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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
第1章 旅立ち
5/46

5 転移

やっと異世界に行った。


 綾子を迎えにきた管理者とうさぎ

 綾子を見て、固まった。


「なんじゃ、そりゃ」

「準備物に決まってるでしょ。向こうで何があるか分からないのに後であれがない、これがないとか嫌じゃない」

 段ボールにして10箱になるものが積み上げられているのを見て、頭を抱えた。

「え、まさかこれ送れないとか、言わないよね?」

「だ、大丈夫じゃが…小屋に入れたらお主はどこで寝るのじゃ」


 言われて思い出すのは畑の横にあった小屋。一度しか入っていないため記憶が怪しかったが、確か都会で見る一般的なIDKの作りでしかなかったかも。


「あ」

「お主はしっかりしてるのか、抜けてるのかさっぱりわからんのー。こっちも量を指定していなかったのもあるし、今回だけはこのマジックバッグをお主にやろう」

「おお、管理者さんは話せる人ですねー。助かります!」

 嬉々としてマジックバッグに段ボール箱を入れていく綾子を見て、管理者はにやりと笑った。

 意外に単純で良かった。

 そう心の声が漏れ出るような笑みだ。

 管理者としては始めからこれは要求されるだろうと用意していた物で、逆に恩が売れたことを喜んだ。

「後は言語翻訳・儂からの加護・頑健を与えておく」

「あ、ありがとうー。昨日言ってたスキルの前に、このゲームで貯めたポイントは今使える?」

「そうじゃな、残してても仕方ないからいいぞ。これで何が欲しい?」

「魔獣のタマゴ・従魔スキルとりたくて」

「なるほどのー。このうさぎは気にいらんか」

「そういうわけじゃないけど、うんくさいが先に来てたから警戒しかしてなかったしね。それに自ら戦うことはしないけど、戦える術は欲しいし」

「こいつはそこそこ戦えるぞ。向こうの世界にいたやつだからな」

「えっ、え――――ッ」

「向こうの世界で見た目と違って凶暴な物もおるからの、気をつけるんじゃぞ」

 綾子は自分の常識が通用しないことを改めて知った。思った以上に気を引き締めなければならないようだ。

「わ、わかった。残りのスキルは…」

 昨日決めていたスキルを選び、付与して貰った。


「準備は整った。覚悟は良いな?」

「タマゴは?」

「向こうの畑にあるから行ったらまず自分の魔力を注げ、それで主登録となる」

「りょーかいです。では、どうぞ」

 綾子の身体とうさぎの身体が眩しいほどに光に包まれた。その光が収束すると二人の姿はもうそこにはなかった。

「行ったか。あのうさぎもこれで報われるじゃろ。楽しんでこい」


 管理者は一つ肩の荷が下りたと寂しさにも似た感情としてやったりの満足感に包まれていた。

 たまには下界に下りるのも、楽しいの-。



 *****



 眩しさが少しずつ薄れると綾子はゆっくりと瞼をあげた。

 目に入ったのは何度も目にしたことがあった庭と小屋、そして畑に生えてきたように鎮座したタマゴだった。

「たーまーご!!」

 思ったよりも大きいタマゴに驚きながらも、そのタマゴに抱きついた。

 タマゴは驚いたのかビクッと振るわせたが、身の危険はないと判断したのかその後は大人しくなった。

「そういえば、魔力を流せっていってわね。ねーうさぎ、魔力を流すってどうするの?」

「そーんなことも知らないで、欲しいって言ったのか」

「あんたが私に教えなかったんでしょ」


 散々ダメだしされた仕返しとばかりにバカにしたが、逆にサボっていたことを指摘されふて腐れながらも管理者からの命令通り、従者としての役目として話し始めた。

「難しく考えなくて良いです。火・水・土魔法を習得していますが、これらをまさか畑仕事だけに使おうとは思ってないよな」

「思ってないね」

「そういうことだ」

「なるほどねー。魔法を使うときに想像すると同じように、この子に食事を与えるようなイメージで渡せば良いのね」

 では。

「ご飯だよ-」

 始めは戸惑う感じがあったが、自分に与えられたものだとわかったのか、凄い勢いで吸われている感じがあった。

「ちょっと、もう…おしまい」

 今回タマゴを強請ったが、どんな子が良いとは言わなかった。お願いしても良かったのだが、ちょっとだけ何が生まれるのか楽しみたいのもあったのだ。


「折角のファンタジーだし!」

 それにしても一気に体力持っていかれたようで、身体がだるい。

 よっこらせ。と心の中でかけ声かけて、タマゴを抱えてまずは小屋へ。

 荷物を出して整理したい気持ちは強いのだが、今はとにかく眠い。


「クリーン」

 部屋の中を掃除して備え付けのベッドに持ってきた布団を敷き、横になった。

「うさぎ、ごめん、眠いの。ここどこか確認したいのは山々だけど30分だけ横にならせて。その間結界をお願い」

 うさぎの了承もなく、綾子は寝息を立て始めた。

「全く自分のステータスも確認しないまま、魔力を渡すからだ」


 そう良いながらも少し頼られて嬉しいのか、家を囲む畑までも結界をはった。

「仕方ない。目を覚ますまで、一応家の周りの探索でもするか」


 こうして綾子の異世界一日目はほぼタマゴに魔力を渡すだけで、終わるかもしれない。


次回から気ままな異世界生活


次回の更新より9月中旬まで ゆっくりになります。

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