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悪役令嬢が○○になってはいけませんの?  作者: 叶奏
三章 集落の代表者
39/73

33.洞窟の守護者と別れて……

 三章開始です!


※長さの単位について


センチメートル(セーリア)=十ミリメートル(ミーリア)

メートル(メーリア)=百センチ(セーリア)

キロメートル(キーリア)=千メートル(メーリア)


 ウルティナの今いる世界での長さの単位です。

(載せるのを忘れていたため、次回の前書きにも載せます)


 夕刻。


 ウルティナ・コロン=ルーフスとフィーディー、セクリア・コロン=ルーフスはちょうど山を抜けて森に差し掛かっていた。


「こちらの森と山の向こう側の森とでは、種類が異なりますのね」


 歩きながら、周りを見渡していたウルティナはポツリとつぶやいた。


「ホントだ、全然気づかなかったよ」


 彼女の言葉を聞いて驚いたのか、フィーディーは大袈裟(おおげさ)に身ぶり手ぶりをしつつもウルティナに称賛の言葉を送る。

 表情を動かせない分、他の感情を表す要素を大袈裟(おおげさ)にしているのだろう。


「……味も、違う……よ。……ここら、辺……には……来た、こと……ある、から……。木の実……も、食べた、こと……ある」


 続いて口を開いたセクリアに、ウルティナは「あら」と気を止めた様子を見せた。


「セクリアは南の土地に来たことがありまして?」


「……ん、……まぁ」


 話す内容を吟味するように口元をまごつかせて、やがて意を決したように立ち止まると、セクリアはウルティナに力強い視線を送った。


「どうかされましたの?」


 ただならぬ雰囲気にウルティナも立ち止まると、セクリアと向き合った。

 フィーディーはウルティナの横まで来てふよふよと浮いている。


「え……っと、集落……なん、だ……けど……」


「ええ」


「……多分、……もう、すぐ……。頑張れ、ば……日が、暮れる……頃に、……着く、と、思う……」


「まあ、本当ですの? でしたら急ぎましょう。今日は屋根のある宿に泊まれるかもしれませんわ」


 嬉々として言うと、しかしセクリアは頷かずに続けた。


「……なん、だけ……ど」


「なんだけど?」


 グッと唇を噛んで、目を閉ざして、ヒュッと息を吸って。


 そして瞼を開くと、セクリアは告げた。


「今日、は……野宿、に……して、ほしい」


 話したいことがある。


 そう、言った。







 ☆☆☆







 セクリアの決意ある瞳に射ぬかれ、久しぶりに浄化の魔法ではなく水で身体と髪を綺麗にしたいと切実に思ったウルティナも首を縦に振ってしまった。


 その後少し進むと開けた場所に出たため、今日はそこで野宿をすることにした。


 野宿の準備も手慣れてきたもので、手際よくこなしていく。

 夕食は木の実と修行の一環で狩った獣の肉を保存用に加工した干し肉だ。

 魔物は魔物を喰らって生きていけるが人はそうもいかないため、かの[超級]魔物から指導を受けていた頃は空を舞う鳥や絶対数の少ない地を駆ける獣を狩り食料を得ていた。

 三ヶ月(マンス)もの間木の実と水だけで過ごせというのは酷なことである。栄養面でも偏りが出てしまう。


 話したいことがあると告げたセクリアは、しかし食事中になにか言うこともなく、夕食はウルティナとフィーディーの他愛ない話で終わった。

 その後生活魔法で身体と服を綺麗にし、焚いていた焚き火も小さくしてついには就寝準備も済ませてしまって、そこでようやくセクリアは口を開いた。


「……あの、今……、いい……?」


 それはとても緊張感をただよわせるトーンで、手も小さく震えている。


「えぇ、構いませんわよ」


「うん、なーに?」


 だからウルティナもフィーディーも、自然にされど真摯に尋ね返す。


 これ以上緊張しないように、話すハードルを上げないように。


 もし非日常の雰囲気をにじみ出してしまったら、もっと緊張してしまうかもしれない。

 もしぞんざいに返していたら、聞く気がないと彼が思って口を閉ざしてしまうかもしれない。

 だから、自然で真摯に返した。


「……話……が、ある……。集落……と、……俺、に……ついて」


 パチッ、と火がはじける。


「……まず、……今から、行く……集落。


 ……そこ、……俺が、いた……場所……なん、だ……」


「ふぇっ、そうなの!?」


 フィーディーは驚きの声をあげる。


「なるほど、やはりそうでしたか」


 ウルティナは前から見当がついていた。


「だから、三ヶ月後にあると知っておりましたのね」


「……ん、そう。

 ……一(イヤー)、に……一度、の……[統一最強決定戦(ディナトティシム)]。……大陸最強……決める、大会」


 そして。


「……優勝者……は、その年……の、統治者……に、なる……権利、……与えられる」


 理由は単純明快。


「……実力……が、全て……だか、ら……」


 血縁もなにも関係ない。


 周りを()ぎ倒して全てのトップにのしあがった者こそが(すなわ)ち正義となる。

 その結果どれだけひどい政治体制となろうと、実力無き者に反対する権利は与えられない。


「私たちはそれに参加しますのよね。参加条件はたしか、実力ある者なら問わず、ですもの。

 あと、コンビでの参加も可能なのでしょう? 心苦しいですけれど、フィーディーを私の武器として数えれば、私たちで参加することもできると」


「もぉ、ボクのことは気にしないでよ。実際、ボクはティナの剣だからさ。解釈的には間違ってないよ?」


「そう言っていただけると助かりますわ。ありがとう」


 [統一最強決定戦(ディナトティシム)]でコンビの参加を認められている理由は、この大会の始祖で初代王者がコンビであったからだ。

 もっとも、それ以降にコンビでの優勝者は今のところいないが。


「……それ、で……、俺、の……こと、に……ついて……なん、だ……けど……」


 また、火がはじけた。

 火の粉が地面をチリリと焦がす。


「……俺、……魔力……無かった……よ、ね。……ほと、んど……さ」


「[紅の契約]を交わす以前でしたら、そうかもしれませんわね」


「……それ、で……俺、は……、細剣……で、戦っ、て……きた。……身体、強化……の……魔法……も、……ほと、んど……使、えず……に」


 先を促すよう、ウルティナは頷く。


「……で、ね。……こっち、は……魔力、の、量……が、……実力……に……直結、する、ような……。そん、な……風潮……も、……ある、ん、だ」


 ぽつりぽつりと話しながら、セクリアは自分の頭をさすった。

 一見するとウルティナと変わらないような形をしている頭を。


「こちらの土地の方が魔力量の平均値が高いとは聞いたことがありますわ」


 目を細めて呟く。


「……魔法……使え、なく…ても、……使い方、は……たくさん、ある……から。

 ……魔力……が、少ない。

 ……それ、だけで……不利に、なる……。力……だけじゃ、なく……地位、的……にも……」


「魔力操作能力もこちらでは高いのでして?」


「……たぶん、ね……。だか、ら……俺、は……集落、の……中、で……とて、も……地位、が……低か、った」


 話す少年は強く強く手を握りしめる。焚き火の明かりだけで表情をうかがうことは難しかった。


「……で、ね。……俺、さ。……両親……も、いな、くて……。でも、……集落、の、中……で、なん、とか……生きて、けれた、から。

 ……でも、でも……っ。……出てか、ない、と、……いけ、なく……なっ、たん、だ」


 血が滲み出るほどに唇を噛み締めて。


「……んん……違、う。

 ……俺、が……弱か、った……から……、出て…いく、以外に……取れる、手段……が……無か、った……んだ」


 セクリアは告白する。




「俺。……『罪人』……なんだ」

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