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妙に晴れやかな気持ちだったのは、きっと再びあの少女を見たから。そして、彼女には悲しげな雰囲気などないと知ったから。
どこか忘れられないあの雨の日の公園の少女とは別人のような気さえするほどに。
修に気分が良さそうだと言われ、そうだとは言わなかった。否、そうだとは思っていなかった。
実際はあの少女とは赤の他人であり、彼女がどのような状況であるかなど、誠には関係のないことだ。関係のないことで気分が上下するほど誠は暇ではない。
しかし、今、こうしてまた、あの少女のことを思い出しているのは、やはり、どこか気になっているからなのだと、誠は原因を探る。探ったところでわからないのは承知の上で、だ。
雨の日の少女をあの少女、としているが、恐らく彼女は先輩だろう。そうだとしたら、誠自身から少女として見るのは少々失礼に当たる。かと言って、何か相応しい呼称があるわけでもなく、頭から離れない彼女を、あの少女、とするしか今はないのである。
その日の帰り道、誠はまたあの公園が見える道を通る。
そこにあの少女の姿はなく、小さな雨粒が降り続く景色の中、古びた遊具が目立つだけだった。
やはり、あの少女の悲しさは見間違えだったのかもしれない。
家の方向へ振り向き、足を運ぶ。
そうだ。きっと気のせいだったのだ。どんより暗い雨雲の下で、似たようなイメージを見てしまったのだろう。
誠は傘から額に落ちた雫を拭いながら、そう自分に言い聞かせた。