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TS転生したからロールプレイを愉しむ  作者: ドスコイ
第一章 わかれみち

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第三話(裏)つか金とか物で解決って、毒親そのも――んん!

感想欄で皆様色々と想像しておられるようで私としても嬉しい限りです。

読者の方がキャラをどんな風に頭の中で思い描いているかを知る機会なんてそうそうありませんしね。


それはさておきちょっと更新頻度落ちます。

最近ちょっと忙しくあまり家に帰れていないものでして。

申し訳ありませんがご了承ください。

 俺は今、鍛冶場に居る。

 わざわざ異次元に新築したもので俺以外の人間は誰も立ち入る事が出来ない。

 仮に次元間の移動を身につけたとしても座標が分からないだろうし、偶然転移出来たとしても辿り付けはしない。

 何故かって? そりゃ色々と罠を仕掛けてあるからさ。

 一番軽いので宇宙空間への放逐、それなりにヤバいので魂魄単位での消滅――セ●ムもビックリだぜ。


「(つか、暑い……本気で暑い……)」


 鍛冶師の気持ちになるですよ! とか言って温度調節してなかったけど……やっぱつれぇわ。

 馬鹿でかい製鉄炉の淵に立っていると心底気が滅入る。

 人目がないけど独り言を呟くのも億劫だ。


「(ゴポゴポゴポゴポ元気に滾りやがってよぉ、ホントムカつくぜ)」


 炉の中で煮立つ熔鉄が癪に障ってしょうがない。

 いや、俺だって普通の鉱石やら木炭を火にくべてるとかなら平気だったよ?

 ただ、製鉄のために生成した材料は普通じゃない代物だ。

 俺が本気で作り出したものゆえ、俺が本気で熱さなければ溶けるどころか燃えもしない。

 やっぱ温度調節しようかな? いやでも、それだと何か負けた気分に……む?


「(そろそろ良い塩梅だな)」


 純粋な鉄になるにはまだ程遠いが、次の材料をぶちこむには良いタイミングだ。

 そう判断した俺は左手でクソ長い髪をうなじあたりで掴み上げ、右手のリボンを短刀に変え切断。


「(…………大量の毛髪って、何かそれ単品でホラーだよな)」


 我ながら手入れも特にしてねえのに綺麗だとは思うけど、そこはそれ。

 束になった髪の毛って何か気持ち悪い。

 そんな事を考えつつ俺から離れた事で金色に戻った頭髪の束を炉の中に放り込む。


「(って熱ッ!?)」


 投げ入れた瞬間、噴火かってぐらいの勢いで沸き立ちやがった。

 髪の毛の反逆だろうか? こっちで止めなきゃ切っても直ぐに生えて来る癖によぉ。

 おめー、まだ綾波の方が代わりがきかない存在だからな。

 あの子は碇くんにとって……いや、碇くんはどうでも良い。暑さで頭が茹だってるようだ。


「(……つかこのクソなげえ髪も暑さを助長させてるよな)」


 瞬きする間もなく元の長さまで伸びた髪を魔力のリボンで編み上げる。

 気休め程度だが、ないよりはマシだろう。


「(さあ、次は骨だ)」


 右手で左肩を鷲掴み、一気に腕の骨を剥がす。

 鮮血が噴き出すものの、意を込めた血液ではないため炉の中に入る前に蒸発してしまった。


「(立派な鉄におなり)」


 左腕の骨をポポーイと炉の中へ。

 これで、材料に使うと決めていたものは全部ブチ込んでやった。

 後は更に熱を加えて不純物が排出されるのを待つだけだ。


「(よっこらせっと)」


 腰を下ろし一息――こうして物作りをしていると、改めて彼らの偉大さを痛感させられる。

 万能に等しい力を持っている俺なのに、この有様。

 その点T●KIOってすげえよな、最後まで全力全開だもん。


「(だがまあ、俺も手抜きはするつもりはないけどな)」


 今更ながらに何だって製鉄をしているのかと言う疑問に答えよう。

 答えは一つ、実にシンプルな答えだ――慰謝料のためである。

 誰のため? 無論、マリーちゃんだ。


「(ポチが居てくれたから良かったものの……)」


 居なければどうなっていた事やら。

 いや、俺ならば蘇生も可能だがそう言う問題ではない。

 自分のとこの子供が他所様の子供をぶち殺そうとしたんだもん。

 そりゃ保護者としては申し訳ない気持ちになりますよ。

 死んでも――ふぅん、そう……で流れるような奴ならともかく、あの子はそうじゃない。


「(曲がりなりにも一度は命を助けた相手でもあるしな)」


 直接謝罪に向かうのが筋なんだろうが、そこはほら……あれだ。

 あー……そう、ロールプレイ的にね? やー、俺が真っ当な大人ならロールプレイなんざかなぐり捨ててたんだけどな。

 なので駄目過ぎる俺は、駄目な謝罪方法――つまりは物品による誠意を示す事に決めたのだ。


「(つか金とか物で解決って、毒親そのも――んん!)」


 と、兎に角だ。

 謝罪なのだからそれ相応の品を贈るべきだと俺は考えた。

 それで思い付いたのが何時だったか妄想した事もある正と負どちらにも偏らないありのままの心を映すアーティファクトだ。

 と言っても、規格外の――所持しているだけでチート臭い力を手に入れられるような代物ではない。

 基本的にはスカー・ハートを同じく心を糧とする剣だが、アレをチート足らしめているのはシンちゃん本人の憤怒だ。

 俺の耳朶すら揺らしてのけるような熱量だからこそ、現世基準でチートになっているだけ。


「(普通の人間が使っても平常時ならば一級品の武具でしかないからな、アレ)」


 で、キレるとおぉ! っとなる程度には力を発揮するが人類最強とかそこまではいかない。

 同種の剣をマリーちゃんに贈ったとしても同じ事。

 だが、窮地でこそ輝きを放つその心には必ず応えてくれる。

 どれだけの輝きを剣に灯せるかはあの子次第だが、無意味な代物ではないはずだ。


「(単なるチート武器渡したら、逆に迷惑かかるだろうしな)」


 マリーちゃんはマレウスちゃん、ジャンヌちゃん、三人で歩いて行くのだ。

 これまでがそうだったように、これからも共に。

 歩調を乱すような代物を渡せば、得られるはずだった実りを得られなくなってしまう。

 だから心を映す鏡となり共に成長してゆける、しかし此処ぞと言う時には本人次第で可能性を切り開ける力を秘めた剣を贈ると決めた。

 使わないならそれはそれで良い。


「(普通に良質な品だからな、売り払えば金になるだろう)」


 どうするかはあの子次第だが、邪魔にはならないはずだ。

 だが、使ってくれると言うのであれば……正直、悪い気はしない。


「(っと、そろそろか)」


 本来は抽出を繰り返すらしいが、使っている物質が物質だ。

 そのような手間をかけるまでもなく純粋な鉄が吐き出された。

 吐き出された鉄を再度加熱し、加熱されたそれを今日のために誂えた槌でひたすら叩いていく。

 槌を振るう度に火花が飛び散るが、これは通常の製鉄で言うところの鉱滓ではなく魔力の滓だ。

 コイツを残留させたままにしておくと非常に危険だ。

 俺が使う分には問題はないが、真の担い手であるマリーちゃんが使う際、確実に制御を狂わせる。

 本人に害が及ぶ事はないとしても、街一つが綺麗さっぱり消滅とか洒落にもならん。


「(………………べ、別次元でやってて良かった)」


 叩いている内に気付いたのだが、鍛冶場の中がヤバい事になってる。

 滓と言えども真なる魔女の魔力だ。

 普段のように周囲に影響を与えないように制御しているのならばともかく、まったくの野放図。

 鍛冶場の大気が完全に俺の魔力で汚染されてしまった。


「(どっかテキトーな鍛冶屋を借りてやろうかなとか思ってたけど……やんなくて正解だわ)」


 現世の魔女魔法使いがどれだけ魔力を行使しても人体に影響はない。

 だが、俺の場合は違う。直ちに影響が出る放射能みてえなものだ。

 シンちゃんやポチであろうとも、この鍛冶場に足を踏み入れれば瀕死状態待ったなし。

 これを普通の街でやってたら国――いや、大陸規模で……うわぁ……うわぁ……。


「(しょ、所詮はもしもの話だ。俺はちゃんと人様の迷惑にならんところでやってるし!)」


 次の工程に移ろう。

 成形された板金を剣の形に変えていかなくちゃな。


「……」


 下手な事を考えると胃が痛くなりそうだったので、そこからはもう無心だった。

 時の流れが狂った鍛冶場ゆえ、正確な時間は分からないが少なくとも年単位は費やしたのではなかろうか。

 だが、出来上がった剣のデザインは実にシンプルだ。

 両刃の真っ直ぐな刀身を持つ……正直、どこにでも売っていそうな普通の剣にしか見えない。


「銘を刻もう、汝の名は”心剣・黎明”」


 宙に浮かんだまま静止している剣に向け言葉を以って銘を刻む。

 すると刀身に日の出前、薄明の空を思わせる光が灯った。

 ぼんやりと輝くこの形態こそが心剣のベーシックスタイルだ。


「(さあ、試運転だ)」


 宙に浮かぶ黎明の柄を俺が握り締めた瞬間、漆黒の魔力が奔流となり鍛冶場を蹂躙した。

 一瞬にして鍛冶場は無に還り、次元の狭間に放り出されてしまったが……もう二度と使う事もないし、別に良いだろう。


「ふむ」


 心剣・黎明は微塵の面影すら窺わせない変貌を遂げていた。

 刀身も鍔も柄も漆黒に染まり、形状も禍々しく俺の身の丈並の長さに変化している。


「(……中二心を擽るな)」


 二度三度軽く振るってみせると、その度に空間が軋みを上げた。

 ガチで作っただけはあって、俺が武器として振るっても使用に耐え得るだけの力は備えているらしい。

 耐久実験と言うのならば本気で使ってみるべきなのだろうが……。


「(壊れたら……ねえ?)」


 苦労して作ったプレゼントを自分でぶっ壊すとか虚しいにも程がある。

 つか、俺の本気に耐えられるかどうかなんて知る必要は無い。

 今の段階でもマリーちゃんが扱うには十分――ってか過剰だ。

 少なくともあの子では今の領域まで持っていけるとは思えない。


「(試運転はこれで十分だろう)」


 浸透している力を漂白し心剣を黎明の状態へと回帰させ鞘に収める。

 なんだか久しぶりに働いた気がするなと心地良い満足感に浸っていた俺だが、はたと気付く。


「(………………これ、どうやって渡せば良いんだ?)」


 夜中に宿の中に忍び込んで枕元に?

 翌朝目覚めたマリーちゃんはこう言うのさ、わぁ! サンタさんからのプレゼントだよ♪

 って馬鹿! サンタの爺もメリークリスマスもありゃしねえんだよ。


「(朝起きて枕元に剣なんて置いてあったらこえーよ!)」


 大体、夜中にティーン女子の部屋に忍び込むとか変態じゃねえか。

 肉体的には同性だけど、それでも血縁がある訳でもない人間がそんな事すりゃ普通に犯罪だ。

 この俺をして分が悪いと言わざるを得ないピーポくんと正面から事を構えるのはちょっと……。


「(シンちゃんに持って行かせ――いやいや、そんな酷な真似は出来ねえよ)」


 動機は今を以ってしても不明だが、俺を想い凶行に及んだ事は理解している。

 そして嫉妬があった事も……そんなシンちゃんに詫びとして持って行けとか鬼畜過ぎるだろう。

 俺が言えばやるだろうけどさ! 文句一つ言わずにやるだろうけどさ!

 ごめんなさいしろって言えば頭下げるだろうけどさ! ものっそい心が傷付くよ!

 多分の俺の目が届かないとこで半年――いやさ、年単位で凹みかねない。

 折角俺のベッドで寝て、良い感じに精神が持ち直したんだし、そこから突き落とすとか……俺には無理だ。


「(なら神話に倣ってモンスターの体内に仕込んで剣で切り付けた時におや? 剣が欠けたぞ? これは!)」


 的なヤマタノオロッチ作戦を実行してみるか?

 もしくはダンジョン探索の依頼を受けた時にでも宝箱を用意してそれを開けるよう仕向ける?


「(うーむ、どれもしっくり来ない)」


 こう言うとこさ、我ながら無計画だなって痛感させられるわ。

 作る前に考えておけよ、このぐらいは。


「(はぁ……とりあえず、家に帰ってから考えよう……)」


 ホント成長してねえな、俺。

若いツバメに貢ごうとする喪女(二千歳)の図。

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