私たちの日常
気晴らしに書いたものを放出。
短めで終わります。
本日は2話更新。
テーブルには「とにかく朝は軽くとりたい」という私のために、ひとくちで食べれるサンドイッチを数種類とホットコーヒーが用意されていた。
旦那様の愛情に感謝してパクパクと食べて、歯をみがき軽くメイクした私は、ベランダにいるであろう彼に声をかける。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい!」
今日の降水確率は0%だ。
彼のことだから、きっとお布団を干してくれるんだろう。自然とにやけてしまう顔を引き締めるように、自分で頬を軽く叩いて外に出る。
「りっちゃん!」
二階のベランダから顔を出したのは、日の光で薄茶色に見える短髪に、ほんわりした笑顔を浮かべる好青年。ひかえめに言ってイケメン。切れ長の(糸目ともいう)目をしているけど、誰がなんと言おうとイケメン。
そう、彼は、私が世界で一番愛している旦那様なのだ。
友人に言わせると「雰囲気イケメン」らしいけどね。まぁ、旦那様の魅力は私だけが知っていればいいから、反論はしないよ。へへへ。
蕩けるような笑みを浮かべた旦那様は、緑と青の毛玉を投げてよこした。危なげなく受け取る私、ナイスキャッチ。
「忘れものだよ!」
「でも、この子たち拓人さんの……」
「だめ! ちゃんと持っていって!」
受け取ったのは、手のひらサイズの小鳥と仔猫。
色々と思うところはある。でも、置いていったら旦那様に怒られそうだし、ちゃんと両ポケットに分けて入れておく。
そんな私を見て、旦那様は満足げにうなずいた。
「今度こそ、いってらっしゃい!」
「ありがと! いってきまーす!」
走り出す私の足に、風がふわりと流れるのを感じる。
駅までの道を軽やかに駆けていく私。そんな姿を知り合いが見たら、きっと私のことを「若いなぁ」「元気だなぁ」なんて思うだろう。
実際は若いどころじゃない。この状態なら全力で走っても、息ひとつ乱さないんだよね。
『ピピッ!』
左のポケットの中でさえずる小鳥を撫でてやれば、嬉しそうに羽をうごうごさせている。羽毛がふわふわでかわいい。
緑の風に助けられ、いつもより早く駅に着く。春とはいえ強い日差しにうんざりしていれば、冷んやりとしたミストシャワーが肌にかけられる。
『みぃーみぃー』
右のポケットで仔猫が鳴く。指でそっと顎の下を撫でてあげると、ゴロゴロと喉が鳴っていてかわいい。ロシアンブルーで水色の目が撫でるたびに細くなる。ふんわりした毛並みにも癒されるね。
駅に着いて、電車がくるまでの数分。他の人が暑そうにジャケットを脱いだり汗を拭っている中、私は涼しげな顔で立っていた。
水分を含んだ涼しい風が「私の周りだけ」快適な状態にしてくれているのだ。
「旦那様に感謝だねぇ」
『ピー!』
『みぃー!』
私の一日は、こうして始まる。
旦那様が契約しているモフモフな「精霊たち」と、ともに。
お読みいただき、ありがとうございます。