3.フィンプラトー(聖なる高原) 1
うーん。ちょっと身体が痛い。これって筋肉痛みたいなもの?それとも地面が固かったせいかな?
夜何事もなくゆっくり眠れたのは良いが、起きたときには身体が固まってしまってちょっと辛い。
お風呂に入ったら解れるけど、流石にこの場所でゆっくり入る余裕は無いから今日の夜まで待つしかない。
それに宿にはお風呂はなさそうだから、ワークが作ってくれた木枠のお風呂的なモノにお湯溜めて浸かれば、ちょっとは違うだろう。
お湯に浸かるのは夜のお楽しみと言うことにしておいて、今から動けないと意味が無い。どうしようかと考えながらも少しずつ解すしかなく、ゆっくりと身体を動かし関節を伸ばし、ストレッチを始めた。
入り口がぼんやり光っているから日の出を迎えたのだろう。その証拠にタケルが外で火を熾していたし、ジュニアは外でお腹空いた―と小さく鳴いていた。
「身体、大丈夫か?」
「うーん。かなりバキバキだね」
「ちゃっちゃとお湯に浸かった方が良いんじゃないか?」
「そうなんだけど。タケルよく知っているね!うーん、そうだね。考えても仕方ないから、ちょっと浸かる」
無理していざという時に動けない方が危ないから、明るいうちが良い。
木枠の大きい桶に水を溜めて、無属性魔法「ヒート」でお湯にすれば出来上がり!
うーん!!いい!
身体の芯から温まるよ。
じんわりと汗をかいた感じが丁度良い。野営でお風呂って贅沢だよね。多分。
ありがたや、ありがたや。
すぐに身体の水滴をとって、服を着替えた。クリーンをかけているから綺麗なんだけど、お風呂に入ったらやっぱり着替えたい。
よし!最後にバンダナをして、出来上がり!
アイテムボックスにお湯ごと入れて、片付けた。お湯はいつでも捨てるだけだから楽でいい。
「タケル、ジュニアお待たせ。ご飯にしよう!」
「ごはん!」
「タケル、ジュニアと同じお肉一杯の野菜炒めにする?」
「そうだな。夜ジュニアの分が足りなかったら、ハントが捌いてくれていた肉がマジックバッグにあるし」
身体が肉というかタンパク質を求めてる感じ。
だから私も朝からしっかりと食べることにしたのだ。
ジュニア大・タケル中・綾子小の大盛りで朝からおにぎりと共に食べていた。
「やっぱり身体動かすと、食べたくなるね」
昨日のヤカンに残っていたお茶を少し温めて水分をとれば、エネルギーが蓄えられたって感じになった。
太腿と下腿にまだ重い感じは残っているけど、それは仕方ない。
…あれ?
何か忘れてない?
身体の筋を痛めているのだから、治癒でいけるんじゃないの?もしかして!
治らなかったら唱えた分恥ずかしいので、心で唱えた。
『治癒』
身体全体が光ったと思ったら、収まった頃には身体が軽くなっていた。
「綾子何した」
何したって、何かする前提は止めてよね。
「治癒掛けたんだよ。筋肉痛は筋を痛めてるわけだから、治るかもって。で、治ったよ」
「相変わらず、でたらめな魔法だな」
「考え方、なんだろうね。多分…。いつでもこれでバッチリ行けるよ」
トントンと飛んでみたけど、出発前より身体が軽いぐらいだ。
お皿を水で洗い流してクリーンを掛けてアイテムボックスにしまった。
「出発!」
昨日と同じ陣形で山道を進む。違うのは三人の首にはバンダナがあることと、ちらほらと小動物がいることだ。
害のない動物は放って置いて、ひたすら走った。
お昼を食べる為に休憩する頃には、街への着く算段がつくようになっていた。
「後4時間ほど歩けば、街に着くな」
「思ったよりも早く着くから、ギルドに行って登録したら何か換金してお金を作り、宿に泊ろう」
そう思うとモチベーションも上がる。街から近くなって行き人の気配を感じ始めると、スピードを落として歩き始めた。ここまで来たスピードで近づいたら魔物と勘違いされて攻撃されては困るからだ。
確か街の名前はフィンプラトー(聖なる高原)という意味だったはず。
「ん?なんか門の前ざわついてない?」
「俺たちを見て警戒している感じじゃないな」
「そうだね。どちらかというと焦ってる感じ?」
街に入るために並んでいる人に声を掛けることにした。
「こんにちは!」
「あ、こんにちはって!あ…従魔か」
「驚かせてすみません。従魔であってます」
「娘さん、何か用かい?」
「はい。門の前がざわついている訳が知りたくて」
「ああ、何でもこの近くの森で魔物に襲われた冒険者が多数いるようで、運び入れるのに時間が掛かっているようだ」
「おじさん、ありがとう」
「タケル、ジュニアゆっくりと近づいて、治癒か回復薬をかけるよ。念のため三人に結界張ってて貰って良い?」
「ああ、わかった」
状況が状況なので、間違って攻撃されないように警戒しながら門の前に向かった。
門の前はけが人を運ぶ冒険者とギルド職員らしき人が叫びながら指示を出していた。横たわっている冒険者らしき人たちは、噛み切れて手足が欠けている者だけでなく、もういつ息が止まってもおかしくない者達で溢れていた。
今までに嗅いだことのない血だまりの匂い。
綾子は吐きそうになるのをグッと胃液ごと呑み込んだ。
「タケル、風を起こして私の声を響かせて」
「わかった」
綾子は声を張り上げた。
「回復薬と治癒の魔法が使えます!」
一瞬皆の動きが止まった。もう一度繰り返す。
「回復薬とレベル低いですが治癒の魔法が使えます。責任者の方、手伝いますのでどうしたらいいか指示して下さい!」
するとすぐに恰幅がよくオーラのある男が近づいてきた。
「あんたが、治療できると言った者か!」
「そうです。この子達は従魔なので安心して下さい。このタケルうさぎは手伝いも出来ます」
「来て貰おう!」
「わかりました。治癒は私がしますが、回復薬は仲間の冒険者の方でも使えますよね?すぐに出します」
「頼む!何個ある?!」
「傷程度ものなら50個、血を止めるほどの物は30個」
「全部出して貰って良いか!」
「いいです。ギルド職員の方に傷によって配って貰いたいです」
リュックから回復薬まずは中級30個出す。
「これが中級の回復薬です。酷い人にお願いします。血が止まれば私がその上から治癒をかけます。そしてこれが初級の回復薬です。多分売られているのよりは効き目が良いはずです。では、お願いします!」
ギルド職員が回復薬を持って散っていく。
綾子もギルドマスターらしき男の後を着いていく。
途中治癒をかけようと近寄りたかった者も居たが、とにかく急ぐという者の元へ行くことにした。
「頼む!」




