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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
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18 満を持してタマゴ誕生!

タケルが目を覚ましたとき、まだ綾子は眠っていた。ゆっくりと起き上がっていると綾子が目覚めた。

「タケル!」

綾子に突進してこられたタケルはベッドの端にある壁に追突した。

ゲホッ。

中々、ナイスなタックルだぜ。

「タケル、タケル死なないで!」

「か…ってに、殺すな。それより、いつのまに怪力…なんでもない。大丈夫か」

一瞬顔を顰めたが、すぐに頷いたのを見てホッとした。

なんでそんなことだけ女って反応早いかな。何かが理不尽だ…。


「そうか、それなら明日にでも町に…」

ミシッ。

うん?

ミシッ、ミシッ

もしかして。

ミシッ、ミシッ、ミシッ、ミシッ

どうやらタマゴが割れ始め、今にも生まれてきそうだ。


「タケル!タマゴ、タマゴが割れてる!」

タケルは今が良いところなのにと舌打ちをしながらも、綾子が笑うなら良いかとタマゴに向き合った。

気がつけばメアも起き上がり、綾子に抱きつきながらタマゴを見守っている。

ジュニアは勿論綾子の足元をget済みだ。こいつも中々ざといな。


「ままーおーと?」

「そうね。それはわからないけれど、早く会いたいね」

ジュニアはタマゴの割れる音がする度に、大興奮でタマゴの周りを走り、飛んだり伏せたりを繰り返している。

みんな固唾を呑んで見守る。あの管理者が渡したタマゴが普通の魔物なわけがない。しかも現在のタマゴの大きさはタケルを優に超えているのだ、タケルは嫌な予感しかしない。これは絶対に食う奴が生まれてくる。確信に似た何かがタケルに警告を与えていた。

食糧問題が一気に悪化とか、あり得ないんだが。


タケルの心情などお構いなしにタマゴは孵化が進んでいる。綾子に至っては、タマゴにずっとエールを送り続けている。それに魔力が乗っていることなど気づいていないようだが、それにより確実にタマゴが進化しそうな気配だ。

「あ、あと少し!嘴と羽根があるから鳥さんね」

ただ者じゃない気配に、メアは綾子に必死にしがみつきジュニアは警戒態勢に入った。気づいていないのは綾子だけだ。このあたりは繊細なのか大雑把なのかよくわからないところだ。

「あ、生まれた!…えっ!この子」


「あ、ちょっと待って」

生まれてすぐに会いたかった!と綾子に突進していった。生まれたばかりと言っても図体がでかいのが甘えれば、当然綾子は下敷きになっている。

やっぱりか。

グリフォンとかまたとんでもないのが従魔になって。綾子が従魔引き連れて王都とか行ったら、完全に軍事行動にしかとられないな、これ。


「タケル!ボーッとみてないで、助けてよ」

「名前つければいいだろ」

「この子ってグリフォンであってる?」

「ああ、あってる」

「じゃあ、あなたはレオ。レオお座り!」


綾子、お座りとかグリフォンが生まれたばかりで分かるのかよ。って、わかるのかよ!なんてハイスペックな奴なんだ。

頭をすりすりしたい衝動を抑えて、綾子が撫でてくれるのを待っているのを見れば、まあ可愛いのかもしれないが、既に自分より大きい赤ん坊など面倒見切れない。

きっと、肉、食うな。調達どうするか。


外を気配で探るとルプスが叱られた犬のように家の前でずっと伏せっているし、ノームの長達が謝罪したいと同じように待っているし、今出るのはうざくて仕方ない。

兄1・2と狩りをする一族が近場でなんとか狩りをして食いつないでいるようだが、ノームは肉ばかりでは辛いだろう。元々一族にもよるがどちらかと言えば、ハーブ・果実・野菜・薬草・木の実などを好んで食べているはずだ。

…狩りをする部族がいるなら、解体も出来る奴がいるか?いや自分より大きいものはやはり難しいだろう。

素材をダメにすれば、人数いるしミンチぐらいには出来るか?奴らも生活がかかっているんだ、どうにかするだろ。


「綾子、外の奴らに野菜の種で育てさせてもいいか?」

「あ、うん。お願い。レオのこともあるし、いずれは外へ出ないといけないし、手持ちの野菜も沢山あるわけじゃないから、それならちょっとでも増やしたい。流石に今は米は無理だけど先にはコムギ出来るなら、お願いしたいしね」


昨日寝言でもずっと帰りたいとか泣いていたくせに、結局綾子は保護が必要な者を見捨てられないのだろう。しかも自分が強請ったタマゴが孵ったんだ、責任感も倍増だ。結局綾子を元気づけるには、子供の世話が一番と言うことか。

あっけなく解決したことに拍子抜けしながらも、タケルはちょっとだけ寂しさを滲ませながら、玄関へと向かった。


「おい、ルプス」

「タケル!主は…」

「今はタマゴが孵って気が紛れているから大丈夫だ。昨日は泣いてたがな」

「そうか、すまぬことをした。我の説明が足りなかったばかりに」

「それは我らが勝手に解釈したこと。王に聞けばそれが間違いだとすぐにわかったというのに、保護されることが当たり前になってしまっていた。タケル殿と言ったか?昨日は本当にすまなかった。ノーム一族主殿に謝罪申し上げる」

「まあ、許す許さないは綾子が決めることだ。自分たちが出来ることを頑張るんだな」

「ルプス、取り敢えず肉が必要だ。鳥系の魔物でいいから幾つか狩ってきてくれ」

「それならば、タケルも一緒に来てくれ。マジックバッグがあった方が一気に狩れる。ただ、解体はどうするのだ」

「それんだよな」

「それなら我らに任せてくれ。我の一族は狩りを得意とするので解体は出来る」

「それなら任せる。後、種を幾つか渡しておくから植えて野菜を育ててくれ。割合は綾子に確認するが、食料として何割か融通する。ただ一割は種として次の食料に回したいから、全部収穫はやめてくれ。あと井戸も掘っていい」


カボチャ、ナス、たまねぎ、ジャガイモ、サツマイモ、人参、ピーマン、大根、ショウガ・キャベツ元々あったものと、種のまま保存されてあったトウモロコシ、きゅうり、ほうれん草、ゴボウ、さやエンドウ・トマトを渡した。もちろん全部は渡さない。いきなり全面的に信用は出来ないしするべきじゃない。いつ慢心して与えられることが当たり前になるか分からない。今は自分たちが起こした行動で窮地に立ったことで反省はしているようだが。

お人好しの綾子に変わって落ち込む前に、俺が締めなければ!


「こんなにも沢山の種類を!本当に感謝致します」

「綾子がそれで納得すればコムギや米といった主食となるものも、任せて貰えるはずだ。そうなれば一気に皆豊かになれる」

「それは!以前の暮らし…」


長達は昔を懐かしむような顔で、先が明るくなったことを喜んだ。誰が悪いとかじゃない、余裕がなさ過ぎて他を思いやることが出来なかっただけだ。

それにしてもこんなことを思う自分が一番信じられん。一度死んだときに管理者に植え付けられた綾子の世界の知識と感情が混ざり合って、思考が生まれた。綾子の役に立ちたいというのも、多分。

でも、悪くない。


「ルプス、取り敢えずいちどハチミツを採ってから綾子に報告してくる。それから出かけることにする」

「では、ここで待っている」

「わかった」


タケルは従魔仲間となったはっちゃんの気配を探り、竹藪に辿り着いた。

「タケルか?」

「ああ、ハチミツを貰いに来た」

「主は」

「だいぶ落ち着いた。タマゴが生まれて意識がそちらに囚われているからな」

「ああ、なるほど」

「この下のバケツのハチミツ、こんなにいいのか?」

「いい。主が喜ぶ方が良い」

表情はないが、綾子を気遣う気持ちが流れてくる。タケルはそれだけで一緒に頑張ろうと思えた。

「他に足りない物はないか?」

「ノーム達が先ほど果樹を育成させて花が満開になった。暫くはこれで我は足りる」

「綾子に伝えるよ」


15リットルのバケツ一杯にハチミツは溜まっていた。巣の中の蜜の密度がかなり少なかったのをみると、これは綾子を元気づけるためにかなり無理をしたのだろう。こんなことも綾子は力になるはずだ。

タケルは意気揚々と家に戻っていった。


戻って綾子に報告をしようと部屋に戻ったが、その部屋はカオスだった。

綾子に色んな毛玉が生えていた。

レオがあの図体で甘えているのをみて、ジュニア、メアが負けずに突進したに違いない。

まあ、嬉しそうだから良いか。


「綾子、ルプスと狩りに行ってくる」

「あー、お願い」

毛だらけになりながら綾子に手だけ振られて見送られたタケルは、それに手を振って返した。

さあ、狩りの時間だ。

「ルプス、気張れよ」

「任せろ!狩りなら、誰にも負けん」


次回「綾子の本領発揮 1」

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