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52.試練の説明を受けて……

《前話のあらすじ》

 [統一最強決定戦]に優勝したウルティナたちは、最後の試練を受けるためにアルトゥのところへ行った。

 アルトゥから試練の説明を受け、試練は始まる……。


(今回から試しにいれてみます)




 目を開く。

 横たわっていた上半身を起こして、立ち上がる。

 辺りを見回すと、どこか見覚えのある風景が広がっていた。


「ここ、森ですわよね。大陸の東にある」

「……う、ん。俺、も……そ、う……思、う」


 ウルティナの呟きに、どうやら目を覚ましていたらしいセクリアが同調した。

 もう一度、今度は近くに一周目を通してもフィーディーの姿すらないことから、本当に今回は二人のみでの行動になることが理解できる。

 なぜか新しい焚き火の跡はあったが。


「……この、焚き火……は……?」

「以前の最終試練の方のものなのかもしれませんわね」


 試練は明日にしよう、とアルトゥに言われ、眠りにつき、沈んだ陽が昇って。

 洞窟の最深部にて試練を開始した。

 もちろん亜空間に精神体のみ送りこむため、アルトゥの指示に従い、用意されていた敷き布団の上で横たわり、また眠ったはずだ。


「フィーディーもいませんし、ここが最後の試練の会場、ということでしょうね」


 とどのつまりは、そういうことなのだろう。

 最後の試練は、最初ウルティナがこちらの大陸にやってきて旅した場所で執り行われるらしい。

 東の森を亜空間に作り出した、といったところだろうか。



 とりあえず、最終試練の内容を考えることにした。

 ウルティナが前の世界で受けた高校受験の入学試験問題は紙を見れば一目瞭然で試験の内容がわかったが、最終試練ではパッと見でわかるようなものではない。

 アルトゥも試練の内容は教えてくれなかったし、自分たちで見極める必要がある。


 ポシェットに入ったメモ帳を取り出して見る。


「アルトゥは、手に入れられる地位にふさわしいかどうかと、地位につくだけの実力があるかどうかを調べる、って言っておりましたわね」


 メモ帳にはアルトゥの話をきちんとメモしていた。

 他にも、うさぎの人形からウルティナの[固有武器]、[紅之指揮棒(ルーフス=リネア)]まで入っていることから、試練の始まる直前に身に付けていたものは全て試練で使えるようだ。

 セクリアの[固有武器]も彼の腰に下げられているし、戦闘になっても十全の力は発揮できるようになっている。フィーディーはいないけれど。


「……ここ、が……東、の森……な、こと、に……間違い、ない、……はず」


 ウルティナがこの大陸に来る前から森をさまよっていたセクリアはほぼ確信をもって頷いている。


「なぜわざわざこの森を選んだか、ですわよね。亜空間ということでしたら、見覚えのない場所を作ることも可能でしょうし。実力を測るのならば、そこを探索して踏破する方法の方が良さげな気もしますが。

 そうしますと、地位にふさわしいかを調べる、といったところに鍵がありそうですわね」

「そ、う……だね」


 服についた土を払う。

 隣で、セクリアが立ち上がった。


「二人でこの森を踏破して、もう一度[統一最強決定戦(ディナトティシム)]に勝て、ということでしょうか。力も測れそうですし。

 地位にふさわしいかを調べるのなら、[統一最強決定戦(ディナトティシム)]優勝後にいくらか集落を治めろ、というのもありそうですわね」

「治める……うん。あり、そう。

 ……一回、南地区に、行って……みる?」


 セクリアの提案に、ウルティナは「そうしましょうか」と肯定する。



 山までは案外近かった。

 しかし二人の考えは、山に入って少しして違うことがわかった。


「道が、途切れている……?」

「……空間、が、ない……ね」


 南地区へ繋がっているはずの山が、山に入って一時間(アード)もしないうちに切れている。

 これ以上踏みこむと落ちてしまいそうな、空間の断崖絶壁になっている。


 どうやら、[統一最強決定戦(ディナトティシム)]にもう一度参加する内容ではなかったみたいだ。


「……力、測る、なら……師匠、とか……?」


 考えるセクリアがこぼした言葉に、ウルティナはたしかにと手を叩く。

 力の計測には、師匠であり一度も勝ったことのないアルトゥと戦うのはありそうだ。


「師匠と戦い勝つのが試練の内容なのだとしますと。

 とても厳しいものに、なりそうですわね」


 顔をしかめているのは、アルトゥに勝つビジョンが見えないから。

 なにせアルトゥと本気で戦ったことなど、これまで一度もない。

 初めて対面した直後の戦闘も、アルトゥは余裕綽々とした雰囲気だったことを覚えている。


「……えと、……洞窟、行って……みる?」

「そうですわね。今の段階でこれ以上、考えつくことなどありませんし」


 間違っているならば、最悪森のなかを隅から隅まで探索しつくせばいい。

 あるいは、アルトゥが洞窟にいれば、試練について何か聞き出せるかもしれない。


 まだ師匠と戦わなくてはならないと決まったわけではないのだと、ウルティナは自らの心に手を当てる。

 計画の終わりまで、あと少しなのだ。

 ここで試練に受かれず失敗するのは、避けたいところ。



 セクリアが《無情に変わらぬ道標(みちしるべ)》で出していた方位磁針を頼りに、来た道を戻る。

 いくら一時間(アード)前に通ったとはいえ、方位磁針なしでは迷ってしまいそうな山道をしていた。


 東、東へと進み、山を出る。

 来たときと同様、一時間(アード)ほどで出ることができた。

 そのまま洞窟の隠された入り口へと歩を進める。

 亜空間だが、洞窟は隠されていた。


「セクリア、いきますわよ」

「……う、ん」


 魔力をこめて、隠蔽を解く。

 セクリアは突然の魔力の大量消費に、しかし慌てることはなく平常心を保てていた。

 彼も慣れてきたのだろう。


「さて、入りましょうか」


 深呼吸をする。

 これから待ち受けている過酷かもしれない試練に、心を震わせる。


 二人は洞窟に足を踏み入れようと、して。

 ふと聞こえた足音に、ウルティナは立ち止まった。




「……お姉、様……?」




 鼓膜を叩いたのは、かつての懐かしい声。

 真っ青になったウルティナが振り向いた先にいたのは。



「……クリアン」



 義理の妹にして聖女候補。

 クリアン・ティオ=サタナス。


 どうやら以前の試練を受けたものが残したと思った焚き火は、クリアンのものだったらしい。



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