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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
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22 綾子の本領発揮 4

「メア、リュックの中で大人しくしててね」

速度を上げながら綾子はタケル、ルプスと走る。

走りながら綾子は思う。なんか遠くに来たな-、と。

十代の時はそれなりにスタイルも良かった自信があったし、それなりにもてたと思う。結婚をして時間の経過と共に、体形は崩れ筋肉はどこにいったのかわからない。

信号が赤に変わるから小走りしただけで息切れを始めた時には、ああ、年だなーと実感してた。

それがどうだろうか。こんなにも軽快に走るとか誰が想像できただろう。一番自分が不思議でしょうがない。自分が戦って得た力ではないからこそ、そう思うのかもしれないがそれでも何だか嬉しい。走っていてもみんなに置いて行かれないという事実が、身体の奥底から力となって漲ってくる。

「嬉しそうだな」

走りながら息一つ乱れないでタケルはこっちを向いた。

流石うさぎ。

「そうだね。自分が走れるという事実が嬉しいのかな」

「ふーん。そんなものか」

「元々走るのが速いタケルにはその感覚分からないかもね」

違う意味で逃げ回っていたのだろうと思うが、それはもう過去のこと。そこはタケルも分かっているのだろう。

「走ることで綾子に負けたら、うさぎを止めないとな」

まで、の賜りやがった。

くそっ、いずれ抜いてやるんだから。


これから戦闘になるかもしれないというのに、緊張はなかった。この過剰とも思える戦闘力に勝てるのがこの森に居る様子もないし、ルプスが抑えきれないのがいたら真っ先に警告してくるだろう。

「まま、僕も速い!」

タケルに対抗意識を燃やしているレオもそこに参戦する。

あ、うん。元のスペックが違い過ぎる。レオと走って勝てる算段など一ミリもないよ。

「レオはいずれ飛べるようになったら、ママを乗せて空に飛んでね」

「飛ぶよ!まま乗せて、飛ぶ!」

そういうとレオはトップスピードを上げた。

あーまずった。まだレオの性格を把握し切れてない自分が居る。そんなに先走ったら、ちょっとまずい。

「ルプス、レオ抑えてて」


「な、に、すんだ」

「レオ、主の護衛をするのがお前の仕事だ。出来ないのなら、帰れ」

ちょっと乱暴にルプスはレオを加えて、綾子の方に投げた。投げられたレオも綾子を見て、自分の役割を思い出したらしく、大人しくごめんなさいと呟いた。

「レオ、これから一緒に学んでいこうね。ままも、まだまだこの世界のこと知らないの。だから、レオが教えて」

「うん!頑張る!」

レオがやる気を取り戻したところで、100メートル先に狙っていた一角牛の群れが居た。

一度立ち止まって、もう一度確認する。

「一度あの群れを囲んで子牛と子牛の母親狙いで行くから。ただ念話で話しかけて話が付かなかった場合、あの群れの長をルプスお願い。群れがばらける前に、一気に行くよ。では、行くよ!Go!!」


流石だ、ルプスがボスらしき一回り大きな一角牛を抑えたよ。

『牛さん、子牛と共に暮らしませんか?』

何いってるんだと冷めた目で見られた。

うわー、鑑定先にすれば良かった。この群れのNo2だった。鼻息が荒くなったのですぐにそこを離れて、一番小柄な一角牛に話しかけた。

『あなたの子供を守るために、付いてきませんか?』

向こうの鳴声が何を言っているのかはわからないが、なんとなく助けてくれるのならと言ってる気がする。やっぱり念話はかなり高位の魔物にならないと出来ないのか。

『付いてくる気があるなら、このキングラビットに付いてきて』


タケルに付いてきた一角牛の雌をよく見ると、とても痩せこけている。食べる順番も上位のものからになると中々食べられないのかもしれない。アイテムボックスからリアカーを出して、そこに誘導した。

「タケル、一角牛って何食べるの?」

「割と何でも食べるはずだ。取り敢えず野菜を砕いたものを食べさせたら良いと思う」

「トウモロコシとか食べるんだったよね」

確かノームさんたちが収穫してくれた野菜が幾つか入っている。ただ、包丁なんてないから。

よし、イメージバッチリ。

「粉砕」

『牛さん、どうぞ』

適当な皿に砕いた野菜とお水をそれぞれに入れて目の前におくと、勢いよく食べ始めた。それをみて子牛も母親に吸い付いた。

どうやら大丈夫そうだ。後二頭ぐらい…って、なに!

リアカーの周りにいつの間にか集まっていて、囲まれていた。

緩んで気配察知とか無意識に切ってたよ。だめだなー。


ルプスに目を向けると、「皆、腹が減っているそうだ」と答えた。

「そう、みたいね」

よく見ると皆毛並みも悪いし、腹が痩けている。

「餌が少ないの?」

「どうやらダンジョンが出来たことで、このあたりの均衡が崩れているようだ」

「それって、ルプスが王になったことと関係ある?」

「それしか、考えられん」

「だよね」

これがどんな結果になるかなど、わからない。だが少なくとも色んなところで進化が訪れているのは間違いない。だとすれば、簡単に放置することも…出来ないよね。管理者の目論見がどうなのかわからないけれど、その片棒を担いでいる自覚があるだけに。

「わかった。皆来る?ここよりは、食べられると思うけど」


ルプスがボスとなにやら話しているが、やっぱりそこは分からなかった。従魔になったらきっとわかるんだろうね。

さて、どうなるか。

話をしている間に、野菜あるもの全てだして砕いていった。

といっても、殆どはまだ庭に置いてきたままだから、そこまでの量はない。となれば、薬草とかも混ぜているか。元気になるかもしれないし。

量はやっぱり足りなさそうだったので、水でふやかして嵩を増して食べて貰った。


ボスの出した答えは予想されたものだった。

「弱っている子牛とその母親半数を連れて帰って欲しいそうだ。体格のよい他のものは食べていけるからと」

「わかった。じゃあ、子供母親合わせて10頭を預かるね」

「頼んだと」

「任されました」

子牛5頭と一番弱っていた最初に声を掛けた雌牛をリアカーに乗せ、他のものは一緒に歩いて帰ることになった。

「どうしてもダメだったら、おいで」

言うか言わないか迷った言葉を伝えた。助けるものを選んでいるようで私自身のエゴのようにも感じる。だけど出来る範囲は決まっているのだから、仕方ないと割り切った。このボスもわかっているからこそ、半分預けたのだ。海のものとも山のものともつかぬ者に、賭けて。


強面の顔が少しだけ笑ったような気がしたのは、見間違いではないだろう。別れが辛くなるからか、ボスとその取り巻きはこちらの出立を待たないで背を向けて歩き始めた。

またね。

そんな言葉が浮かびながら、私たちも背を向けて歩き始めた。

「さあ、帰りましょう。我が家へ」


私ももう一歩進むべきなんだろう。

ダンジョン攻略と町への探索

まずは、町へ行ってみよう。私も出来ることを頑張るのだ。



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