別に俺は死んだフリをしているだけであって、本当に死んでいる訳じゃないぞ。
勝手にゾンビ扱いするな。
「ルナスさんにも悪い話じゃないと思うよ? だってゾンビ状態とは言えリエルと一緒に魔物と戦えるんだよ? リエルは無敵ゾンビだから傷を負わないし」
「ふむ……」
「ね? 想像して見てよ」
「悪くない……」
おい、ルナスさん、懐柔されないでくれよ。
そんなルナスが納得した様に言った。
「確かにリエルが棺桶に入っている時は絶対防御と呼べる程の耐久性を持っているのは間違い無い。ドラゴンの炎さえ受けてもリエルは気づいてすらいなかった」
ルナスさんよぉ。
ここに来てそんな新情報を言わないでくれないかな?
あの戦いで俺の棺桶はドラゴンの炎に包まれていたのかよ。
「それが死者の無敵状態と類似した現象なのは認めよう」
「でしょ? 上手く行けば僕は最強のネクロマンサーなんだよ」
お前も最強か。
死んだフリで最強になる相手はルナスだけで十分間に合っているんだが……。
「リエルもさ、前回受けた依頼でもどこかで隠れて死んだフリしていたんでしょ? 僕が操ればリエルは前線で戦う一流の戦士だよ!」
その内情は戦士というよりは無敵状態で殴り掛かっていくバーサーカーのソレだろう。
同時に態々隠れなくても、周囲が勝手に戦士扱いしてくれて、俺への評価が変わる事も期待出来るが……釈然としないな。
まあ仮に死霊術が上手く掛かったら、だが。
「ふむ……」
「ふむ……じゃないだろ」
嫌な予感が当たったぞ。
死んだフリの俺に死霊術を掛けたらどうなるかって好奇心を満たしたくなっただけじゃないか。
挙げ句、頑丈なゾンビをずっと使っていたいって、これを許可したらずっと俺は死んだフリをし続ける事になりかねないぞ。
「だが悪い話では無いぞ。上手い事少年に協力してもらえば死んだフリを隠した状態でも、君が強力な存在だと周知させられる」
「そうだね。上手く死霊術が掛かった場合、僕の魔力とリエルの身体能力が合わさって……生前よりも能力が上がって戦えるのは間違い無いよ」
「……言い訳をせずに素直に言え」
「私との共闘、戦いを楽しむのに素晴らしいと思わないかね? 君も棺桶からずっと見ているだけよりも心苦しさが緩和すると思うぞ」
「特には……というか上手く行くかどうかわからないぞ」
「そこを実験するんじゃないか。まだこの階層ならリエルでも戦えるんだろう?」
そりゃあ手こずるけどこの階層ならまだ戦えるって所だ。
シュタインの望む無敵ゾンビ状態を維持し続けられるかの実験も出来るとは思うけど、それを認めて良いのか?




