47.二人組が尋ねてきて……
ごめんなさい、今回短めです……。
少年リーウィーは、セクリアに謝罪をしに来たと言った。
それはもう、はっきりと。
「……詳しくお聞かせ願います?」
ウルティナが尋ねると、リーウィーは頷き、話し始めた。
――曰く、彼はセクリアの唯一の友であったと。
――曰く、セクリアは罪人と銘打たれて集落から出ざるを得なかったと。
――曰く、追われていたセクリアを引き留めるだけの勇気を振り絞れなかったと。
――曰く、セクリアを助けてしまったら自分も追い出されてしまうと思ってしまったと。
――曰く、
「オレは、セクリアに、謝らなければならない」
心の奥底から、悔やんだと。
「セクリアは、確かに魔力量が少なかった。ウルティナさんの方では目に見えてないだろうが、こっちでは生まれ持つ魔力量が目に見えてわかる。……それくらい、知ってるか。
だからこそ、魔力量がイコールで力と権力に繋がる文化がある……ってことも、知ってるよな」
ヒュッと息を吸い込み、リーウィーは嗤う。
「……オレは、強かった。
次期長はオレか、隣にいるメディミィの姫さんどっちかがと言われてるくらいに。
だからってワケじゃ、ねぇけど。力に溺れてたオレは、唯一敵わないと思っていたセクリアを、見棄てた。
アイツはオレを助けようとしてくれたのに、オレは……ッ」
ひきつった嗤顔で今にも泣き出しそうなリーウィーに、ウルティナはそっと息を吐く。
その瞳がどこか諦観に似た静けさを宿しているように見えるのは、気のせいだろうか。
「つまり、あなた方はセクリアが罪人ではないと認めている、ということでよろしいですの?」
問いかけに、二人は頷いた。
「……そう」
ならばと、ウルティナは立ち上がる。
「きっとセクリアも目が覚めている頃ですわ。隣の部屋に居りますから、どうぞ三人でお話しなさって?
私は外に出ますから」
告げ、フィーディーの入ったポシェットを肩にかけたまま扉に手をかけた。
「では」
突然の言動に呆然としたリーウィーとメディミィを借り家に残し、ウルティナは外に出た。
魔力の塊で雨を遮りつつ、集落の門に向かって歩く。
そのまま門を通り抜けて集落の外へ出ると、双髪の少女は呟いた。
「……私の決意なんて、必要なかったのではないですの」
ふわりと浮き出てきたフィーディーは、無表情だがどこか心配した様子でウルティナを見上げる。
「私には分からないセクリアを救う方法も、きっと彼らには分かるのでしょう。当然ですわよね、当事者ですし。何より、セクリアとは私なんかよりもずっと長くいるんですから」
黒みがかった空を見上げ、ウルティナはぼんやりと目を細めた。
「……私にも、過去から逃げないで立ち向かえる方法が、あったのでしょうか」
今はもう遠すぎる、前世の世界。
今はもう渡ることの出来ない、隣の大陸。
「私に、人を傷つけずに生きる方法なんて」
あったのでしょうか――。
ザアァァ……と降りしきる雫は、今はウルティナの魔力の壁に遮られて彼女にかかることはない。
「……ボクには、わかんないけどさ」
きっとそれでもフィーディーがウルティナを元気付けようとするのは。
ただ作り手であり主人でもあるから、だけが理由ではないのだろう。
「でも、ティナの決意は、絶対に意味があったと思うよ。
ね?」
雷雨はまだ、止みそうになかった。




