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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
20/46

16 管理者の誤算 1

果樹でも大きい柚子2本と梅3本植え終わり、ブルーベリー10本に取りかかろうとしたときに、入り口が騒がしくなった。

「綾子、ノームを連れてきた。この一族は植物全般を育てるのが得意な一族だ。畑や果樹の世話を任せるといい」

「おお、それは助かる!今丁度果樹を植えていたところ。ハニー・ビーのはっちゃん一族が住み始めたから、急いで花を咲かせたくて」

「なんと、ここではハチミツが採れるのか!」

「今日からなんで、大した量ではないですが」

「それは凄い!あ、申し遅れた。儂は緑族の長グリーンだ」

ご都合主義ありがとう!正直名前覚えられないから毎回鑑定しようかと思ってたよ。これなら覚えられる!

「グリーンさん、やっぱり甘い物は好物ですか?」

「それはもう!儂らにとったらハチミツは命がけになるからの」

「何かお手伝いして頂くとか機会があれば。あとこの後ろの草原は自由に畑を作って下さい。もしかしたらお願いする作物も出てくるとは思いますが」

後ろにある草原を指さすと、やってきたノーム達のテンションが一気にあった。

「これらを自由に!」


「あ、皆さんが住む場所は要相談になりますが…」と言う私の声は風に流されていった。

グリーンさんを始め皆、叫びながら草原に向かって走り出してしまったのだ。


「あー、すまぬ。今まで限られた場所だったからな」

「爆発したと」

「今から連れて来るのは、大工仕事や木工細工が得意な部族を連れて来るから、その長と家は相談してくれ」

制御不能なグリーン一族から逃げるように、リアカーを引いてルプスは出ていた。


さっさと、ブルーベリー植えよ。

精神的に疲労した綾子ははやくメアやジュニアで癒されたいと、気合いで10本植えた。きっと気に入らなかったらあの一族のことだ。植え直してくれるだろう。

 

一息がてら家に入ると、ジュニアが弾丸のように走ってきた。

「ままー」

うっ、流石フェンリル。息が一瞬止ったよ。注意をしたくても何に興奮しているのかわからないが、腕の中でクルクルと回るという器用な芸を見せていた。

その度にポスポスと脚が胸を押すもんだから、息苦しいったらありゃしない。

手を放して下ろし、「ジュニア、伏せ」と強い口調でいうと流石に聞こえたのか、ピンッと立ち止まってゆっくりと伏せた。どうやら怒られるというのは、分かったらしい。

腰を落として、ジュニアの目線に合わせる。

「なにがいけなかったか、わかる?」

「ままにドンした」

「そうね。あなたはフェンリルこの魔の森の王の子供。メアに先ほどの突進をしたら、メアはどうなっていたと思う?」

「んー、たおれた?」

「そう、下手すると潰れちゃうの。メアがいなくなったら寂しいでしょ?」

「うん」

「じゃあ、お小言はこれでお終い。何があったの?」

「家の中にしらないおじさんがいる!」

綾子に知らせたいことを思い出したようだ。

この家どころか、ここ自体害のある者は入れない。そうなると、おじさんに当たる者は消去法でいうと、ノームしかいない。

大丈夫だと思うが、メアが怖がっていたらいけない。急ぎ足でジュニアの後を追った。

ジュニアが止った場所にはやはりノームが、ノーム達というか一族らしき人数が今すぐにでもこの家を探索したいとわくわくした顔で待っていた。どうやら挨拶もなしに勝手に見回るのは、ダメだと長らしき者が諭していた。

あー、一部既に探索してたのか。ジュニアが慌てるはずだ。

「お使い偉かったね、ジュニア」

「ままー、ままー、えらい?」

「偉いね」

頭を撫でて褒めてから、長に向き合った。

長は申し訳なさそうにしながら、挨拶をした。

「長のウッドだ。その、すまない。この家を見た途端に、好奇心に負けてしまった」

長が頭を下げると他の者も慌てて下げ始めた。


まあ…気持ちは分かるが、テリトリーを勝手に犯されるのは気分が良くない。家を建てるのがこの一族ならば、家が出来るまでここに住まわせてもと思ったが、それはムリだと思った。悪いと思ってくれるだけまだ共存の道は残されているが。

まあ…ルプスならそれぐらいのことと言いそうだが、そんな世界で生きていなかったのだ。身内と認められない者をここには、おけない。さて、どうするか。

 

「ウッドさん、取り敢えず一度家を出て行って貰えませんか?話はそれからです」

「わかりました。皆、出るぞ」

小さくブーイングが聞こえるが、長の指示に従い皆外に出ていく。

その間にメアのことが心配だったので、そのままお昼寝していた寝室に駆け足で行った。

「メア!」

「ままー、ままー、ままー…」

やっぱり泣いていた。いきなり知らない者がぞろぞろと現れたら、恐怖しかなかっただろう。例えメアよりも小さくても数の暴力には勝てない。

すぐに抱き上げ、もう大丈夫と抱きしめた。

奥にまで入った感じがないから、どうやら入り口でジュニアが吠えて追い払ったのだろう。改めてジュニアを褒めた。

「ちゃんとお兄ちゃんして偉かったね!お手柄だよ」


褒めた後、先ほど追い出したウッド一族の元へ行く。ジュニアはメアを守るんだと鼻息荒く私の護衛をするようだ。辺りを警戒しながら、私の前を歩いていた。

あー、ジュニアが可愛すぎる!なんて良い子なの!!ハグしてなで回したいけど、頑張っているのを邪魔してはダメだ。

綾子は親ばか発動を必死にメアを撫でて我慢していた。

ウッド一族は綾子に縋り付くハニー・ベアのメアを見て、罰の悪い顔をした。どうやら私が何に怒っているのか、理解したらしい。集団で暮らすノームにテリトリーなんて意識ないもんね。


「取り敢えず、分かって貰えて良かったです。これからこの庭に住まれるのでしたら、お互い礼節をもって接して欲しい。生活習慣や物の見方、考え方が違う者達が暮らすのです。私はノームさんたちがどのような暮らしをしていたのか知りません。いることすら先日知ったばかりです。逆にあなた方も私を知らない。ここで暮らす以上、何事も当たり前はないものと思っていて欲しいです」

「ああ、申し訳なかった」

「でも、ここに興味を持って貰えたのは嬉しいです。ですからウッドさん代表者10名を決めて下さい。その者達にこの家を案内しましょう。それで家を作るときの参考にして下さい」

「いいのか?」

「家、ないと皆困るんでしょ?」

「ありがたい。よし、代表者を決めるぞ!」


何とか収まり付いたのは良かったけど、晩ご飯…が遠のいた。きっとルプス今日中に全ノーム連れて来るつもりだし。

どうせなら、ここに暮らすみんなの顔合わせしたいな。

したいなー。管理人さん!!

ポイントでファミレスでもコンビニでも弁当屋さんでもいいから、開店しません?


『無茶を言う』

「やっぱりダメか…冷凍食品とかが持って来られなかったのが、悔やまれるぅ」

『……』

「だって、人間が一人にこの大所帯。しかも異世界に来て一週間にもなってないんだよ?それで放置って酷くない?ここに来る準備だけでも軽く10万近く使っているのにぃ。」

『……』

「もういい。手伝う気がないなら、勝手に助けないでよね。私は面倒見ないから。場所提供しただけでもいいと思ってよね」



「まま?」

「何でもないよ。もう少ししたらご飯食べようね」

「…あい」


考えが甘かったな-。まさかこんなに早くルプスが連れて来るとは思わなかったし、管理者絡みなら救済あると思っていたのに。あの人達荷物が殆どなかったのが気になる。

ルプスがいい顔して大丈夫なんて抜かしてたら、ジュニア以外見捨ててやる。そんな約束はしていない。もし軽々しく約束なんてしてたら、ルプスが面倒見れば良い。私は場所を提供すると言っただけだ。今まで洞窟で生きてこられたのだ、どうにかするだろう。

そう思えば気も楽になった。

ウッド達探索メンバーも決まったようだし、案内をざっとしてご飯食べよ。


「他の方は別の一族の人と相談してどこに家を建てるとか決めて下さい。今草原になっているところだったらいいので」

寝室以外ざっくりと案内した。質問が多かったのはお風呂だった。仕組みを聞かれたが、自分が建てたわけじゃないから、わからない。まだ薬草も錬金したことがないのだ。頑張って!と応援するしかなかった。

何の参考にもならなくてごめんよー。


それにしてもタケル遅いな-。町に辿り着かなくても今日中に戻ってこられるところまで、っていってあるし、兄1もいるから、余程じゃなければ大丈夫なはずだし。

兄2も帰ってきていないけど、大丈夫だよね?

お腹空かせて戻ってくるはずだから、肉なし野菜炒めをしておこう。ご飯も結局炊いたままだから丁度良いだろう。



それにしても軽い警告の意味でメアのこともありウッド一族には話したが、それが自分の身に降り掛かると数の恐怖は半端ない。

ウッド族の案内を終えて家に外に出ると、溢れんばかりのノーム達が家の周りを囲んでいた。挨拶に訪れたのかもしれないが、相手を知らない相手に囲まれると言うだけで、こんなに怖いのか。

食事を要求されてもないものはない。タケルもいないし今日は外へ出るのが怖いので、家にあるもので作ることにした。


「先に食べようか」

「ジュニアにはシンプルに塩胡椒の野菜炒め。お肉ないけど、我慢してね」

「おしいよー」

「良かった」

「メアはハチミツね」

3人だけの食卓は静かすぎてジュニアさえ、綾子の足元から離れなかった。



次回『管理者の誤算 2』

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