表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が○○になってはいけませんの?  作者: 叶奏
二章 洞窟の守護者
19/73

16.[紅の契約]を結んで……

 今回より二章開始です!

 今後もよろしくお願いします!!


(登場人物などのまとめを含め、本日二話目の投稿となっております)


 陽はちょうど、空の真上に位置している。


 その下を一人の少女と一体の人形、それから、一人の少年が歩いていた。


「えっと、ティナ。魔物、来てるよ?」


 小人の人形、フィーディーはためらいながらも彼の主人、ウルティナ・コロン=ルーフスに声をかける。


「…………ええ、わかっておりますわ」


 それに対し、ウルティナは時差遅れで返答した。

 あたりには絶妙に気まずい雰囲気が流れている。



「セクリア、お願いしますの」


「……う、ん」


 スラリと、セクリア・コロン=ルーフスは腰に下げてあるレイピアを抜き放つ。


「《その身に宿れ、横暴なる(ほむら)》」


 唱え、彼は地面を蹴る。

 やはり呪文はすらすらと声に出すことができるようだ。


 そしてセクリアは、音のような速さで木々の間をぬうように駆け抜け、やがて、シュピッ、と迷わぬ動きでレイピアで魔物の核を正確に突き抜いた。


「……終わ、った」


 その様子を見ていたウルティナが小さな声でこぼす。


「……やはり、剣捌きは立派ですわね。ですけれども……」


「一人で戦ってきたからか、連携が苦手、でしょ?」


「ええ、その通りでしてよ。……一人で逃げてきたことからある程度他との共闘よりも単独戦闘の方が得意であるとは思っておりましたが……。

 まさかあれほどまでとは、思いもしませんでしたわ」


 ウルティナがため息を吐き、そして気まずい雰囲気が流れている理由。


 それは数刻ほど、時をさかのぼる。




 ☆☆☆




 二人が[紅の契約]を締結させて一番最初に気づいた変化は何かとても強い、けれども言葉では言い表せないような繋がりができてこと。

 その次に、魔力の変化だった。


 まず、魔力の量が変わった。二人の魔力が共有されたのだ。

 ウルティナからすれば微々たる増加だったが、特にセクリアからすれば、今までに保有していた量の何倍何十倍といった量の魔力が増えたわけであり、とても摩訶不思議そうな表情をしていた。


 それから、魔力の性質も変わった。違う人の魔力が混ざりあったのだから、当然である。

こちらの変化はどちらかというと、ウルティナの方が気にしていた。今までと同じように扱うことができるかどうかを何度も試すくらいには。

 結果、フィーディー含め人形七体に魔力を流して操ることに以前と操作性上の変化はないことがわかった。


 そして、ウルティナが魔力の確認をするために周囲を魔力察知で見ていたときのこと。


「あら……、魔物がこちらへ向かっておりますわね」


 これまでと同じよう、フィーディーに魔物退治を頼もうかと再度口を開きかけたウルティナだが、一つ、思い立ったことがあり、代わりにそちらを声にのせて告げた。


「セクリア。私たちと一緒に戦いませんこと? これからは戦闘も共にこなしていかなければなりませんもの」


「え……と、……うん。……わかっ、た」


 その提案に、セクリアは二つ返事でうなずいた。


「ボクも?」


「そうですわね。むしろ前線で戦うのはフィーディーですし。まずは私たちが補助する側に回りますので、よく見ていてくださいな」


「わかったよ」


 フィーディーもうなずく。


「……あ、の」


「どうしましたの?」


「……武器。……俺、の……、武器、返し、て……ほしい」


「ええ、もちろんですわ」


 ウルティナは地面においてあったレイピアを手に取ると、セクリアに渡した。


「そういえば、セクリアの[固有武器]はどのような名称ですの? 私のは[紅之指揮棒(ルーフス=リネア)]といいますけれど」


「…………[紅魔之細剣(グラディウス)


「ほら、二人とも。話してると、魔物、来ちゃうよ?」


 フィーディーがあきれ声でウルティナとセクリアの会話を止める。


「ごめんなさい。そうでしたわね」

 では、改めて。

「魔物は一体。[中級-Ⅱ]のポガンテスでしてよ。特出した能力はありませんけれど、無駄に大きい図体から繰り出される攻撃は重いもの。できる限りあたらないように気をつけますわよ」


「りょーかい☆」


「……ん」


 ポガンテス。


 二メーリア(ウルティナの前世の世界でいうところの二メートル)を越える身長をもつ、青色の肌をした人型の、ポープルが進化した魔物。

 ポープルと同じく顔が動物の豚に似ている。単独で行動しているときも多いが、二、三体で群れることもある。


 今回は幸いにも、一体だけのようだ。


「まずは私たちでポガンテスの足止めをしますわ。セクリアはそこに攻撃をお願いしますの」


「……わか、った」


 ガサガサっ、と木が揺れて。


 魔物は、その姿を現した。


 ウルティナは懐から[紅之指揮棒(ルーフス=リネア)]を取り出す。

 取り出して、一振り、呪文を唱える。


「いきますわよ、《狂詩曲(ラプソディー)第三番『(くさり)』》」


 ヒョコッ、と黄色いうさぎのアンモスがポシェットから顔を出して手を宙に差し出した。

 瞬間輝く魔法陣。

 それが消えると、ポガンテスに土でできた枷が絡まった。


「では、次に。《狂詩曲(ラプソディー)第二――」


「……《その身に宿れ、横暴なる(ほむら)》」


「――ばn……、あっ」


 続いて呪文を唱えようとしたウルティナだが、その前にセクリアが飛び出してしまった。


「ちょ、待ってくださいまし」


 慌てて引き留めようとするも、時すでに遅し。


 セクリアはポガンテスに攻撃を加えようとしていた。

 だが。


 ポガンテスとてただおとなしくやられるわけもなく。


 身体が動かなくとも、腕は動く状態だったから。


 ブンッ、ブンッ、っと。


 セクリアに向かって、凶悪な質量をほこるそれを、思いっきり振り回した。


「っもう、《狂詩曲(ラプソディー)第零番『(まぼろし)』》っ!」


 見かねたウルティナは、指揮棒を振る。


「いっくよぉーっ」


 そして彼女から指示を受けたフィーディーが、純粋な魔力によって加速し、ポガンテスの極太い腕を切り落とそうと魔力の刃を振るった。

 腕は抵抗なく、すらりと切り落とされる。


 ウルティナからの助太刀にセクリアは顔をしかめたが、なにも言わずにレイピアの切っ先をポガンテスに沈めさせる。

 肉厚なはずのポガンテスの脂肪は、しかし少年の細剣を抵抗なく受け入れてしまい。


 結果、そのレイピアは核を貫き通した。



 [紅魔之細剣(グラディウス)]をポガンテスから引き抜き、後ろを振り返ったセクリアは一言。


「……手助、け……いらな、かっ…た、のに……」


 そんな言葉に、ウルティナは作り笑いを浮かべて返す。


「少し、お話をしましょう?」


 セクリアの隣にいたフィーディーは、小さくその身を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ