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クラシックロード  作者: 瀬戸星都
9/10

第009話 サトリ

「正気じゃないな」


 目の前のゴレムは白目を剥いており奇声を発している。またゴレムのギフトである肉体の強化は数時間前に見た時よりもさらに倍ぐらいに膨れていた。間合いをとりながらどうするか考えていたところ、シアが背中から二本の小太刀を抜いた。


「ここは私が受け持つわ。二人は先に行って」


「大丈夫か?おそらく俺が戦ったときより凶暴になっているぞ?」


「問題ないわ」


「わかった。油断はするな。何かあったら俺かカイルを呼んでくれ」


 通信を終えるとフレイヤに目配せし、ゴレムの横を駆け抜けようとする。


「ウガァァァ!」


 当然のように迫ってくるゴレムの攻撃に対してシアが間に入った。二本の小太刀を眼前でクロスさせるようにしてゴレムの一撃を受け止める。その隙にフレイヤとともに無事走り抜けた。そのことを確認するとシアはゴレムの方に集中した。


「アナタの相手は私。遊んであげるわ」


「グガァァ!」


 理解しているのかしていないのか、ゴレムはリックを諦めて敵意をシアに向けて攻撃を繰り返し始めた。シアはそれを同じように二本の小太刀で防いでいた。ゴレムの力押しの攻撃に徐々に握力が奪われていく。


「くっ、流石に攻撃が重いわね。このまま受けるのは得策じゃないわ」


 シアは自分にだけ聞こえるぐらいの声で呟いた。


 相手が正気じゃない以上、人間らしい隙をつくのは難しい。アドレナリンが過剰に出ていて痛みに反応しなかったりスタミナ切れが起こりにくい可能性もある。


「早速で悪いけど、すぐに終わりにさせてもらうわ」


 男と女の体力や筋力の差については自覚がある。短期決戦に持ち込むのがいい。


「プレディクション」


 そう唱えた瞬間、シアの目にはゴレムの次の攻撃の軌道が見えていた。


「右ストレートの確率…95パーセント」


「左フックの確率…98パーセント」


 シアは呟きながら次々とゴレムの攻撃を受け流し始める。


「右ミドルキックの確率97パーセント」


 シアはバックステップで一歩下がると、ゴレムの蹴りは空を切った。


 超高速予測演算。それがシアのユニークスキルだった。筋肉の動き、重心、視線、コンビネーション、ありとあらゆる情報から次の攻撃を予測する。


 「グッ、グヌヌッ…」


 悔しそうなゴレムを前にシアは薄っすらと笑みを浮かべていた。


 「ほら、まだまだよ」


 ゴレムに次の攻撃を誘ってはシアは当然のように攻撃を躱す。


 その流れるような動きに、初めは苛立ちを覚えるゴレムだったが、それはやがて恐怖へと変わっていく。繰り返す攻撃がただの一度も当たらないのだ。


 遊ばれているようにも思える感覚。全てを見透かされているようで、次に何をすればいいのか思考が追いつかなくなってくる。

 

 フラストレーションによる精神的な疲労のせいか、気づけばゴレムの動きは徐々に緩慢になってきていた。しかしゴレムに自覚はなかった。シアもゴレムの動きに合わせて攻撃を躱すスピードを徐々に落としていたからだ。


 「そろそろね」


 シアがそう呟いた瞬間、トップスピードでゴレムの背後に回る。ゴレムにとってはその場から消えたようにしか見えなかった。ゴレムが振り返る間も許さず、シアは二本の小太刀でゴレムのアキレス腱を斬った。


 「私の攻撃が当たる確率、100パーセント」


 「グォァオァオアァオ!!」


 つんざくような叫び声とともに、支えられなくなったその巨体は大きな音を立てて地に伏した。


 「死にはしないだろうから大人しくしておきなさい。まぁその足では動きようもないと思うけれど」


 シアはそう言うと、小太刀を背中に戻してリックを追うのだった。



 シアがゴレムを倒す少し前――、リックとフレイヤは廃墟の最奥を目指して走っていた。


「よかったのですか。すごく大きくて強そうなでしたが……」


「確かに何かしらドーピングしているようではあったが、シアなら問題ないだろう」


「お強いのですか?」


「あぁ。強い…、そして怖い」


「怖い…?」


「そう。シアの能力のせいもあるんだがこちらの行動がすべて読まれてしまうんだ。そして気づいたら全てを支配されているような感覚に陥る。それに…」


「それに?」


「なんか、戦闘が始まるといつもはあまり喋らないシアが段々と饒舌になってくるんだ。そして口調が何となく女王っぽい?」


「クスッ。全然そうは見えませんけど」


 フレイヤは信じてないよう少し笑って、シアさんはお淑やかですし、なんて言っているが、そんなこともないんだよな、と思いながら先を急いだ。


 ゴレムと相対した後からは特に誰と遭遇することもなかった。少し手薄過ぎるような気がしなくもない。何か罠があるのかとも思ったが何事もなく最奥の部屋の前までたどり着いていた。部屋の中からは気配が感じられ、もぬけの殻ということはなさそうだ。


 「じゃあ、いくぞ」

 

 「はい!」


 フレイヤに声をかけると勢いよく部屋の扉を開けた。



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