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悪役令嬢が○○になってはいけませんの?  作者: 叶奏
三章 集落の代表者
42/73

36.集落へ向かうことにして……

 非常に間を開けてしまい、申し訳ありませんでした……。

 投稿の方を再開いたします。

 これからは不定期の投稿となってしまいますが、一週間に一度は投稿していければと考えています。


 また、タイトルの方を戻しました。

 いろいろと考えた結果、やはりこれが一番しっくり来ると思ったためです。

 今後はこのタイトルで進んでいきます。

 (…………いく予定です……)


【これまでのあらすじ】

 悪役令嬢として罰せられたウルティナは、元いた土地から海を挟んだ土地に棄てられた。しかしそれは彼女の計画によるものだったのだ。棄てられた土地で出会ったセクリア、そして人形のフィーディーと共に、ウルティナは計画成就のために動き始める。

 途中、セクリアと[紅の契約]を結んだり、洞窟の守護者たるアルトゥ・アミューシオから鍛練を受けたりした。

 そしてついに、ウルティナたちはセクリアの元いた集落にたどりついたのであった。


 翌日。


 目を覚まし野宿の片付けも済ませたウルティナたちは、ついに山を抜け、山周りの森に差し掛かっていた。


「……もう、すぐ……だ、ね。……その、集落、まで」

「あら、そうですの」

「んじゃ、そろそろ心を入れ替えていかないとだね」

「すでに覚悟は決まっておりますわよ」

「……俺、も。……覚悟、できてる」


 そう会話をしている内に、木々が途切れ。

 ウルティナの瞳に、集落の門が映りこみはじめた。


 木製の門。


 その前に、一人の武装した男性が立っている。見張りだ。


 ポシェットのなかにフィーディーをいれ、ウルティナは歩き続ける。


 彼女たちが近づくと男性も気づいたようで、手に持つ槍を構え、何者かと眉をしかめた。

 やがて彼の顔に浮かんだのは、驚き。


 主にセクリアを見ての、驚嘆の感情。


 男性が身体を固まらせている間にもウルティナは門へ向かい、そして見張りの彼に話しかけた。


「少しよろしいかしら」


 わずかに首を傾げ、愛想笑いでそう言った彼女に、しかし見張りはなにも言葉を発しない。


 それを怪訝に思ったウルティナ。もう一度と、口を開こうとした。


 そのときだった。


「ざ、罪人だっ」


 突如見張りは叫び声を上げる。


「罪人セクリアが、帰ってきたぞっ!」


 今度はウルティナたちが動きを止めてしまう。


 そして。


「捕まえろ。こいつら二人、牢に放り込めっ」


 あれよあれよとなにもできないままに、ウルティナとセクリアは彼の槍によって気絶させられてしまった。



 ――気絶した、と。そう見せかけた。





 ☆☆☆





 連れてこられたのは、年季の入った牢屋のなか。

 こちらは門とは違い、石で作られた部屋に鉄格子が用いられていた。


 見張りの人の遠ざかる足音が聞こえなくなってから、ウルティナとセクリアはのっそりと起き上がる。


「ふぅ……。なんとか集落のなかには入ることができましたわね」

「……ん。……持ち、物、は……取られ、ちゃ、った……けど……」

「まぁ、そちらはフィーディーが見ていてくれますから。だから万が一のことがあっても、どうにかなりますわよ。

 冤罪とはいっても、あちら側からすればセクリアは罪人。武器などの荷物が取られても仕方ありませんもの。

 下手に隠して疑われるくらいなら、いっそのこと取り上げられた上で取り返したほうがよくってよ」

「……まぁ、ね……」


 小声で話し合う二人。

 にっこりと笑顔を浮かべているウルティナに、セクリアは苦笑いを浮かべていた。


「……それ、で。……今、は……待ち……だよ、ね……?」

「えぇ。この集落では、罰を下すことができるのは集落の長のみなのでしょう?」

「……そう、だね」

「ですけれど、この集落では明日から[統一最強決定戦(ディナトティシム)]の集落別予選大会が開かれる。ゆえにセクリアの有罪からの罰を決めることができる時間もないはずですわ。

 今の長さん、けっこう真面目な方なんでしょう? だったらなおさら、しっかりとした証拠がないと罰など下せるはずがありませんもの」

「……ん……。だか、ら……その、間、に……冤罪……って、……証明、する。……力、を……もって」


 ぐっ、と。

 拳を握るセクリアの表情は、どことなしか気合の入っているようにも見えた。


「そう。私のいた土地とは違い、こちらだからこそ取ることのできる手段」


 『力が全て』

 結局のところ、それに尽きる。


「そして、証明するために――っと」


 ちらりと鉄格子の外を見て、ウルティナは呟く。


「来ましたわね」


 ゴンゴンと、靴が地面を叩く音が小さく響いていた。

 それは二人のいる牢屋に向かってきている。


 ぴくっとセクリアがわずかに肩を揺らし、拳を握りしめ。

 少しして、靴音の主が姿を二人の視界に入りこんできた。


「起きたか」


 開口一番にそう言った彼は、見張りの男性。

 槍を片手に抱えたまま、鉄格子越しに二人を見下ろす形で立ち止まった。


「罪人セクリア、お前に下される罰についてだ。明日から開催される[統一最強決定戦(ディナトティシム)]のため長は残念ながらお前に対して時間をお取りになることができない」


 その言葉にチラリと表情を変えずに目線を上げたウルティナ。そっと口を開く。


「あら、そうでしたのね。なら、よかったですわ」


 くいっと口角を上げて。


「セクリアは罪人ではありませんもの。ただ他人からの罪を押しつけられただけの、いわば冤罪を被せられている状態ですし」


 告げた彼女に、見張りは仏頂面で声を発した。


「どういうことだ」

「どうもなにも、言葉の通りですわ。セクリアは罪を犯していない」

「証拠はあるのか」

「逆にお聞きしますけど、なにが証拠になりますの? 三ヶ月(マンス)以上もときが流れている現在、物質的な証拠が残っているとは思えないのですが」

「あぁ、お前の言う通りだ。証拠は残っていないだろうな」


 だが、と見張りは目を細めて言い放つ。


「どちらにしても罪人セクリアには力がない」


 強い(あざけ)りを多分に染みこませた空気を醸し出している見張りに、セクリアは。ビクリッ、と。肩を身体を震わせた。


「力ないヤツは生きる価値がない。ならば罪の犯していない冤罪であろうと、関係がない。

 お前もだ、双髪(ふたがみ)の女。たかが槍の一突きで気絶してしまう貧弱な、しかも単なる人間と変わらない見た目をしているお前も殺されて同然だ。どっから来た輩かは知らんが、それが絶対不変のルールであることはさすがのお前らでもわかるだろう?」


 問いかけに、もちろん、と。答えたのはウルティナだった。


「もちろん承知の上ですわ。ねぇ、セクリア?」

「ふぇっ、」


 顔を上げ目を丸くしながらも、なんとかセクリアは声を絞り出す。


「……あっ、う、ん……。……そ、う……だね……」


 わずかに震えるその声を聞き、しかしウルティナは上げた口角をそのままでセクリアに向けた瞳を見張りに戻した。


「そういうことですのよ」


 不敵な笑みを浮かべ、続ける。


「セクリアも、そしてもちろん私も。力の無き者はすなわち死を意味する世界に、きっちりと理解したうえでこちらへ参りましたの」

 あぁ、そうですわ。


 笑みを深めた彼女の瞳が、ぎらりと(きら)めく。


「力があると、証明できたら。セクリアが冤罪であるという証拠になるのかしら?」

「……ふん。証拠にはならんが、長を納得させるだけの力の持ち主なら。あるいは、罪そのものを取消しになる可能性もある。

 ま、できるわけないだろうがな。たかだか俺の攻撃を凌ぎきれないようでは、なおさらだ」

「さぁ、どうでしょう。案外私たち、強いかもしれませんわよ。

 どちらにせよ、簡単に力があると証明できる方法がありますわ」

「……なるほどな」


 はぁ、とため息を吐き、見張りの男性は言った。


「お前ら、出場するつもりか。たしかあれは、二人までなら一緒に参加できるからな。一番実力を示すことのできるまたとないチャンスではある」

「えぇ、その通りですの」


 手を合わせ。

 ウルティナは宣戦布告を口にした。



「[統一最強決定戦(ディナトティシム)]に参加し、そして見事証明して見せましょう。


 私たちが『最強』であると」



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