100 死霊術
これは確かに世間体が悪いスキルだ。
執行人とか国に認められてないと話にならない。
邪悪な死霊術士って処分されそうだぞ。
そりゃあスキル構成なんかを周囲に教えられない。
国や組織からの評価には大分差があるけど、ある意味ルナスと同じか。
「ちなみにリエル、ルナスさんが言ってるかわからないけど、勇者の怒りはちゃんと信頼する仲間じゃないと万全な能力を発揮出来ないからね。味方を使い捨てするような外道勇者とは強さに差があるんだ」
へー……いや、知ったとしても参考になるようでならないんだけど。
とはいえ、そりゃあそうだと納得する部分もある。
特に親しくも無い加入直後の仲間が死んだ程度で発生する怒りなんて、そう大きいモノじゃないはずだ。
多分だけど、家族とか恋人とか親友とか、その関係性が深くなればなる程、効力が上がるんだろう。
「なんとも厄介な。残念ながら私はそんな外道ではないぞ」
マシュアとルセンの事が脳裏を過ぎるけどアイツらの方が悪いわけだし、アイツらは俺を謀殺しようとしたのだから気にする必要は無いな。
「うん。それはリエルとの組み合わせでわかってたし、実際にこの目で確認もしたからね」
でさ……とシュタインは面倒そうに頭を掻きながら答える。
「ここからが本題なんだけど、僕さ、実は腐ったゾンビって臭くて嫌いなんだよね。とはいえこんなスキルを授かっちゃったしねぇ……でも、この仕事も好き好んでやってる訳じゃないんだ」
シュタインが指を鳴らすと魔物のゾンビは糸が切れたように元の亡骸に戻る。
優秀なスキルを授かっても、こんな悩みがある訳だ。
ルナスもそうだけど、エリートはエリートで色々大変なんだな。
そう考えるとマシュアやルセンみたいなスキル構成の方が精神的に安定しているのかもしれない。
「だが、君は仕事としてやらなきゃいけない事なんだろう?」
「まあね。で、常々思っていたんだ。ああ……ずっと使える無敵の新鮮で強力なゾンビが居ないかなぁってさ」
シュタインが俺に顔を向けるのが分かる。
……うん。話の流れ的に何をしようとしているのかわかってた。
「だから面白そうな事をしているリエル達に混ぜてもらおうと思ってこうして出てきて事情を説明したんだ」
「お前ってそういう奴だよな……昔から色々教えてくれるけど大抵裏があるんだ」
外道冒険者を暗殺する部署の執行者であるという機密を話したのも、自分の要望を頷かせる為だ。
そうでなくても教会の利益の為にルナスを取り込む準備として、色々と話したんだろう。
今回の裏の目的は――自分の私利私欲と。
「リエル、死んだフリをしている君にさ、死霊術掛けて見て良い?」




