27.綾子ついに街へ
ノーム達が作ってくれた肉野菜炒めを食べた後、綾子はタケルに決意するかのように言った。
「タケル、一週間後に街に出発するから」
「…その子はどうするんだ」
「ブリスは危ないからお留守番」
「ママと離れるの?」
「うん、ごめんね。ブリスにはメア…ハニー・ベアの子の面倒を見て欲しいの」
「メア?」
カゴの中でゴロゴロと転がっていたメアが呼んだ?とばかりに振り向いた。
「うん、メアこっちにおいで」
呼ばれたのが嬉しかったのか、カゴから転がり出るように出てきてトコトコとこっちに向かってくる。
抱き上げて膝に乗せ、ブリスと向かい合わせにした。
「この子がハニー・ベアのメア」
「メア、このお姉ちゃんはブリスよ」
「ねーたん?」
ブリスは自分が姉さんと呼ばれたことに戸惑いながらも、メアの可愛さに嬉しさを滲ませていた。
ただ自分よりも下の子を見たことがなかったのと、乳母としかコミュニケーションをとっていなかった為に、どうしていいのかわからないようだ。
綾子はメアをブリスに抱かせてみた。
僅かにブリスが大きいが、パッと見た目は大きな白いぬいぐるみを抱っこする子供にしか見えない。
このショット!可愛すぎる!!
なんで、なんでカメラがないのよ!
転写するスキルとないのかな?なかったとしても、もしかしたら作れるかもしれないし、出来たとしたらそれを保存する布とか紙とか買い付けないと転写する場所がなくなる。
やっぱり早く街に出て探さないと!
ブリスの着替えも買いたいし。
綾子は悶絶しながら二人を見ていたが、相性はいいようだ。メアがギュッとブリスに抱きつくと、恐る恐るブリスも抱き返している。
次はジュニアに合わせて、その次はノームのグリーンかな?
ほのぼのした雰囲気に綾子もホッと息をついた。
ブリスを置いて行くことに戸惑いがないわけじゃない。出来れば一緒に行きたいが、鑑定で奴隷じゃなくなっているとはいえ元の商人が言いがかりをつけてくるかもしれないし、自分のこの世界の常識がわからないまま街に行くのは、危なすぎる。
おでこの徴についても、よくわからないままだし。
わからない、をわからないままで済ませてたら、きっとこのままだ。
ブリスの着替えを私のTシャツでというのも問題だし、出来れば下着も買ってあげたい。
私の服もこの世界のものに変えていった方が、違和感なくなるだろう。ノーム達の服の素材と比べても明らかに違うのが分かるから。
…あれ?今まで考えたことなかったけど、ノーム達の服って誰が作ってるんだろう。魔物の皮で作った防具は貰ったから作れるのは知っているけれど。
もしかして、魔物の素材で作れたりするのだろうか?
「ねえ、タケル」
「なんだ。ノーム達の服って自作?」
「そうだろうな。街とかにいけば間違いなく捕まって奴隷扱いだろうし」
だよね。
その可能性を全く思いつかなかった。
これで街に急いでいく用事の一つがなくなったけど、ここで行かないという選択肢はない!
ノーム達にアクセサリー、回復薬やその他ナイフや小刀など売れそうなものを貰って、まずは外貨を手に入れないと!
燃えている綾子の決意などこの世界はスルーして、結局行けたのは一ヶ月も先のことだった。
ブリスが多数のノームに怯え、慣れるまでに日数掛かったからだ。
ノームは小さくてそれなりに可愛いんだけど、数いるとやっぱり腰が引ける。ブリスの様に小柄な少女ならば、尚更だろう。
今なら笑い話で終わるけれど、私ですら疑心暗鬼になっている時には、恐怖で震えたのだから。
怯えられたノーム達は口には出さなかったが、目に見えて落ち込んでいた。
ごめんね。
***
「綾子、忘れ物はないか?」
「ない、と思う。大概のものはアイテムボックスに入ってるし、すぐ取り出さないといけないものはリュックの中に入れてる」
・グリーンが作ってくれたお弁当が30個
・ノーム達が作ったパン40個
・ノーム達が作った各種野菜
・小刀・ナイフ
・回復薬 100 50個 ・回復薬300 30個 ・回復薬 500 20個(最高品質)
・着替えを3セット
・調理セット(鍋・包丁・まな板・調味料・皿・フォーク・スプーン)
・チーズ・ハチミツ
・水筒
・皮のネックレスにペンダントトップにつけられた魔石 等
(魔法防御効果大・物理防御効果大・精神防御効果大)各3つ
それに、(魔法防御大・魔法攻撃大)(物理防御大・物理攻撃大)各3つ
ここまでは普通かなと思うのだけど、ワークにはシルバーのブレスレット5つも作ってもらってる。
このシルバーのブレスレットにも幾つかルプス達が獲ってきた魔石がつけられている。
ちょっとした傷が出来てもノーム達にお願いして治癒を掛けさせてもらった結果、なんとかレベルが2になったので、付与魔法をポイントで手に入れてこの魔石に治癒を付与した。付与のレベルが低い為治癒のレベル2の骨まで治すにはいかないものの、鑑定では剣で出来た傷ぐらいは治すようだった。ようは1.5ぐらいのレベルってところだ。
それともう一つ付与したのが、結界。怪我した人を庇いながら戦うのは難しい。結界を張って傷を治してくれるなら、他の人は安心して戦えるだろう考えたからだ。ただし、これが規格外だった場合、どこにも出さないでアイテムボックスの肥やしにする。
もちろん留守を任せるものには幾つか渡しておいた。いない間ここから出なければ全く問題ないけれど、もしもの場合があるといけないので、代表のノームに渡したのだ。
あ、そうそう逃げないといけないことなんてないとは思うけど、万全にするためにポイントでスキル偽装と時空間魔法(転移)を覚えておいた。
一度転移を試してみたけれど、慣れないものだった。完全に乗り物酔いだ。それでも命の方が大事なので、気合でここまで帰って来れるようにイメージトレーニングだけはしっかりとやった。
座標が分からなくなったときは、ルプスと念話で繋いだままその糸を手繰るようにして戻る予定だ。
「レオ!メアとブリスをお願いね!」
「ママ、任せて!」
「ルプスはノームのみんなに迷惑をかけないで、ここをお願いね」
「あい、わかった」
「では、ノームの皆さん。食事などお手数かけますがお願いします」
「ああ、任せておけ。狩りも、畑も、食事もみんなでやるから」
綾子は大きく頷いて、声を張り上げた。
「いざ!出発!」
タケル・ジュニア・綾子は街に向けて歩き始めた。
綾子の初の冒険が始まる?!
バタバタしているので、更新遅れます。




