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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
8/46

3 デレうさぎタケルと子狼

新しいもふもふとの出会い?

 タケルがもぞもぞするので、目が覚めた。

 眩しい…。もう、朝か。

「やっと起きたか」

「ん…眠い。今何時?」

「多分朝5時前後じゃないか」

「はやっ!」

「夜は7時にもなれば、真っ暗だ。魔道具もなければ寝るしかないからな」


 そういえば時間の概念はどうだったのだろうか。プロスペリティの常識の本に書いてあったけ?あの時は何があって、何がないのかをみるだけで精一杯だったから、記憶にないや。後でもう一度読もう。それよりも。


「ねえ、ここってどこになるの?地図とかないからいまいち位置関係がわからないんだけど。しかも目に見える限り、うちしかないよね?まさかと思うけど、山奥に一軒家とか?」

「綾子にしては察しがいいな。周りは山しかない。高位ランクの冒険者がたーまにやってくるぐらいの魔の森だ」

「なんですって!それじゃー、私はこの囲まれている畑しか出れないじゃないのよ」

「おー、その通りだ」

「じゃあ、じゃあ、卵とか持ってきた野菜と育ててる野菜以外のものは、食べるものがないってこと?」

「頑張ってランクあげるしかないな」

「私、レベル2だよ…」


 綾子は打ちひしがれた。なってこったい。こんなの20歳若返らせてくれたからといって、報酬になってない。くそー、どうりでマジックバッグとかすんなりくれたはずだ。

 仕方ない。

 とにかく食べられるものを早く作るしかない。


「タケル!朝ごはん食べたらやるわよ!タケルは家の周りで食べられるものを取って来て。肉でも山菜でも構わない。後は鳥系の動物で卵産んでくれそうなのを、捕まえてくるとか」

「わかった」


 じゃあ、朝は卵2個とソーセージ、昼は簡単につまめるサンドイッチがいいから朝はご飯かな。今から釜で炊いて失敗とか嫌だから、もってきたコンビニのおにぎりにしよう。スープはこのお湯で溶かすだけのでいいか。

 綾子は持ってきたガスコンロにフライパンを出し、卵とソーセージを焼き始めた。その匂いだけでお腹が空いてくる。

 そういえば、昨日の夜はタケルが作ったシチューもどきだけだった。お腹すくはずだ。

 もう一つのガスコンロにヤカンを乗せて、お湯を沸かす。


「出来たよ」

 混ぜるだけの簡単スープと目玉焼きにソーセージ。それにコンビニおにぎり。異世界に来たと思えないラインナップだ。だけど今は気にしない。先は長いのだ。

「ん」

 ちょっと歯切れの悪いタケルがポテポテとやってきた。来ると言っても小屋が小さいので歩いて5Mもないのだけど。


「なんかあった?」

「…誰かに作ってもらうとか、なかった」

 どうやら俺様うさぎタケルは、今はデレうさぎタケルらしい。

 ちょっと可愛いんですけど、このうさぎ。

 抱っこしてもふもふしようとウキウキしていたのがバレたのか、タケルはすぐに席に座ってしまった。

 ちぇっ。


「早く食べて動かないと、食い物なくなるぞ」

 まあ、それは正当な理由なので、綾子は仕方ないと席に着いた。

「いただきます」


「地球の食べ物って、旨いんだな」

「まあね。特に日本は拘ってると思うよ。調味料がびっくりするぐらいあるし。それを買う代金が今回一番家計に響いたよ。帰ってから辻褄合わせが大変かも」

 でも、まあ地球のことなんて今考えてもしかたない。一日、一日が勝負なのだ。

 そして今は目の前の食事が一番大事!頑張ってご飯が美味しくないとか、拷問以外のなにものでもない。強制ダイエットとか、異世界にまで来て絶対にしたくない。

 農業は身体が資本。綾子はいつもよりも多めの朝食を口にした。


 卵焼いて、ソーセージ焼いてケチャップつけただけなのに、美味しい。この味が大丈夫なら、こんな感じでお昼はサンドイッチも大丈夫そう。

 フォークを突きさしながら目玉焼きを食べているタケルを見ながら、子供がいたらこんな感じなのかなーと微笑ましくみていた。


 さて、取りあえず食べた。タケルが出かけられる準備をしなくちゃ。

 マジックバッグから食料品以外のものを出していく。衣料品の箱、食器・台所用品の箱、調味料の箱、100均グッズの箱2つ。ペットボトルなど飲み物の箱2つ。生活用品の箱2つ。

 こんなものか。

 これをどうにかして片づけないと、今日寝られない?

 よし!最悪は土魔法で臨時の部屋を作ろう。ご近所さんがいないなら、雨風が防げたら、調味料以外はどうにかなるはずだ。


「タケル、お昼ぐらいには帰ってくるよね」

「多分、俺でももっとレベル上げないと遠くには行けない」

 顔が引つった。5年間ここだけで終わるとかは勘弁したいが、そこは生まれてくるタマゴとタケルに頑張ってもらうしかない。


「じゃあ、マジックバッグとお茶。がんばってー」

 カバンを下げた姿が幼稚園児に見えて可愛い。こちらを見て怪訝な顔をするタケルに親指を立て、似合っているとにこやかに送り出した。


 さて、やることは一杯。

 まずタマゴに魔力をあげる。

「お昼にも上げるから、今はちょっとだけにして」

 了承したのか、タマゴが淡く光った。

「ありがとう」


 井戸があるわけじゃないので、水やりは自分の魔力だし開墾も魔力頼み。レベル2の魔力ではすぐに足りなくなる。

「じゃあ、行ってくるね」

 クッションに囲まれカゴに入れられたタマゴに挨拶をすると、綾子は畑へと向かった。


「よし!」

 まずは土魔法でよくわからない雑草が生えているだけの場所を掘り起こす。

「えい!」

 これが正しいのかと言われたら、違う気もするが誰も見ていないし出来ているので問題ない。

 30㎝下から土だけでなく、様々な石がごろごろと出てくる。何の石なのかわからないが、端に纏めて置いておく。時間があったときに鑑定して、良い物は錬金の練習にすればいい。


 土を耕すこと一時間。頭痛とめまいがして立っているのがきつくなった。熱中症か?日陰に移動し用意していたスポーツドリンクをしっかりと摂るが、それでもすぐには引きそうにない。慣れない作業を一気にやり過ぎたようだ。

 とにかく動くことが出来ないし、やることがないので、目を閉じて風を感じることにした。

 耳を澄ますと、本当に森なのだとわかる。ざわめきの中にある喧騒は、人の出す無機質な音はどこにもなかった。葉と葉が擦れあい、木々がぶつかる。それと共に舞う葉の中に羽ばたく音が混ざっている。どんな鳥だろうか。タケルがとってきたらそれもわかるだろう。それ以外にも獣の息づかいまである。夜中ならともかく日中聞こえるとは、どこまで魔物や動物が身近なのだろうか。仲良く出来るといいのだけど。


 ん?

 血の臭い?

 近い。タケルが戦闘をしているのだろうか。いやそれなら戦う音が聞こえるはず。

 悪意ある者はここには入って来られないと分かっているけれど、気になるモノは気になる。重たい瞼をあけて確認しようと起き上がった。


「ぎゃあーーーーーーーっ」


「な、な、なんで」

 目の前に狼の子供らしきものが、怪我をして横たわっていた。

 なんで怪我してるの?!

 しかもどっから来たの!!


次回『タケルは綾子の最高の従魔』

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