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悪役令嬢が○○になってはいけませんの?  作者: 叶奏
二章 洞窟の守護者
28/73

25.メモの準備をして……

 ものすごく遅くなってしまい、本当にすみませんでしたっ!!



(前回より間が空いてしまったため、)簡単なあらすじ(読み飛ばし可)。


 婚約破棄からの断罪で海をはさんだ未開発な土地に棄てられてしまった少女、ウルティナ。だがそれは、とある人に復讐するための計画のさわりでしかなかった。人形フィーディーと共に森をすすみ、途中であった少年セクリアと魂を結ぶ契約をなす。

 次に、こちらの土地の集落へ向かうため山へ向かうことにした。途中、セクリアの装備を作るための鉱石を採取するために歩いていたら、隠された洞窟を発見。探索するためになかに入ることにした。進めていくなかで、セクリアの使える魔法について聞くこととなる。


「……ん、と……、ね……。


 ……ここ、来る……まで、使って、た……方位、示す……魔法、含む……探索魔法。


 ……さっき、言った……鑑定魔法。


 ……転移、とか……の、……空間魔法。

 ……これ、は……、補助、関連……だけ……。攻撃、に、は……使え、ない。

 ……似てる、時魔法、も……使え、な、い。


 ……あと、……武器……とか、に……特別、効果、つける……付与魔法。


 ……それから……、普段、使える、……生活魔法。


 ざっ……と、は、……これ、くらい


 ……あ、……もち、ろん……、日常、で、も……強化魔法、は……使え、る……」


 魔法の種類を告げるたびに指を折りながら話すセクリア。

 ウルティナは膝を机のかわりにしてメモ帳の上に黒鉛の棒を走らせていく。


「本当に色々と使えますのね。

 たしかに、セクリアの生活魔法には結構助けられましたし。主に、清潔面で」


 黒鉛の棒をなんとなしに手のなかでもてあそび、今しがた書いたばかりの文字をもう片方の指先でなぞって少女は続けた。


「そうしますと、私のポシェットに空間拡張機能をつけることも可能でして?」


 ウルティナがもともと住んでいた屋敷からものを持ち出すとき、最低限とはいえポシェットに入る最大量まで詰め込んできた。

 フィーディーが外に出て、保存食もほとんどなくなった状態の今でもポシェットに入る残りの容量はそう多いとはいえない。

 ゆえに、彼女は尋ねたのだ。

 ポシェットの最大容量が増えれば、より多くのものをいれることができるから。具体例を示せば、絶賛採取中の鉱石を今よりももっと手にいれることができる、といったところか。


 はたしてウルティナの問いに対するセクリアの答えは、


「……ん。……できる、よ」


 どや顔をしつつの肯定の言葉だった。


 パアァッ、と全身から喜びのオーラを醸し出すウルティナ。

 となりのフィーディーは苦笑をもらしている。


「では、では……っ、さっそくお願いしても、よろしいですか……ッッ!」


 メモ帳が膝から落ちそうになるくらいの前のめりな状態で、ウルティナはセクリアに頼み込む。

 鉱石のためにはなりふり構っていられないのであろうか。彼女の表情からは相当うきうきしつつも必死であることがうかがえる。


「……か、構わ、ない……け、ど……」


 そう言いつつもセクリアはドン引きしている。


 ウルティナの瞳はこれまで以上にあふれんばかりの輝きを宿していた。


「本当に、よろしいですのねっ! なら、今すぐ!! お願いしますわっ!!!」


 シュパパパパッ、とウルティナはポシェットの中身を外に出し、セクリアに手渡す。

 残像すら見えそうなほどに素早いスピード感を有して。


「へっ…………、あっ、……はい」


 セクリアに許された選択肢は『依頼を受理する』ことだけであった。




「……え、……っと……、付与、する……の、は……この、内容、で……いい……?」


 セクリアは最終確認をとる。


 ポシェットに付与する機能。


 空間魔法の空間拡張による最大容量の増加、

 強化魔法の防御力増強による耐久性能の向上、

 それから生活魔法の浄化による自動洗浄効果の三つである。


 ちなみに、セクリアが生活魔法の浄化を使うことができると判明してから、ウルティナは身体を清潔に保つ上でわざわざ泉だったりを探さず済むようになった。

 一週間ほど前のウルティナの怒りはいったいなんであったのか、セクリアは理不尽にも感じてしまっていたようだが。


 ともあれ、ウルティナはセクリアの確認に大きく縦に首を振った。

 ポシェットの材質的にも、三つの魔法を付与されることは大丈夫である。


「構いませんわ。

 ですけれどもセクリアの方は大丈夫でして? 一気に付与するなら四つの、そうでなくとも二つの魔法を同時に使うのですわよね。

 そのため、基本付与魔法を使用するときは魔法を発動する代わりに魔方陣が描かれた紙か鉱石か、とりあえずそれを媒体にして付与すると聞いたことがあるのですが」


 複数の魔法を同時に発動させることは、そう簡単にできることではない。

 そのため、ウルティナは尋ねたのだが。


「……問題、ない。……四つ、なら……なん、とか……でき、る」


 大丈夫のようだ。


「そうですの。ですが、無理だけはなさらないようお願いしますわ。

 ……あ、いえ、やっぱり少しの無理は……」


「ティナ。無理はさせちゃダメだからね?」


「……ハッ、も、もちろんですわ。セクリア、無理そうなら遠慮なく言ってくださいまし」


「……ん。……わか、った。

 ……でも、ホント、に……だいじょ、ぶ……だ、よ……?

 前、ま、で……魔法、使う、の、に……魔力、消費……抑え、ない、と……いけな、く…て……、魔力、操作……は、……ある、程度……鍛練……した。

 ……だか、ら……、ある程度、な、ら……できる。

 …………ウルティナ、には……及ばない、……け、ど……」


 表情にわずかな影を落としつつもセクリアは告げ、手に抱えていたポシェットを近くの地面にそっと置いた。


「……それ、じゃ……いく、よ……?」


 上目遣いで本当に最後となる確認を取るセクリアに、ウルティナは緊張の面持ちで小さくうなずく。

 それを見たセクリアは、ひゅっと息を吸い、真剣を宿した瞳をまぶたの奥に隠した。



「《強欲な幾翼(いくよく)たる力》」



 一つ目。付与の魔法。


 手をかざしたポシェットの上に魔法陣が描かれる。


 もう一度、息を吸って。


「《(うつろ)な無限たる世界》、

 《強靭なる鋼の(かまえ)

 《清流(ごと)く快き浄化》」


 今度は一気に三つの呪文を唱えた。


 したがって魔法陣も三つ、描かれた。


 最後に、三度、息を吸う。


「……《宿れ。幾星霜、時の果てまで。その傲慢に末は無い》」


 付与魔法、終いの詠唱。


 四に重ねられた魔法陣は互いを互いで照らし合いながら、回り、廻り、やがてひときわ強い輝きをふと放って、ゆるやかに、ポシェットへ溶け込むよう、消え去った。


 少年は、目を開く。


 ポシェットを、静かに持ち上げた。


「……でき、た…よ」


 す……っと、手に持つそれをもとの持ち主に差し出した。


 だが、少女はすぐには受け取らない。


 否、惚けてしまって受け取()ない。


「……ウルティナ……? どう、した……の……?」


 ちょんとセクリアに肩をつかれ、ようやく我に返ったようだ。

 驚いたように目を見開きながらもウルティナはポシェットを受け取った。


「……言葉を、失いましたわ」


 彼女はぽつりとつぶやく。


「あなたの、付与魔法に。

 その洗練された美しさに。

 ……やはりセクリア、控えめにいってスゴイですわよ。それだけ魔法も使えて、近接でも戦えるなんて」


「…………?……」


 思わぬ言葉に、次はセクリアが呆けてしまった。


 ここまで手放しに誉められたことが無かったことも、所以(ゆえん)するのだろう。


「ありがとう、セクリア。さっそく試してみますわ」


「………………ふぇ……え、……えっ、と……どう、ぞ……?」


 いまだ我に返ることのできていないセクリアをはた目に、ウルティナはポシェットに付与された効果を試してみる。


 結果、彼女が思っていた以上の容量と耐久を兼ね備えていることがわかった。


「ふふっ、これならばより鉱石の採取がはかどりそうですわ」


 るんるん気分のウルティナ。

 意識をあらぬ場所に飛ばしていたセクリアもポシェットの性能調査中に戻ってくることができた。


「……それ、は……よか、った……」


 少年セクリアも嬉しそうだ。


「じゃ、先に進もっ☆」


 フィーディーが、オーっと右手を上に突き上げた。






 ☆☆☆






「さて、と」


 とある小さな広間。


「……ここ、が……洞窟、の……終、点……?」


 ウルティナが鉱石を採取しながら探索してきた洞窟の突き当たりでもある。


「でもティナ、奥の魔力の流れがいびつだって言ってたよね?」


 ……そう。あくまで表面上は、であるが。


「ええ。今もなお、ここの魔力の流れはおかしいですの。

 フィーディーはなにも感じませんの?」


「ボクは普通に感じるよ。でもティナの魔力察知に引っかかってるなら、調べる価値はあると思う」


「……ん。……俺、も……同、意見」


「私も調べるつもりでしてよ」


 どうやら三人の意見は見事なまでに一致したようだ。


「では、いきますわよ」


 入り口のときと同様、奥の壁に手のひらを向けてウルティナは目を閉じる。


「すー……、はぁ……」


 深呼吸。


 そして。


 バリイィィイインッッッ、と。


 またも、非常に大きな音が洞窟内を響き渡って。




 瞬時にして総毛立つような気配が、その場を支配した。




 少女は条件反射のように後退り。


 人形はそんな少女を守るように前に出て。


 少年は肩を震えさせながらも剣の柄に手を当てる。




 三対の視線の先には、一匹の魔物がいた。


 気配から感じとれる彼のランクは――






 ――[超級]。

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