19.一人で戦おうとして…… Ⅱ
前話の最後の部分を多少ですが改稿いたしました。
※注意※
本話では、一番最後に挿し絵をのせております。苦手な方はご注意願います。
「《その身に宿れ、横暴なる焔》」
セクリアは、唱える。
「……前、同じ……、な、ら……これ、だ、け、で……挑む」
そう言って、地面を蹴った。
彼が進むにともなって生まれた風圧が、ウルティナとフィーディーをあおる。
赤と黒、二対の髪束が、ふわりと浮き上がった。
「ふっ……」
一回目。
瞬間にしてポープル一体の背後に回り込んだセクリアは、レイピアを迷いなしに突く。
そしてすぐさま引き抜き、逆手に持ちかえて、
「……はっ……」
二回目。
身体をひるがえし、となりのポープルの心臓、否、核に剣先を突きだす。
それを引き抜くために、今度はバックステップで後ろに下がった。
レイピアも、セクリアの動きにあわせてポープルからその身を脱出させる。
「……よっ、……」
そのまま背後にあった木を地面代わりにして、彼は跳び上がった。
宙で一、ニ、三回転。
最後のポープルの前におどりでる。
「……っと」
三回目。
向かってきたポープルを避けて、すれ違い様にレイピアを、スッ……と差し出した。
その剣は、ポープルを、串刺しにして。
すぐさま彼はレイピアを引き抜き、そして、ポープルは倒れる。
ポープル三体、討伐完了。
セクリアは剣を鞘に納めた。
「……終わっ、た……」
その様子を一部始終見つめていたウルティナは、しかし言葉を発することはできなかった。
「……ウル、ティナ……?」
戻ってきたセクリアに肩をたたかれ、ようやく我に戻ったようだ。
「ハッ…………、っと、もう、終わりましたの?」
思ってもいなかった現実を見た彼女は、セクリアに問いかけている。
「……ん」
対し、セクリアはこくんとうなずいた。
「……早い、ですわね……」
いまだウルティナは驚きから立ち返ることができていない。
「……低級、の、魔物。……魔力、あれば……余裕」
どやぁっ、と少年の顔は満足げだ。
「うわぁ……、すごいどや顔だぁ……」
フィーディーは若干引いているが。
しかれどウルティナは、特に気にすることなく手をあごに当てている。
「なるほど。単騎でもここまでやりますのね」
そして「ねぇ、セクリア」と呼びかける。
「……な、に?」
「あなたにはこれから、近接を任せてしまってもいいかしら?
あなたのレイピアを操る技術をもってすれば、ある程度の敵は私たちの補助無しで倒してしまえるでしょう? もちろん、油断をしなければ、の話ですけれど」
「……へっ…………?」
なぜかセクリアは、ポカンとした表情を顔に浮かべた。
「……俺、に……、任せ、る……?」
「ええ、そうですわ。
先ほど言いました通り、私の[勲章]は後方支援向けで、セクリアの武器は近接向けですもの。別段悪くない判断だと思います――って、セクリア!?
どういたしましたの?!」
「……なに、を…………?」
「なにって、涙ですわよっ! なんでいきなり、泣き出していますの!??」
ついでセクリアは、ポロポロと目から涙をこぼしていたのだ。
「……ぅあ、……ほん、と……だ……」
どうやら彼は、泣き出していたことに気づいていなかったらしい。
目元に手をあてて、驚きの声をあげた。
ゴシゴシゴシと目をこすりながら、少年は思考にふける。
なぜ、自分は涙を流しているのか。
考え、考えて、考え抜いて。
「…………………………………………あっ、そっか」
答えを、探り当てることができた。
「……どうかしましたの? 泣き出したかと思えば、一言も話さなくなりましたが……」
心配そうにウルティナは声をかけられたが、
「……んん、……だいじょー、ぶ」
穏やかそうに、口元に緩やかな笑みを浮かべた少年は、小さく首を横に振って、なんでもなかったと、そう返した。
(また、ウルティナ……だ。
……俺に、居場所、くれて、……あまつさえ、認めて、も、くれた)
内心でたどり着いた答えについて考えながら。
「なんでもないとおっしゃるなら、構いませんけれど……」
「……それ、より。戦闘、仕方。……見つけ、ない、と」
「えっ……、ええ。そうですわね」
百面相のごとく、端から見たら驚きを通り越して笑ってしまうであろうほどにめまぐるしく表情を変化させていたセクリア。
それが今度は、今まで消極的にも見受けられた態度までもが、誰がどう見ても意欲的なものに変わっていたのだ。
ウルティナとて戸惑うのは、ごく普通であるといえる。
「えと、セクリアは前衛。私は後衛。とすると、フィーディーは……遊撃?」
「……ん。でも、フィーディー、ウルティナ、の……一部。時々、遊撃、で、も、いい……?」
「んー……、フィーディー単体の攻撃力も結構なものでしてよ。それに、戦闘体制を考えるなら、やはり私たちの戦いかたも見てほしいですし……」
どうしたものかと、ウルティナが悩んでいたとき。
「ねねっ、ティナにセクリア」
またしても話に割りこむかのように、フィーディーが声をあげた。
どこはかとなくデジャヴを覚えたウルティナは、次にフィーディーが言葉を紡ぎだす前に辺りを魔力察知による探りを入れた。
「また話してる途中で悪いんだけどさ」
「魔物が来たみたいだよ、でしょう?」
先をまわって言うと、小人の人形はビクッと飛び上がった。
「ぅわっ。なんでわかったのさ」
「魔力察知で調べただけですわ。つい先ほども同じような流れで戦闘に入りましたもの」
「……たしかにそうかも」
「それで。今回の魔物も[低級-Ⅰ]のポープルですが、どうします?
三体ではなく六体ですけれど」
「……今…度も、俺……行く……?」
「どーするの、ティナ?」
両者から同じ内容の質問を問われたウルティナは、答えずにポシェットに手を伸ばした。
手に持ったものを一振り。
ウルティナは、トリガーとなる単語を紡ぎだした。
「《演奏開始》」
赤い光。
それが収まり中心に位置したのは、[固有武装]をまとった少女。
「フィーディー」
パサリ、と右手で髪を払う。
「今度は私たちが、見せる番ですわよ」
そうしてウルティナは。
どう猛で、不敵な。
そんな笑顔を、浮かべた。
挿し絵、いかがでしたでしょうか。
アナログであるわりには、まあまあの出来なのではないかなぁ、と思います(そうはいいつつデジタルは描けませんが……)。
今後もまた挿し絵を描くかもしれません。
(今回のは挿し絵というよりイラストになってしまった気も……)




