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TS転生したからロールプレイを愉しむ  作者: ドスコイ
第一章 わかれみち

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第四話(裏)ルークス・ステラエじゅうさんさいです、キャハ☆

 俺は十年ぶりに師匠から譲り受けた屋敷に居た。

 今はとある古城を拠点としているのだが、あそこでは万が一があるからな。


「……ふぅ」


 全身が映る姿身の前に全裸で立ち、軽く深呼吸。

 今までやろうとも思わなかった試みを、これからしようと思う。


「”喚起せよ”」


 その言葉と同時に鏡に映る俺の姿に異変が訪れた。

 身長、胸や尻の起伏が時計を逆回しにしたかの如く縮み始めたのだ。

 今俺が行っているのは魂に刻まれた肉体の記憶――それの再現である。

 と言っても、変わっているのは見た目だけで培った力までもが肉体に合わせて失われている訳ではない。

 力を制御し、出力を低下させたりする事は出来るが”失わせる”事はどう足掻いても出来ないのだ。

 真なる魔女になった時点で、神域の力を捨て去る事は不可能になってしまう。


「ふむ、このぐらいで良いか」


 シンちゃんも大好きな俺のビッグバストは見る影もなくペッタンコ。

 顔立ちや身体のラインを含め”女”ではなく”少女”のそれになっている。

 この状態でも身長は160に届くか届かないかぐらいはあるのがちょっと減点だが……まあ良い。

 今の俺の外見年齢は――多分、十二、三歳かそこらだろう。

 確か十四歳過ぎたあたりから胸やら尻やらに肉がつき始めた覚えがあるし。


「――――ルークス・ステラエじゅうさんさいです、キャハ☆」


 ブリっこポーズ&スマイルで声まで変えてみたのだが、我が事ながらキッツ!

 二千歳超えたババアがするこっちゃねえよ。

 見た目は若くても内面の加齢臭がプンプン漂ってんだよババアと唾を吐きたくなる。


 さて、何だって俺がこんな事をしているのかと言うと……話は昨日の朝にまで遡る。


 昨日も常と変わらず昼過ぎに起床。

 のそのそと気怠るげにベッドを降りて食堂に向かうとノクティスが何時ものように食事を用意してくれていた。

 食堂にはノクティスだけでなくシンちゃんとポチも居て俺の姿を見るや眩い笑顔と元気な声で挨拶をしてくれた。


《おはようございますルークス様!》

《マスター、おはよっ!》

《…………ああ》


 俺は何時もの如くテキトーに返事をし、席に着いた。

 そして俺が座ると同時に二人は立ち上がった。


《それじゃあ、行って来ますね》

《帰るのは多分、二日か三日ぐらい後になると思う》


 そう言って食堂を出て行った。

 察しがつくかもしれないが表の顔である冒険者としての活動に向かったのだ。

 二人は何時もこうなのだ、冒険者稼業に限らず用事があって拠点を出る際は必ず俺に挨拶してから出て行く。

 本当ならもっと早くに出た方が良いだろうに、それでも俺を待っている。

 ぶっちゃけ待たずに扉の前で寝てる俺に言うだけでも良いと思うんだがね。

 俺に合わせ、俺の顔を見てちゃんと挨拶をして行く。


 律儀なもんだと思いながらスープを啜る俺だったが、


《……》


 はたと気付く。

 あれ? 俺ってすんげえ駄目人間じゃね? と。

 いや、普段から自覚はしているが……それでも、こうあるだろ?

 何か時々、だらしのない己に対して無性に罪悪感のようなものを覚える時が。

 昨日の俺が正にそれだった。

 ここ最近、連日二人が仕事に精を出しているのもあってニートな自分がどうしようもない粗大ゴミに思えてしまったのだ。


 真面目に働いてる子供らを昼過ぎまで待たせてのんびり昼食とか舐めてんの? あの子ら絶対、朝早くから起きてたぜ?


 欠片も生産性がない粗大ゴミが勤勉な人間の足を引っ張るなよ。

 むしろ、お前が早く起きて二人が円滑に仕事へ迎えるようにしろや。

 この二千年でお前は働いて金を稼いだ事あるのか?

 ないだろ、金を使う時もその場で作り出してんじゃん。

 物が欲しい時は通貨偽造も含めた魔法でゴリ押してんじゃん。社会舐めてんの?

 子供らが働いてお金を稼ぐと言う事をしているのに恥ずかしくないの?


《う、ぐぅ……!》


 考え出すともう、止まらなかった。


 次から次へと己の駄目さが顔を出して来やがる。

 生活を滞りなく進めるための力を手に入れるために、苦労をしたと言う自負はある。

 普通に働くより何万倍もキツイと胸を張って言える。

 だが……必死こいて働き、労働で得た対価を払って人生を謳歌していた前世の自分だって負けちゃいねえ。


 労働の辛さ、喜び、尊さを俺は覚えている。


 就職したての頃、慣れない仕事で毎日毎日辛かった。

 何度辞めてやろうかと思った事か。

 それでも、初めて給料が振り込まれた日の嬉しさは今でも鮮明に思い出す事が出来る。

 覚えてるよ、入ったばかりの給料で新作ゲームを買ってその足で焼き肉を食べに行った時の得も言われぬ充足感を。

 そうして俺は今生初の労働を決意した。


 ルークス・ステラエ(にせんさい)はじめてのおしごとである。


 日常をエレイシアロールで染め尽くすと十年前に誓ったが……まあセーフだろう。

 作中で昔の自分になって未来ちゃんの傍でJKやってたりもしたしな。


「外見のベースはこれで良いか」


 流石にそのままの姿で働くのはね、気分的にね。

 認識弄れば誰にもバレずに外出歩けるけど……重ねて言うが、俺の気分的によろしくない。

 世間様の認識で俺の素の容姿は失望と諦観に沈む禁忌の魔女なのだ。


 例え認識されなくても、何かしっくり来ない。


 だから外見を変える事にしたのだ――と言ってもこれまた俺本人の問題だが、かけ離れ過ぎるのもしっくり来ない。

 容姿も性別も年齢も自由自在だが、自分の原型が消える程の偽装は尻の据わりが悪い。

 なので若返りを目論んだのである。

 とは言えただ若返るだけなのもつまらないし、ここから多少の変化は加えるつもりだ。


「髪や目の色は……このままで良いか……」


 外見は昔の姿そのままなので瞳は黒だし、髪も偽装ではない素の黒髪である。

 シンちゃんの件でも分かるように黒髪黒目――それも女となると、色々良からぬ輩を引き寄せそうだが……。


「それはそれで”美味しい”な」


 ついぞ使わなかった対チン魔法をお披露目出来るチャンスがやって来るかもしれない。

 あれは割と本気で構成した魔法だけに、一回ぐらいは使いたいんだよな。いや冗談抜きで。

 容姿で気になる点としては真なる魔女、始原の魔女を継ぐ者としての証たる黄金が何処にも見えない事だが……。

 働くつっても、シンちゃん達みたいに定期的に仕事をこなすつもりもないしな。ほんの少しなら目を瞑ろう。


「髪型ぐらいは変えてみるか」


 良い機会だ。

 女らしく髪型を弄るとかついぞして来なかったからな。

 二千年間、基本的に伸ばしっぱなしだ。

 時たま前髪が鬱陶しくなったりしたらちょいちょいと鋏を入れて調節してたが、そのぐらいだろう。

 前世でもそう、髪型にこだわりがなくニートにでもなっていたら伸ばしっぱなしになっていたはずだ。

 まあ実際は社会人ゆえ見苦しくする訳にはいかなかったので駅にある十分千八十円のカット専門のとこで整えてたけど。


「……どれもしっくり来ないな」


 ツインテール、サイドテール、ポニーテール、シャギーショート、ボブカット、etcetc……。

 色々と髪型を変えてはみたものの、どーにも頭が落ち着かない。

 ショート系統の髪型は前世では男だったし、しっくり来るかと思ったんだけどな。

 ロングヘアーで居る期間が長過ぎて、これが自然になってしまったらしい。


「基本ロングで細部を変えるか」


 膝のあたりまで伸びている髪をケツのちょい上程度まで調整。

 後は自然に流している前髪をデコがちょっと見えるぐらいまでの短さで均一に整えて……よし。

 やっぱり違和感は拭えないが、他の髪型よりは随分とマシだ。


「次は服装か」


 ……ふと思った。

 エレイシアが過去の自分を演じていた際、下着はどうしていたんだろう?

 設定的には基本ノーパンノーブラだけど未来ちゃんの傍でJKやってた時はどうなんだ?


「ノーパンノーブラの女子高生って……お前、それ……」


 かなり将来有望な変態性を感じさせるワードだと思う。

 はいているのか、はいていないのか。

 俺はどうするべきだろうか? そこらの設定も分かってたからそれに準じれば良いんだけど、分からないからな。


「うーむ……とりあえず、着けておくか」


 上はぺったんこなのでブラをする必要もないがパンツだけは穿いておこう。

 飾り気も色気もない黒の下着を魔力で編み上げて装着――さあ、次だ次。


「ビジュアルだけを優先するならこれだよな」


 黒い着物にフォームチェンジ!

 魔力で編み上げているから着付けの知識がなくてもオールオッケーだ。


「何か座敷童みてえだな」


 もしくは”いっぺん、死んでみる?”とか言って地獄流ししそうな感じ。

 悪くない、中々悪くないぞ――――動き難いと言う点を無視すれば。

 一応、俺は初めての仕事としてシンちゃんらと同じく冒険者をやってみるつもりでいる。

 だが、ガッチガチの着物で激しい運動とか出来ねえよ。普通に歩き難い。

 スリット入れたり遊女チックな改造を施せばまあ、出来なくもないが……却下だな。

 少々――いやかなり惜しくはあるが、和服は没である。


「ゴスロリ……にするならツインテールとかにした方が良いし……これならどうだ!」


 肩と腋だけを露出させた黒いワンピースドレス。

 足首近くまで丈はあるが普段のそれとは違ってスリットは入れていない。

 それでも割とゆったりしているのでそこまで動き難くはなかった。


「もう少し露出を絞るか」


 おみ足を覆い隠すストッキングを追加する。

 これで露出している部分は肩から指先までと腋のみになった。

 だが、まだ肌色面積は減らさせてもらう。

 二の腕あたりまでを覆うワンピースと同色のアームドレスを追加。

 手首にさりげなくリボンをあしらっているのがお洒落ポイントだ。

 まだ露出を削るなら半透明のベールとかを被るのも悪くはないが、まあそれは良いだろう。

 後は足下だが普段のロングヒールブーツも動き難くはないが……普通の編み上げブーツにしておこうか。


「ふむ」


 くるりと鏡の前で一回転。

 自分で言うのも何だが、これは中々良いんじゃないかな。


「やっべ、何かすっごい楽しいぞコレ」


 そして覚えがある、この楽しさ。

 これはそう……キャラメイクだ。

 主人公の容姿を自分で決められる系の洋ゲーで、ああでもないこうでもないと試行錯誤していた時と似ている。

 PCじゃない据え置きゲーム機でやる場合はMODを入れられないからイケメンや可愛い女キャラを作るのに苦労するんだよな。

 かなり苦労するが、それでも良い組み合わせが出来た時の達成感と言ったらもう。

 ただ、今やってるリアルキャラメイクではそのあたりの面倒臭さは楽しめないのでちょっと残念だな。


「武器は何にしよっかなー」


 種類からデザインまで自由自在だ。

 いや、問題がある銃を始めとした近代兵器系はアウトなので自由ではないか。


「…………これは、セーフになるのかな?」


 俺の手に握られているのは手の平サイズの金属で出来た円筒だ。

 は? これが武器? と思うかもしれないが、大丈夫、ちゃんとした武器である。

 ブォン! と言う効果音と共に形成された光の刃――そう、スターでウォー……んん! なアレだ。


「あんたが憎い!!」


 いや、名前的に俺は息子の方か。ルークスのスが余計だけど。

 ま、それはさておき真面目にこれはこれで面白い武器だと思うんだよな。

 一見すりゃSFチックに見えるが形成された青い光刃の正体は魔力だ。

 今は何の指向性も持たせていないが刃に使っている魔力の属性を変更すれば色々な局面に対応出来る。

 熱にすれば本家と同じく焼き切れるし、氷にすれば切った部分を凍結させる事が出来るだろう。


「一先ず保留で次はこれだ!」


 同じ刀剣類だが他の剣には妖しい魅力と美が存在するもの――そう、日本刀である。

 女の子が日本刀を引っ提げて大立ち回りをすると言うのは浪漫だ。

 そしてこれは俺の個人的なこだわりなのだが、女の子が日本刀を使うのならば大太刀が一番映えると思う。

 小太刀、脇差、打刀、太刀、どれもそれぞれ魅力はあると思うが女の子には大きな武器が似合うと言うのが個人的な見解だ。

 身の丈以上の大太刀を担ぐ俺の姿は中々様になっていると思うのだが……どうだろう?


「フホホ! 良くってよ良くってよ!!」


 今具現化した大太刀の個人的にグっと来るポイントを上げるなら、だ。

 妖刀感を際立たせる真紅の刀身、濡れたような輝きがまた何ともゾクゾクする。

 そしてそんな刀身に絡み付くボロボロの白い包帯も良いアクセントになっている。

 包帯には得体の知れぬ不思議な文字が刻印されており、如何にも力を抑えてますって感じがしてとてもグッド。


「担い手の血やら生命力やらを吸って形状変化する機能とかもつけてやろうかな?」


 演出的には封印されていた力が徐々に開放されてく的な感じで!

 ついでにその段階になると刀を握った手を起点に刃に浸食されているかのような黒い刺青が浮かび上がるようにもしよう。

 顔あたりまで刺青に浸食された状態で刃を振るうとかもう……もう!


「ああ、イイ……実にイイ……」


 とは言え、だ。世にはまだまだ中二武器が溢れている。

 この大太刀に決定してしまうのは些か気が早過ぎると言うもの。


「女の子が扱う巨大武器つったら、これもそうだよな!?」


 大太刀の次に現れたのは……そう、大鎌だね!

 色は黒、デザインは用途不明の突起をふんだんに散りばめたものがお約束だろう。

 これもまた個人的なこだわりなのだが大鎌の柄は長ければ長い程良くて、刃はデカければデカい程良いと思う。

 こんなん屋外でしか振れねえよって感じだが、浪漫の前には是非もないよネ!


「わーい! たーのしー!!」


 結局、リアルキャラメイクが終わったのはそれから五日後の事であった。

ダース・ルークス……語呂が悪いですね。

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