第8章 家族と確信
今回も少し長くなってます。
俺や姉貴の頭は、少しの間ブッ壊れ続けてたが、やっと落ち着いてくると何かを聞こうとしていたのを思いだす。
(ん? 何か聞こうとしていたはずなんだが、何を聞こうとしたんだけ? ……あ)
「そうだ! あれだよ何で忘れてたんだよ俺ー!?」
「ヒャ!? な、何どうしたの!? あれ学校は半裸の未来は!?」
少し自分の記憶を整理すると、自分が聞こうとしていた事を思いだした事に声をあげると、今だ、妄想でトリップしていた姉貴が驚きに声をあげ無意識に集めていた本を落とす。
何かまた不穏な事を言っていたが、今はそれより思いだした事を忘れない内に聞くのを優先した。
「姉貴、驚かせて悪い。聞きたい事があるんだが、答えてほしい」
「ふぇ!? だ、駄目! まだキスは、はや――」
「俺が初めて姉貴の前で泣いた時の事を覚えているか!」
ある事を確める為、正面から姉貴の両肩を掴み見つめると、まだ妄想の中にいるのか――――頬を赤らめ瞳を潤ませながら早口にアホな事を言うが遮る形で質問する。
それを聞いてようやく現実に戻ったのか呆けた顔で「へ?」と言い、聴いていない事は予想していたので「だから!」ともう一度同じ質問すると――思わず後ろにさがってしまう程に目のハイライトを消し能面の様な顔になった。
「え、あ~、ん覚えてるよ? あれでしょ兎の様にビクビクして甘えて……お姉ちゃん~、って言い始めた頃でしょ。あの頃の未来は可愛かったな~。――あの頃に襲えば――」
「よーし!! 覚えてるなら話が早くて助かるよ! それじゃ確認したい事があるから――ごめんなさい。そろそろ元に戻って下さい!」
姉貴は顔色を変えずジッと俺を見続けて答えてくれるが、何処か辛辣な言い方に冷や汗を流し始めるが、姉貴は気にせず目の光を消したまま笑い、すぐに能面に戻ると何も話さず見続けたまま、いつも通りの妄言を言おうとする。
その時……いつもなら鳴らないはずの第六感が、人生の中でもトップ三に入る警鐘を鳴らしだした事で、ヤバイ! と思い大声をあげ遮り最後に土下座して謝罪した。
土下座のまま耳に入ってくる言葉は「義理の」「本当の家族に」「子供」等を抑揚のない声で言っているが、本能が――理解するな! と言っているせいと言えばいいのか、それともお陰と言うべきか意味が理解出来ない。
だが、警鐘はどんどん大きく鳴り姉貴が動く気配を感じ――誰かー!! と心で叫んだ瞬間――――
――ドンドン!
「お姉ちゃん、お兄ちゃん! 朝っぱらから五月蝿いよ! ご近所さん方に恥ずかしくて顔合わせられなくなるからそろそろ静かにして!?」
ドアを叩く音と共に幼さを残した声が聞こえ姉貴の目に光が戻ると「ハッ!」と声をあげ慌ててドアを開けにいく。
「ああうん、ごめんね! ……おはよう♪ 彩芽♪」
「うん! おはようお姉ちゃん♪ それでその、お兄ちゃんどうしたの?」
謝りドアを開けると――艶のある黒髪をツインテールで纏め、幼さを残したそこら辺の美少女より可愛い顔をしているが、体は小柄の割にでる所は出ており括れるべき所はモデルと同じ位に括れたハッキリ言うと――エロゲのロリヒロインか何かと言いたくなる妹がいた。
姉貴と笑顔で挨拶をかわすと俺に挨拶をしようと目を向けるがすぐに困った顔になる。
理由は簡単な事で――俺は、情けなくも泣きながら妹を拝んでいた。
その対応に困り姉貴に聞くが姉貴は「何でだろ~?」と本当に分からない様に言いながら、頬に指を置き首をかしげた。
「彩芽、神!!」
「本当にどうしたの!? お兄ちゃん、お兄ちゃんお願い、戻ってきてー!」
あのままだったらとどうなっていた事か! とゾッとし、今だ後光がさして見える彩芽に、泣いて拝み思ったままを言った。
それに動揺し彩芽が近付き肩を揺さぶり声を掛けるが、目を閉じて拝んだ体勢のまま何も反応しない事に更に動揺し叫んだ。
それからすぐ意識を現実に戻し、安心した彩芽が部屋を見回すと、散らばった本を見て顔をひきつらせ……俺とこっそり逃げようとした姉貴を正座させ、説教した後……三人で片付け空が明るみ始めた時に終わった。
「やっと終わった~! もう、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、今日がお祭りだからって、あんまりはしゃがないでよね! それじゃ少し早いけど、彩希羅を起こしてくるね♪ あれだけ騒いでたら彩希羅も起きてるだろうけど」
少し頬を膨らませ、再度くぎをさし、ドアまでいくと……振り返りあざとい声で言い、最後にウインクして彩希羅を起こしに行った。
それを見ながら苦笑し……姉貴の方を見れば、ちょうど同じ様に俺の方を見ており、お互いに笑って部屋を出ようとする。
「朝飯の準備するけど、少し時間掛かるが大丈夫か?」
「うん、まだ時間あるし大丈夫だけど? 今日って未来の当番だったけ?」
階段に差し掛かった辺りで、首をかしげ尋ね俺は欠伸を噛み殺して答える。
「いや違うが、だが早く起きちまったからな。それに姉貴も祭りの催しの準備があるだろ? つー訳で俺がやるからゆっくりしてろ」
「ん~、分かった。メインは任せるけど、味噌汁とかサラダ位は、手伝わせて欲しいんだけど……駄目かな?」
「いや、ありがたいが、準備はいいのか?」
「ん! もう殆ど終わってるよ♪ 後は、持っていく着替えだけだから問題なし!」
「そうか? なら先に頼む」
「別にいいけど? お風呂にでも入るの?」
「いや、起きてから顔洗えてねぇし眠気も残ってるから洗ってくる」
「そういえばそうだね。じゃあ、先に作っとくね♪ ……あっ! 未来さっき聞けなかったけど何の質問だったの!?」
話しつつリビングの方に向かうが途中で俺は風呂がある所に行こうとした途端――姉貴が慌てて聞いてくる。
俺は、風呂場に向かってた全身が石化した様に固まり残ってた眠気が吹っ飛ぶ所か、本日何度めか分からない冷や汗が流れ早く鳴る鼓動を落ち着けようと内心で――大丈夫だ! 落ち着け! 落ち着け! と繰り返しながら頭ではこの状況を考える。
(さっきと同じ事を聞いたとして、同じ様になる可能性が高い! ならば聞かないで話題をそらす? いや、それだけは駄目だ! あれは俺にとっても大切な記憶……なら、違和感の正体をハッキリさせるべきだ。……よし、覚悟を決めろ! もしもの時は、あれを使えば大丈夫! ……なはず)
一度大きく呼吸すると冷静を装いながら半身姉貴に向き動揺で声が震えない様、意識しながら聞く。
「あー、あれ。……そうだな、質問をする前に聞いた事って、覚えてるか?」
「ん? ん~、アハハ何か聞いてたっけ?」
首を傾げて困った様に笑いつつ聞き返してきた。その反応に平静を装っていた顔がひきつりドン引きになるが、それをどうとったのか姉貴が、アワアワと弁解してくる。
「待って、違うの! あの時、未来に抱き締められてから少し妄――考えごとしすぎてて、気付いたら彩芽がドアを叩いてたの!? 話を聞く気が無い訳じゃないの! だからもう一度教えて、お願い!」
弁解し、だから嫌わないで。と言いたげに瞳を潤ませ見てくるが、それ以前に弁解途中で言いかけた言葉に更に引き、もう聞くの本当にやめるか? と思い掛けるが何とか思い止まり聞く事にする。
「分かった、分かったから!? ワザワザ目を潤ませるな! ……んじゃ最初に聞くが姉貴、俺が初めて泣いた時の事て、覚えてるか」
「それって、あれだよね。お祖父ちゃんが神主していた頃、だよね?」
「ああ」
「懐かしいな~。あの頃の未来ってお姉ちゃんやお父さんにお母さんの事全く信用していなくていつも私達の反応を窺っていたな~。あ! でも私に抱き付いて泣いてから私だけに、お母さん達がいない時に本音を見せてくれてたな~♪ あ~、今思い出しても可愛いな~エヘヘ」
緊張しながら聞くが、予想は外れ普通に懐かしむ感じで話しだすが、さっきの様に目の光が消える事は無く……笑顔も完全に慈愛に満ちたものだった。だが段々とだらしなく顔を弛ませもう少しで、お見せできないよ。ってなる直前で止めに入る。
「よーし! ストップだ姉貴! それ以上絶対に考えるな! 考えずに戻ってこい!」
「ハッ! アハハハ、ごめんね。またちょっと考え事しちゃってた」
「は~、もういいから、とりあえず覚えてはいるんだな。ならもう一つ確認するが、あの時……じいちゃんが話をしていた内容は、覚えてるか」
いちいち突っ込むのもめんどくさくなり露骨に呆れたため息をつき、最後の確認をとると……姉貴は「当然!」とドヤ顔で胸を張る。その際に揺れるせいで目が行き掛けるが何とか踏み止まり次の言葉を待つ。
「確か、夢と心の在り方についてだったよね」
「ああ。……姉貴も覚えていてくれたんだな」
「あたりまえだよ。あの時の事があったお陰で私達は家族になれたんだもん。だから私にとって大切で大事な記憶だよ」
「そ、そうか。ありがとな姉貴」
言われた言葉が嬉しく、抱き付いて礼を言いたい衝動を抑え頭を掻きながら礼だけを言った。
その様子を成長を喜ぶ母親の顔で微笑んで見ている姉貴に気付き「んっん!」と唸り、気持ちを切り替えると……それが分かったのか、姉貴も真剣に聞く姿勢になる
「姉貴に答えてもらった事で俺が覚えてる大部分が同じだと分かった。その上での質問何だが、姉貴その話をしていた時―――じいちゃんは一体何処をいや、誰を見ていたか分かるか」
俺は違和感を覚えた部分が間違えているか聞けばいいだけにも関わらず、何故か―――俺達三人以外に誰かがいた。そんな曖昧だが確信の様なものがあり聞いた。
姉貴は最初唖然とした後、苦笑いで答え始めた。
「もう、急に真面目な表情で聞いてくるから何かと思ったら、お祖父ちゃんはずっとお姉ちゃんや未来を見て話していたよ♪」
答えを聞いた瞬間――どす黒いものが溢れてきた。
俺は、平静を取り繕い黒い感情を押し殺して話を続けた。
「……そうか。……そういえばそうだったっけな? 悪い」
「ううん、気にしなくていいよ。私も久しぶりに思い出せたしね。でも、未来が聞いてくるて事は何かあるの?」
「いや、何もねえよ? ただ夢で出てきて
その時に少し違和感があってな……その確認の為に聞いたんだ」
「……未来……今何を「あ! お姉ちゃん♪」」
姉貴が聞いてきた事に肩を竦めて答えるが、何か感じたのか哀しげな顔になり何か言おうとするがタイミングよく彩芽と、その後ろから……もう一人の彩芽を連れて降りてきた。
ただ顔立ちや身長は同じだが、髪は同じく艶がある黒髪だが、長い彩芽と違い短くしている。服装も、肌着にトランクスと男の服装をしている。
女に間違えられるが男である双子のもう一人――彩希羅があくびをし頭を掻きながら中性的な声で挨拶をしてくる。
「ねみ~、おはよう兄貴、姉ちゃん。夫婦漫才はいいけど時間を考えてくれ。お陰で俺達は寝不足だ」
「ちょっと、私まで含まないでよ! 私の方は、生活習慣を乱してないから寝不足じゃないよ! それに寝不足なのは、彩希羅が遅くまでゲームでもしてたからでしょ?」
「フッ、馬鹿めあれはゲームではない! そう、戦いなのだよ!」
「いや、だからゲームでしょ! は~、もういいから早く準備するよ。今日の当番は私達なんだからね。お姉ちゃん今から準備するからもう少し待ってもらっても大丈夫?」
腕を組みニヒルな笑みを浮かべ堂々と言うが……聞いてた彩芽は、ツッコミをいれた後……頭を押さえため息を吐くと、申し訳なさそうに姉貴に尋ねた。
だが姉貴は、そのやり取りを見ず何かを訴える様に哀しげな顔で俺を見続けていた為、驚き言い淀む。
「え、あの!?」
「……彩芽、彩希羅、今日の朝は俺と姉貴が作るからやらなくていいぞ。手伝ってもらっても大丈夫なんだろ姉貴?」
「……う、うん! 朝の方は、大丈夫だから任せていいからね♪ 彩芽に彩希羅はゆっくりしてて♪」
そろそろ限界に近い俺は今が好機とばかりにさっきまでの話は終わりだとフォローをしながら目で訴えると一瞬――納得いかなそうにしてたがすぐにいつもの姉貴に戻り話を引き継いだ。
「え、でも流石にわる「お詫びに豪勢な朝食にするんだが?」くないです。寧ろ嬉しいよ~♪ ありがとお姉様、お兄様♪」
困った様な顔で断ろうとするが小声で言った途端――困った顔から一転キリッとした顔で肯定し今度は猫なで声で礼を言いながら姉貴の腕に摩り付く。
それを呆れた顔で困惑してる姉貴と彩芽を見る彩希羅を見て(切り出すなら今だな)と思う。
「んじゃ~、悪いがもう少し待っててくれ、先に顔洗ってくるからよ」
「あ、じゃあ俺も」
「二人だと狭いだろ? 終わったら言うから先に仏壇の線香やってろ」
「あ~、それもそうだな。分かった、彩芽はどうする?」
「ん~、女の子だから先に洗ってからあげたいけど、料理が遅くなっちゃう方が嫌だし……準備を手伝ってからいくよ」
迷った末に食欲が勝った様でそう言い、彩希羅は「分かった」と踵を返して座敷の方に向かう。
彩芽は、姉貴に「早く準備しよ♪」と言って先に居間に入ると姉貴はまた俺を見て何かを言おうとするが、何も言わず居間に向かおうとするそれを見ながらギリギリ聞こえる声で「後で、説明する」言い風呂場に向かった。
洗面所で顔を洗い正面の鏡を見た。そこに映っていたのは、姉貴より少し濃い赤色のツンツン頭に何処にでもいるような平凡な顔立ち特徴を上げろと言われれば、目付きが悪く何処か無気力さを感じる濁りかけた瞳位だろう。
だが、今はその目に無気力さ等無く怒りが感じ取れるものに変わっておりそんな自分自身の姿を見ながら思う。
(姉貴の答えでほぼ確実になった。俺の記憶にある物と姉貴の記憶の大部分は一緒だった。……違ってほしかった。……俺の勘違いであってほしかった! だが、勘違いでも考え過ぎでもなかった! 分かった事は、一つだけ――俺か姉貴の記憶が改竄されていやがる!!)
ここまで読んで下さりありがとうございます。
今回も誤字、脱字等がありましたら報告をお願いします。
次回は、7月中に出します。