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51.[統一最強決定戦]で優勝して……

 四章開始です!



 試練はどうやら、大陸東にあるどこかで行われるらしい。詳しい場所は内密とのこと。どこかを探すところも最終試練を受けるための審査の一つであるということだ。

 だが、どのような場所であるかだけは伝わっていた。いつかの時代の[統一最強決定戦(ディナトティシム)]優勝者が、さすがにわからないと文句をもらしたのかもしれない。


「あのあの、東のどっかで行われるんだって」

「うんうん、東にあるどっかの()()で」


 洞窟、というワードに、ウルティナ・コロン=ルーフスとセクリア・コロン=ルーフス、フィーディーの脳裏に同じことがよぎった。

 ついでにかの洞窟の主らしき魔物は、洞窟の奥に秘密があると言っていた。秘密のなにかを守る守護者である、と。


 そうしてウルティナたち二人と一体は、東地区へ向かうことにした。優勝者あるいは優勝ペア以外が試練の場所へ行くことは禁じられている。

 ウルティナたちが長となった、東に一番近い集落の自治は元集落長らに任せた。他の集落は今まで通り治めるよう言い残した。

 ちなみに食料は、用意してもらうことができ、特に心配することはない。


 南と東を区切る山を越える。

 ここまで来れば、目的の地はすぐそこだ。


 いつぞやと同様、けたたましい音をたてて入り口をこじ開けると、一行は中へ入っていく。ちなみに今回のウルティナは、鉱石を収集することなく奥へとまっすぐに向かっていた。

 まるで、鉱石に気を取られている暇などないといわんばかりに。

 彼女の心に余裕がなくなりつつあることを感じつつも、セクリアは何も言うことができずただ明るく振る舞うフィーディーに合わせるのみだった。




「さて」


 見かけ上の最深部にたどり着き、入り口のときと同じように手を前につきだす。

 バリイィィイインッッッ、と体感四回目の音。本当の最奥が姿を現した。


「やぁ、久しぶりだね」


 洞窟の守護者を名乗る[超級-Ⅱ]の銀狼魔物、の、なぜか人の姿状態の。

 アルトゥ・アミューシオが笑顔で手を振っていた。


「えぇ、お久しぶりですわ。一ヶ月(マンス)程しか開いていない気もしますが」

「……久し、ぶ……り、です……師匠」

「久しぶりー、です☆」


「うんうん、みんな元気みたいで嬉しいよ。ま、君たちの戦いは全部見ていたんだけど。

 見事優勝してくれたみたいで、本当に良かった。負けることは万に一もないと踏んではいたけどね?」


 ウルティナたちを最奥の広間に招き入れながら、アルトゥは一つ、手を叩く。


「そして、おめでとう。この場所を見つけることができた時点で、最終試練の受験資格の要項は全て満たした。

 僕としては、大事な弟子たちと楽しく世間話でもしたい、なんて思ってる」


 遥か昔から生を刻んできた[超級]の魔物には、どうやらウルティナの隠れた焦燥も見抜いているようだった。

 けれども、と彼は目を細める。


「それは試練を終わらせてからのお楽しみにしようか。セクリアはウルティナに付き添っているようなものだからいいとして。

 ウルティナはここに試練を受けに来たんだろう? 愚かにも短き人の一生にせめてもの欲を満たすために」


 復讐は、何も産み出すことがない可能性を大いに秘めている復讐は。ウルティナの選んだ今世の生きる道は。

 アルトゥからすれば、きっと、無駄に短い一生を費やしているようにしか、見えていないのかもしれない。


 だとしてもウルティナは、自らの人生を賭す覚悟で駆け抜けてきた計画を、今さら放り出すつもりはない。


「――えぇ、その通りですわ」


 だからウルティナは、無理にでもふてぶてしく笑う。


「じゃあ、試練の説明をしてしまおうか。君たちの準備ができ次第、すぐにでも始められるようにね」


 少しだけ、広間の雰囲気が塗り替えられたように感じた。

 最近の自分の不出来さから気をそらすために、息を呑んで耳を澄ませる。



「まずは試練とはどのようなものか、について。の前に、僕のことについて話しておこうか。君たちが大会で優勝する前には秘密にしていたこと、だね」


 前には進めていたと、されどなぜこの大陸に来たばかりのときのように胸が高まらないのだろう。


「僕は洞窟の守護者。そして世界の守護者の一人でもあるんだ。詳細は試練に関係がないから省くよ。もし気になったら試練の後にでも聞いて欲しいかな。最終試練の受験資格を勝ち取った君たちには、知る権利がある。今は試練に最低限必要なことだけ教えるね。

 この洞窟は最終試練を行う為に用意された場所。世界の仕組みとしても最終試練は重要なものだから、世界の守護者たる僕はここで洞窟の守護者もしている」


「世界の守護者であることが先であった、という認識でよろしくて?」


「うん、それで合ってるよ。故にこそ、世界の守護者として、僕は最終試練の試験管もしているんだ。

 じゃあここから、試練の話にも入っていこうか。どういう方式で試練を行うのか、何を審査するのか、かな。どうしたら試練に受かるのかは、言えないけどね。試練を行う意味がなくなってしまうから」


 最終試練では、これまでの試練――この大陸における[統一最強決定戦(ディナトティシム)]と最終試練会場の探索――とは違って、魔法で編まれた亜空間に魂のみを送り込んで行われる。現実世界でどうこうするわけではないよ、とアルトゥは言った。

 理由は単純で、ずっと昔に最終試練を受ける資格がある者たちを現実世界における試練で死んでしまった際に、大きく世界が揺るがされたから。世界の平穏を守る為にも、現実の身体には影響がでない形を取るようになったらしい。

 [統一最強決定戦(ディナトティシム)]でペアでの参加が認められているのも、同じような理由があるのだという。


「まぁ、精神が病んでしまっては元も子もないんだけどね。今までそういった事例はないから、大丈夫って判断されてるんだ」


 ここでの最終試練は、[統一最強決定戦(ディナトティシム)]優勝時点での組で行うことになる。今回の場合はウルティナとセクリアが共に試練を受ける、ということだ。フィーディーに関しては[統一最強決定戦(ディナトティシム)]で建前上道具として扱ってきた。

 だからこそ、既に半分魂が宿っている状態のフィーディーは今回参加ができないとのこと。


「えっ、ボク、ウルティナの道具だよ?」

「フィーディーは自我が目覚めてるからね。精神体を使う以上、一人として数えられちゃうんだ。そのこともあって、フィーディーには補助にあたる遊撃を進めたんだ。補助の遊撃、というのは、ウルティナとセクリアの二人組で考えたときのことなんだけど

 フィーディーがいなくても戦えるように」

「……フィーディーのことを道具として考えたことなんて、ありませんわよ」


 ふとこぼれた一言に、しかしなんでもないとウルティナは笑う。

 話を続けるね、と暇をもてあました人型を取る魔物も笑った。


「何を審査するのかについての話に移ろうか。ただ正直最終試練の内容に被ってしまう部分が多いからね。あまりないんだけど。

 全部の最終試練で共通して言えることなんだけど、試練を合格して手に入れられる地位に相応しいかどうか、地位につくだけの実力があるかどうか、かな」


「……全、部…………?」


 セクリアの小声の疑問は、アルトゥの意味ありげな表情で流された。


「最終試練の説明は以上になるよ。質問はあるかい? とはいえ、これ以上言えることもないんだけど」


 注略付きの質問に、二人は無いと返答する。


「よろしい。今の説明は他の人には言っちゃ駄目だよ?

 さて、ここまでの旅路直後に加え説明もあって疲れただろう? 今日はゆっくり休んでくれるかな」

「最終試練はいつから開始されますの?」

「説明は終わったから、後は君たち次第。今日は師匠として駄目と言うけど、明日以降ならいつでもいいよ」


 ウルティナとセクリアは向き合い、頷きあった。


「では、ッ」


 とくりと、判断に胸が高まる。


「明日、からで、お願いしますの」

「……お願、い……し、ます」


「了解したよ」


 それじゃ、僕は試練の最終調整をするから、と。

 広間のさらに奥に消えていった。



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