23.身体を清潔にして……
誤字報告、ありがとうございました。
あのままだといろんな意味でヤバい意味になっていたので、本当に助かりました……っ!!
なんだかんだあって、太陽が六、七回ほど天を昇った頃。
ようやく二人と一体は、山の麓までたどり着いた。
「この山を越えれば、ついに集落がありますのね?」
ウルティナは意気揚々といった感じでそう言う。
対してセクリア、気乗りしなさそうな雰囲気を醸し出しながらも小さくうなずく。
余談ではあるが、彼の服は先の泉にてウルティナが手直しを加えていて、今はほつれもない状態だ。
パパッと彼女が針を操る姿はどこか手慣れたものがあった。
「それで。
たしかセクリアの情報ですと、この山で採れる鉱石が結構良いものですのよね?」
「……ん。……色々、な、武器に、も……使われる、くらい、には……いいやつ、採れる」
今度はしっかりとした返事。
「ならさきに、こちら側の麓で洞窟を探しましょう。急がば回れとも言いますし、鉱石採集といきませんこと?」
「……いい、けど」
「ボクも賛成だよっ。ティナがそう言うならね☆」
一体と一人からの了承を得た少女は、よしと言わんばかりに拳を握りしめる。
「それじゃ、いきますわよっ」
「オー!」
フィーディーも真似をして右手の拳を握り、真上に突き上げた。
ウルティナたちが今までいた森と山の境には一部岩が壁のようにそびえ立つ部分がところどころあるようで、少しずつ視界に入り始める。
それを見たウルティナは、歩き始めたばかりにもかかわらず立ち止まってしまった。
「どしたの?」
「いえ、立派な岩壁が見えてきたものですから。魔力察知でもした方が良いかと思いまして」
「……なん、で……?」
セクリアが尋ねる。
ウルティナはあくまで保険にすぎませんけれど、と前置きをしてから答えを示した。
「洞窟があっても、その入り口が崩れている可能性も否定できないのではありませんこと?」
「あ、なるほど」
どうやら人形さんは彼女の意図を把握したようだ。
「つまりさ、崩れたかなんかで入り口が見えない洞窟を見逃さないために、魔力察知で岩壁んなかを調べながら行こう、ってことだね」
「ええ、その通りですわ。
たとえ入り口が埋まっていたとしても、魔法かなにかを使ってしまえば入れるかもしれませんし」
それに、とつけ足す。
「セクリアにはそろそろ慣れていただきたいこともありますわ。
私が魔力を使用したときの、魔力量の変化に。
たしかにセクリアからすれば急激に減ったように感じてしまうのかもしれませんけれど、それに戸惑ったせいで戦闘中に隙を見せてその隙を取られたら、最悪の場合取り返しのつかないことになり得ませんから」
「うっ……」
セクリアは言葉を詰まらせてしまった。
長年感じてきて慣れたことをすぐに変えろと言われても厳しいところがあることはウルティナも理解していた。
だが、だからといって彼女が注意を促さない理由にはならない。
死んでしまう可能性をわずかにでも含むなら、それは注意をしておくことに越したことはないからだ。
「ま、セクリアも時が経てば慣れてくると思うよ?」
そんなセクリアを、フィーディーは優しく励ましていた。ぽんぽんと肩を叩いている。
「それでは、使いますわよ」
彼らの様子を見ながら、音もたてず、しかしウルティナはしっかりと魔力察知を発動させる。
その横で思わずセクリアは肩をピクリと強ばらせていた。
クセが抜けきるのはやはり、すぐには無理そうなのであった。
ちなみに、ウルティナは目を閉じていないからと言って魔力察知が使えないわけではない。
むしろそれができるほどの脳の処理能力を持ち合わせているからこそ、ハズレとまで言われている[指揮者]の[勲章]をきちんと使いこなせていると言えるのかもしれない。
☆☆☆
山の麓に沿って歩き続けて一、二刻ほどの時が流れ、辺りが黄昏時の橙色に染まりはじめた頃。
「あら?」
ひた……、とウルティナはその歩みを止めた。
「ここ、なにか怪しくありませんこと? 魔力の流れが少し、いびつに感じますの」
そう彼女が指さした場所は、一見他と変わらぬごつごつとした岩の壁。特に途切れることなく苔が岩を緑色に彩っている。
「ん? そーかな?? ボクは普通に感じるけど……」
「……見た目、も、……おかしく、ない……よ……?」
セクリアも何度か岩に触れながら、顔をウルティナとフィーディーに向けて言う。
「……ですけれど…………」
それでもなお彼女の顔は晴れない。
「そんなに気になるなら、調べてみればいいんじゃない?
ティナの魔力感知能力はずば抜けてるもん、ボクたちの見つけられない『なにか』を見つけても、不思議じゃないと思うよ?」
「そこまでずば抜けてはおりませんが……。
ですが一応、調べてみましょう」
そう言ってウルティナは瞳を閉じ、手を岩壁にかざした。
ゆっくりと鼻から息を吸い、口から吐く。
直後。
バリイィィイインッッッ、と。
なにかが割れる、音がした。
「なっ…………え…………っ!??」
「っ!? なにが、起きたの…………?」
驚愕の声を発したのは、一体の人形と一人の少年。
そんなさなかで、少女はゆっくりとその瞼を開いた。
「……やはり、『なにか』がありましたのね」
彼女の手の先には、岩壁の代わりにぽっかりと空いた洞窟の入り口が在った。




