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神と人と妖魔の戦記録  作者: 邪な鬼
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第16話 再開と恐怖

遅くなりすみません!


 雲がかかりはじめた空の下……祭りの準備で賑わう緋牝神神社の入口前に巫女服を着た美女―――姉が笑顔で見回していた。


 一度全体を見回し終えると笑顔で振り向き話し掛けてくる。


 「さて、未来も一緒に作業を頑張ろうね♪姉弟仲良く張り切って行こうね未来♪」


 「…ああ」


 返ってきた声に頷くと向き直りゆっくりと歩き出し天気を確認する様に顔をあげて話し出す。


 「それにしても本当に雨が降りそうだね。降ってもいいけど一緒に行動出来る時間は降ってほしくないな~未来もそう思うでしょ♪」


 ―――――ジャラ……ジャリ


 「…ああ」


 「えへへ、そう思ってくれて嬉しいな♪お姉ちゃんも嬉しいよ♪」


 時折…何か金属が地面を削る音が鳴るが気にした様子もなく照れた様に頬を赤らめ言葉を返してくる。


 ―――――ジャララ……ジャリン


 「…ああ」


 「あ!後ね♪―――――――」


 歩きながら一定のリズムで響く金属音はまるで無いかの如く……楽しそうに喋り続けており、その姿を屋台の準備をしている中年の男女や老人方が気付いて……微笑ましそうな視線を向けるが、2,3秒もしないうちに顔を青くさせ……全員が俺達姉弟の姿が見えていないかの如く目を反らし、元の作業を再開しながら近くの人に話しかけていた。


 いつもの俺であれば今の行動に舌打ちの1つでもして不機嫌さを表すのだがそれすらせずに――――死んだ魚に近い眼を無機質なものに変え、虚空を見つめ続け一定の間隔で「…ああ」と呟き続ける()()()()()()()()俺がいた。


 つけられた首輪の先には、頑丈な鎖が地面に付くか付かないか位に垂れていて、時折……地面を削っては浮き……また削って浮くを繰り返している。


 その鎖を一周分を輪にして持つ姉はそれがあたりまえであるかの如く笑顔であるがその眼は―――決して笑ってなどいなかった。


 何故こうなった。それは一時間程前に戻る。



 ――――――一時間前―――――――



 「すまん!俺が悪かった謝るから止め!?ギャアアアアアアァァー!!」


 「……フー、始末完了っと♪さて、この粗大ゴミを何処に捨てよっかな♪」


 周りに生々しい悲鳴や打撃音や破砕音を響かせた後、走り回ってかいた汗を笑顔で拭う仕草をし、少年アニメならモザイク必須な状態になって動かなくなってる佐間義を見て、捨て場所を考える。


 あの後、神社に向かって全力で逃げる佐間義を追い掛け回し、時には先回りして行かせない様にして少しばかり広い路地に追い詰める事に成功し今に至る。


 (はぁ~、それにしても疲れた。少しは、力使ったらよかったか?…いや、駄目だな。姉貴にあんな事を言っておいて俺自身が使ったら元も子もないな)


 「…はぁ~、本っ当に面倒くさ!」


 内心本当に疲れながら姉貴に言った事を端に追いやり楽な方に考えかけたが自分自身が言った事を守らないのは駄目だろ。とその考えを追い出すとため息をつき本心を叫んだ。


 また出そうになるため息を飲み込むと周りを見回す。


 「建物がそこまで高くないおかげでギリギリ見えるが思いの外近くまで来ていたんだな。もう少し遅ければ危うく姉貴にバレル所だったな」


 そう呟きつつ建物の影から見える鳥居を見上げ安心する。だが――――


 「何がバレる所だったのかな~ねえ―――未来♪」


――――後ろから聴こえた優しげな声に全身を硬直させた。


 全身を硬直させながら(今のは幻聴、今のは幻聴!)等と懇願するかの如く止まっていた汗を流しながら頭の中で繰り返し呟くがその望みをぶち壊される。


 「ねえ未来♪誰に()()、バレたらいけなかったの―――かな?」


 後ろから近付いて来ていた声の主が耳元で囁く様に、一部を強調して言いながらゆっくりと俺の顔を囁かれた方に向かされると―――いつもは優しげな眼を狂気と怒りを混ぜた眼で笑いかける姉貴がいた。


 その状態のままお互いに何も言わず固まっており、他の人等が今のこれをみたら―――妖艶な雰囲気を纏った美女が不良少年に絡みついてキスをしようとしている様に見えるのだろう。


 だがそれは、"俺達と関わりがない人が見たなら"だ。


 俺や姉貴と関わりがある奴がみたなら、俺が何かをやらかし姉貴を怒らせ、逃げられない様に拘束されたのだろう。と連想できる構図になっていた。


 俺は姉貴の顔を無理矢理見せられた時に、希望が打ち砕かれてしまったがどうにか逃げる方法がないか頭を廻す。


 (考えろ考えろ考えろ!どうしたら逃げられる?!取り敢えず現状の整理まず足は絡まれて動かない。動ける状態だったとしても恐怖からどのみち動けないから無理!なら懐柔しかないが今の姉貴の眼は知りたい事以外の言葉を話した場合、最悪―――監禁!……あぁ、これって――――)


 「無理ゲーじゃねえか」


 「うん♪ようやく諦めてくれたね♪それじゃ~、理由説明してね―――み・ら・い♪」


 逃げ道がない事に諦めから呟くと、まるで諦めるのを待っていたかの如く笑顔で頷き楽しげな声で俺の名を言った。


 それから諦めた俺は、話すので離れて欲しいと願うと、何かの葛藤をした後に渋々と離れてくれた。


 そんなやり取りを終え正座をさせられた俺は、佐間義の手当てを終えた姉貴に……ここに来るまでのいくつかをごまかしつつ、それがバレない様にしながらほぼ全部を話した。


 「―――と、まあそういうことがあった「あった?」いや、ありました!あ、それとこちら例の物です」


 いつも通りの喋り方をしようとしたが笑みを浮かべて聞き返され、急いで言い直し……届けようとした物を王に献上する様に差し出した。


 「あっ!忘れてたよ~ありがと♪それじゃあ、本当に危ない事は何もしていないのね?」


 「あ、はい何もしていません!口頭で言い合ってアイツ等が自爆しただけで終わりました!」


 実際に嘘は言っていない。危うく殴りあおうとしたが、アイツ等自身が仲間割れを始めたから結果を言えば危なかった訳ではない。等と思いながら、早く終われ早く終われ!と内心ハラハラしているが顔に出さず姉貴が終わらせるのを待つ。


 「…はぁ~、何か怖がってる様だけど嘘は言ってなさそうだしな~?……う~ん、お姉ちゃんなんだからこれ以上疑ったら駄目だよね?……うん♪分かった許―――」


 最初、見つめ続けながら何か独り言の様に呟いていたが、悩む様に首を傾げ……少しの間をあけた後、いつもの雰囲気に戻り笑いかけて、許す。その言葉が聞こえようとした途端――――


 『そこまで言うなら従わせてみろよゴミクズ野郎!』


 ――――佐間義が倒れている場所から俺の声が聞こえてきた事で場が固まった。


 姉貴は、聞こえてきた声にえっ!?と言った表情で佐間義の方を向き、俺は、唖然とした表情で佐間義の方を急いで見た。


 そこにはスフィアが起動している事を知らせる青色のホログラムが映し出されており、包帯で顔を覆われた佐間義は笑いながらスフィアをさしだそうとしていた。


 「ふ、ふふ、お姉さん証拠の動画、が……こっちにあり……ます、ので確認……して、下さい」


 俺は言い終わるやいなや、全力で取りに行こうとしたが姉貴はそれより速く……一瞬で佐間義の近くに行くとスフィアを受け取る。


 俺は頭の中で鳴る今日で三度目の警報に従い、逃げようと大通りに向け走り出したが、不意にガチッ!と足元から音が鳴った途端―――足を引っ張られる感覚と共に倒れた。


 慌てて引っ張られた足を見ると、とあるアニメの刑事が怪盗を捕まえる際に使ってた、縄に手錠を付けた物に捕らえられており、縄の先を見れば―――佐間義が底意地の悪さを出した笑みを浮かべていた。


 「この糞野郎!何ふざけた事してやがんだ!!」


 「ク、ククク、さっきの……仕返しだ!お姉さんの、愛情……しっかり受け取りな」


 心の中で、無事に逃げきれたら絶対に殺す!と誓いながら殺意を押さえ取り外しに掛かるが―――


 「くそ!?外れねえ―――って、テメー何か細工しやがったな!?」


 ―――細工をされ外す事が出来ず、更に顔を青ざめさせた。


 「フッ、先にあの世で待ってグバッ!?」


 無駄に格好いい台詞を吐こうとした佐間義に、取り出した小型裁縫箱を手加減なしに投げつけて始末し、中に入れてた糸切りバサミで縄を切りにかかる。


 「ッ!切れた!急いで――――グエッ!?」


 何とか切り離し、いざ逃げようとまた走り出した途端―――今度は首を引っ張られる感覚をあじわい息をつまらせた。


 「ウフフ♪ねえ~未来。何で逃げようとするのかな?お姉ちゃん悲しくて泣いちゃうよ?」


 地面に倒れ咳き込んでいると、佐間義のスフィアを片手に持ちながら……もう一方の手には何処から出したのか鎖を持ち覗き込む形で見下ろしてくる。


 いつもの優しげな笑顔ではあるが、俺は小刻みに震え顔色を青から白えと変えていく。


 いつも通りの笑顔"だけ"ならこんなふうにはならなかっただろう。だが今の姉貴には、優しげな笑みを浮かべているにも関わらず、その手には鎖がありその先が―――俺の首にはまっている首輪に繋がっていた。


 「クフフフ、そんなに震えなくても大丈夫だよ未来♪今から聞く質問にちゃ~んと答えてくれたら外してあげるから、ね?」


 俺は、声がだせず必死に首を縦にふり了承の意をしめす。


 「あ、でも~もし嘘をついたのが分かったら――――一生離さないからね♪」


 お互いの息を感じ取れる距離まで顔を近付けた姉貴は、眼を合わそうとしない俺の顔に触れゆっくりと眼を合わさせると――――光を消した瞳で警告してきた。


 それから数分もしない内に俺の悲鳴が響き渡った。

 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 今回も誤字,脱字等の意味の分からない部分がありましたら教えてもらえるとありがたいです。


次回は、11月中に出します。



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