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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
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26.数奇な運命を辿る者


余りにもお腹がすきすぎて気持ち悪くなってきたよ。アイテムボックスにはまだおにぎりが二個ほど残っていたから、そこから食べても良かったのだけど。タケルが頼んでくれてるしなー。

あ、ルプスに鉄槌。お皿にお肉と野菜を入れてくれたよ。

じゃあ、昨日のスープとそれを食べよう。


「あ、起きた?」

こっくりと頷く。

名前、どうしよう。一応、聞いてみたほうがいいのかな?食べながら考えよう。

「じゃあ、ご飯にしようか。まだしっかりと食べたら体がびっくりするから、柔らかいものを食べようね。昨日のスープとパンを出すから、テーブルに行こうか」

昨日と同じようにベッドから抱き上げ、椅子に座らせる。

テーブルに昨日と同じようにスープとパンを出すと、目が何度も瞬きする。ハチミツをだすと独特の花の香が鼻腔を擽った。

何の花の香だろう、なんて考えている余裕がない。パンをここに突っ込みたいよ。

あ、忘れてた。

念のため、浄化。

「はい、どうぞ」

スープとパンとハチミツを昨日のように並べたのにも関わらず、手は微動だにしなかった。スプーンを渡しても、握りしめただけだ。

「ん?」

「たべないの?」

「もう少ししたら、タケル…うさちゃんが持ってきてくれるから」

「ほんと?」

「うん。だから先にお食べ?」

じっとテーブルのものを眺めていたけど、ボソッと

「…まつ」

といって、スプーン握りしめたまま、固まった。


「じゃあ、一緒に食べましょうね。ブリス」

「ブリス?」

「そう、あなたの名前。至福って意味でこの上ない幸せって意味よ。ここで新しい人生を始めましょう」

「いいの?」

「あなたは幸せになる権利があるの。私が持てる全ての力で、あなたブリスを幸せにする。名前はその覚悟の徴。あなたに幸福が訪れますように」

少しだけ薄くなった徴に軽くキスをすると、その徴が僅かだけど光った。と思ったらそこから光がどんどんと溢れてきた。

なになに!

また何かやらかしちゃったの、私!

ブリスはというと、恍惚とした表情でぼんやりとしている。

光がブリスを全部包んで収まった時には、徴の色が黒から赤へと変わっていた。

何を意味するのか分からず、体の異常がないかを調べるうえでも鑑定を発動させた。

「ステータス」



【 名 前 】  ブリス   (12才)

【 種 族 】  人族 

【 職 業 】  巫女

【レ ベ ル】   2

【 体 力 】  45

【 知 力 】  120

【 魔 力 】  120

【攻 撃 力】  62

【防 御 力】  45


【ス キ ル】  幸運(誰かを助けた分だけ上乗せ)

【固有スキル】  術師



どういうことよ!戦士だったでしょ!

なんで急に術師なわけ?

もう本気で訳が分からない、お願いだからちゃんと説明して!

管理人さん!!


『これは予想外じゃわい』

「どういうこと?」

相手が誰だろうが、喧嘩腰になってしまう。

一緒に食べたいと願うブリスが愛しかった。

この子の母にはなれないけれど、ベニスが成人するまでは責任を持って育て上げる。人生の選択肢が多ければ多いほど、希望が見えてくる。名前の通り、幸せになって欲しい。

だから、人生を簡単に変えてしまうようなことは困るのよ!

これから先も突然変わるとか、本人が望まない限り止めてほしい。


『この子が自分から掴み取った道の一つじゃ。お主と一緒に居たいと願ったこの子が選んだのだ』

「数奇な運命の中の一つだと?」

『そうじゃ。この子が一緒にご飯を食べたいと意思表示をしなければ、お主は名前を付けていないだろ?』

「…そう、かもしれない」

『この子に与えた名が一番運命を決定づけた』

「わたしのせい?」

『そうじゃない。この子はとある家で、9番目の子として産まれた。女の子だった為に親の関心は低く名前さえ付けなかった。この子を10歳まで育てたのは、年老いた乳母だった。だが、この子が五歳の時に死去した後は、殆どいないものとして扱われていた。呼び名もそのままと。

元々9という数字は数奇な運命を辿ると言われている。そのままこの子の運命となった』

「じゃあ、呪いが解けたのも」

『本人が幸せになりたいと望み、名を受け入れた時から運命の一つだった幸せにつながる道の一つを選んだのだ。まだマシだったのは、周りがこの子に関心がないせいで、10歳になった時に徴が出たことをしらなかったことだ。3か月までまで、ただの小娘でいられた』

なんとなく理解できた。スープを綺麗に食べる子だとは思った。普通なら零しながらでもとにかく食べようとして、食べ物をかけ込むように口に入れる。

それをしなかったのは、食べ方マナーを教えていた乳母が居たのか。

いい人だったんだろうな。血のつながりもない子をちゃんと育てて。いつか乳母のお墓があるなら、一緒にお礼に行きたいな。


「じゃあ、呪いってなに?」

『呪ったからだ』

「え」


『詳しくは西へ向かえ、お主の知りたいことを教えてくれるだろう』

「わかった。ブリスが自分の力で幸せになれるならいい」

『賢明じゃ、全部を知りたければ旅に出るといい。いい出会いが待っているであろう』

消えていく気配に、綾子は空を見上げた。

流石はこの威圧。抜けているところもあるけれど、神だけある。

変な脂汗でちゃったよ。

さあ、息を整えて。

「ブリス!あなたはもう自由よ。奴隷である徴は消えたし、あなたは自分の力で生きていける」

放心状態だったブリスがゆっくりとこちらをみた。

「自由?」

「そう、自由。奴隷じゃないのよ」

「じゃあ、ここにいてもいい?ずっと、ここに居たい。お料理も覚えるし、お洗濯も、掃除も頑張るから!」

「好きなだけ居ても良い。あなたはもう、私の娘だから」

「ママ?ママになってくれるの?」

「そうよ。ブリス…幸せを約束された私の子」

泣きじゃくるブリスを抱きしめ、背中をさする。私もきっと数奇な運命の真っ只中にいて、足掻いている途中なのだろう。だけどそれが険しいものだとは思えなかった。

一緒に頑張れば、きっと道は開ける。

泣き止んで笑顔を見せるブリスは、どこか神々しさを身に纏っていた。


「だから、タケル。一緒に頑張ろうね」

おずおずと入ってくるタケルに笑いかける。あんたも巻き込まれただけ、一心同体ってやつでしょ?

「それよりも、お腹空いた」

タケル、あんたも私の家族だからね。


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