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悪役令嬢が○○になってはいけませんの?  作者: 叶奏
二章 洞窟の守護者
24/73

21.質問を続けることにして……


「……じゃ、あ。……次の、質問」


 仕切り直すように、セクリアはウルティナのことを改めて見やる。


「……黒色、うさぎ……魔法、使っ、て。……それ、から……、魔法…陣、なく、なった。

 ……もし、かし、て、……その、魔法。黒色……うさぎ、が、使った……魔法、は……?」


 そんなセクリアの意思をのみ、ウルティナも口を開いて答えを紡ぎだす。


「セクリアの考える通り、黒色のうさぎ――ティニヤが使った魔法は、魔法が発動するときに生じる光を覆い隠してしまう効果がありますわ。

 まあ、魔法陣自体が光で描かれるために、結果だけを見れば魔法陣を消してしまっているようにも見えますけれどね」


「…………それ……っ、て……」


「どのような魔法が発動するか、事前に相手に知られることがない。

 魔力の流れを偽装できれば、魔法が発動するかどうかさえも気づかれない。

 もちろん光を隠しますので、暗闇でも目立つことはない。


 ……と、こんなところかしら。利点をあげるとするならば」


「………………それ……っ、て…………!」


「そう興奮なさらないでくださいまし。魔力の流れを偽装することはそう簡単にできることではありませんのよ」


「…………で、も……ッ」


「それに、この魔法を維持するときに他の魔法は使えませんの。ティニヤは闇魔法担当。

 ですので、フィーディー以外で闇魔法は使えなくなりますの」


「……闇、魔法……、……阻害…系、統……?」


「主にはそんなところですわね。

 かくいう『(とばり)』、ティニヤが使った魔法も相手から魔法陣の光を隠すと考えれば、阻害系統の魔法になりますし」


「……たし、かに」


 それで、とウルティナ。


「質問はまだありますの?」


「……ん、と…………あと、ひと…つ」


「はい」


「……さっ、きの……ポープル。

 ……も、し……見せる、じゃ、なく……って、……ただ、倒す、だ、け……なら……、どうや…って、……倒、した……の……?」


「……《狂詩曲(ラプソディー)第零番『(まぼろし)』》」


「…………?……」


「正確には魔法ではありませんけれど、今の人形たちのなかではフィーディーだけが使える魔法のようなものですわ。

 純粋に魔力だけで刃を作り、それで相手を攻撃する。ポープルならこれだけでも倒せますわね。

 あと使うとするならば、《狂詩曲(ラプソディー)第三番『(くさり)』》かしら。ほら、相手を縛って動けないようにする魔法でしてよ」


「……それ、だけ……で……?」


 セクリアの疑念に答えたのは、フィーディーだった。


「それだけって、失礼だなぁ。ボクもちゃんと戦えるんだからねっ。

 ほら、ボクだけでも魔物、倒せてたでしょ? ティナが寝てるときにさ」


「……たしか、に」


「私も、フィーディーがいなければここまでこれなかったと思いますわ。本当に、今まで、ありがとう」


 純粋たる微笑みをたずさえ、ウルティナはフィーディーに感謝の意を表す。


「それはこっちこそ、だよっ。ティナ、ボクを生み出してくれて、ありがと。

 ……ボクを、ボクにしてくれて……ありが、と」


「~~~~ッッ!!」


 がしぃぃィイっ、と。


 少女は思わず抱き締めてしまった。


 無表情のくせに感情豊かな、そんな人形を、力強く。


「ティ、ティナ……? どしたの??」


 当の本人も困惑してしまっている。


「…………フィーディーが、いたからですのよ」


「へ……?」


「フィーディーがいたから、私は今、ここにいますの。

 創造主だからと、たったそれだけの理由で私について来てくれた、フィーディーがいたから」


 ウルティナの手にこめられた力が強くなった。


「ありがとう、フィーディー。しがない私を、見棄てないでいてくれて」


 思うがままに話す彼女の瞳から。


 はらはらと、幾数かの雫がこぼれていたことを。


 少年セクリアは、心の奥底に秘めて、言わないでおこうと。


 そう決めた。






 ☆☆☆






 少しして。


 落ち着いたウルティナは、何気なく自身の髪の毛に手を通して言った。


「……髪、ベタついてきましたわね……」


「ティナは今のままでもかわいいよ?」


「それでも、汚れは気になりますのよ。……そうだ、セクリア」


 少女から視線を向けられて、セクリア。


「……な、に……?」


 首をかしげながら尋ねる。


「この近くに泉か川か……、とりあえず、身体を清められる場所、ありませんの?」


 質問。


 少年は二度三度まばたきをしてから、こう答えた。


「……別、に……これ、くらい…なら、……汚れ…て、ても……、よく、ない……?」


 ピシリと刻まれたのは、怒りマークだ。ウルティナの眉と眉の間にシワができている。


「ふふ、そうでして? あなた様はそのようにお考えですのね……??」


 セクリアは思った。

(なぜ、だろう……。笑ってる、のに……寒気がする)


 人の機敏は読めたのに乙女の心を読むことができなかったセクリアに、ウルティナは告げる。


「そんなのだから、連携なんてできませんのよ」



 こうして二人と一体の間は気まずくなったのであった。

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