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うさぎに騙され異世界へ  作者: 桜田 律 
2章 異世界生活スタート
19/46

15 ハニー・ビーのはっちゃん


「まま?」

「メルどうしたの」

「どこ…」

ああ、外だと独りぼっちでの記憶があるから、もしかしたら寂しいとか、怖いって思うのかな?でもハチミツにはきっと勝てないはず。

「メルの大好きなハチミツを探しに行くの」

「まんま!」

「そう、だからみんなでお散歩。下にジュニアもいるでしょ?」

「あい!いーしょ」

ハチミツは大事だよね!メルにとってもだけど、うちの子に甘い物が嫌いな者は誰もいない。そのうちあれが食べたいと言ってくるに違いない。私も食べたいし。一人でこっそりとか出来る環境じゃないし、出来ればいろんな物を作ってあげたいし。危険が伴うが、ここなら砂糖よりは間違いなく手には入りやすい気がする。みんなのお陰で防御力はしっかりあるし。

ただメルに軽く散歩とか言ったものの、普通はそんな簡単に歩けるような場所じゃない。気を引き締めて歩くよ!

「地図作成」


そう気合い十分で庭を出たのに、何故ゴブリンに道案内されてるのだろうか。


「ねえ、兄-、どういうこと?」

「父さまがノーム連れて来るのに、冒険者や配下になっていない魔物が現れたとき対処できるように、哨戒させています」

「なるほど」

魔の森の王の子に敬意を示しているのか。

初めて兄2と念話で話したが、ジュニアと違ってかなりしっかりしているようだ。人間の子供にしたら12歳~14歳ぐらいの感じ?


ゴブリンが後ろを振り返ってニタ―と笑う。本人はどうやら愛想良くしているつもりらしいが、私からしたら顔を引き攣らせながら、手を振るしかなかった。


ゴブリンが一つ目の巣を見つけたとき、フェンリル兄とゴブリンが戦うぞ!って気合いを入れたが、止めた。

気合いが入るのも分かる。いやー流石、異世界。でかいよ。見た目ミツバチなんだけどそれがゴルフボールぐらいあるもんだから、羽根の音も凄いし、当然巣もでかい。刺されたら死ななくてもその場で麻痺しそうだ。

「巣からちょっと離れて。巣からハニー・ビーを引き離して、そのまま眠らせるから後から帰ってきたハニー・ビーだけお願い」


ここは慎重にまず巣を大きめの空気の膜で包んで、無属性魔法「密封」

おお、出てくる出てくる。うっわー、蜂舐めてた。数も凄いよ。

取り敢えず順次ヨロヨロと出てきた蜂に無属性魔法「スリープ」を掛け眠らせる。

荷物を詰めて持ってきていた段ボールを空けて、それを5つほど持ってきたけど、一つの巣で5つとも一杯になりそうだ。

こんな面倒なことをなぜしているかというと、ハチミツだけとってさよならだとすぐになくなる。どうせなら働き蜂ごと庭に移植してすぐにでも生産に入りたい。ここに来たばかりなら、きっと殺すしかなかったと思うけど、みんなのお陰で魔力も増えたし、増え続けているし、出来ることをしないのは怠慢な気がするんだよね。


巣の中に入れなくて空気の膜を針攻撃してくる蜂は、兄2が叩いて落としていた。

段ボール4つほど一杯になったところで、女王蜂が出てきた。サッカーボールぐらいある。果敢にも針で膜に突入を掛け揺らすが、壊れることはない。

ごめんねー。メルのために諦めて。

「テイム!」


女王蜂が光って無事テイムとなったようだ。おおーこれがスキルテイムか。5は伊達じゃないね。

名前を付けて下さいと頭に響いた。向こうからテイムを希望する場合は名前をつけることで契約となり、こっちがしかける場合は、後で名前なのか。

「あなたは、はっちゃんよ」

センスがないのはわかっているし、蜂のはっちゃんでいい。名前、覚えるの苦手だし、これでいいのだ。


こちらを見て頷いたので、巣を囲っていた空気の膜を全て外した。

「この中にいる子たちも眠っているだけだから、安心して。あなた達には私たちが住んでいるところに引っ越してきて貰って、定期的にハチミツを提供して貰う。それ以外は自由にして」

「わかった。それでいい」

元々知能的に高い魔物ではなかったからだろうか、念話も短い。それでも意思疎通が出来るなら果実樹を植える相談が出来る。

「じゃあ、みんな起こすからゆっくりでいいから、付いてきて」


「解除」

英語と日本語が混ざってるとか突っ込みはなしで。冒険型のゲームは時間がなくて20年ぐらいしていない。呪文なんて思いつきもしない。普段使っている言葉なら間違いなくイメージが固定しているので、失敗はないはずだ。実際成功しているし。

一斉にぶんぶんと飛ぶ様子は圧巻だった。耳の奥にまで残って夢にまで出てきそうで怖いぐらいだ。本当は段ボールで運びたかったのだけど、箱を持てるのが私しかいないという作戦ミスの為だ。

巣はアイテムボックスにしまって、みんなで帰る。

メルもリュックの中に入り込んでしまっているし、この音にゆっくり歩いて一時間付き合うのは、ちょっとムリ。

「地図」


ここまで来た道のりが示されている。家に印を付けて、「案内」を押すと道順が示された。

「兄、走るよ」

多分、ジュニアを抱っこしても今の私なら走れるはず。

ゴブリンにお礼を言って、一気に走り出した。

「加速」

気分は忍びだ。

木々の間を風のように走ることが出来ている。頭の中は完全に忍者映画の一コマで自分が主人公になったつもりで走っている。

当然「「忍者突如現る!!」」というテロップが当然流れていた。

魔法を知った綾子は、確実になにかに毒されていた。


一時間かけて進んだ道は、帰りわずか15分で帰った。

「到着!ここがこれからはっちゃん一族が住むところよ。外敵もいないからかなりのんびり出来ると思うから。さあ、入って」


はっちゃんが何かを言うと探索に出かけることにしたのか、一割を残して庭に散っていった。

「はっちゃん、これらを今から植えるんだけど、もともとあった木の近くで良い?」

「かまわない」

「後は蜂の巣ね。竹林の奥この辺りにしようと思う。笹で周りが隠れるし日もそこまで入ってこないからいいと思うんだけど」

「かまわない」

「では、クリエイト!」

竈のような物を作る。ただその穴をじょうごのような形にした。そうすると巣から溢れ出た蜜が下に落ちていく。竈の下にバケツを置けば、出来上がり!

餌として取り過ぎず、ほどほどにハチミツも採れる。竹が程よく育っているから蜂の巣を置いてもびくともしない。いい感じに立てかけることが出来た。

工作2だった私にしては、かなりの自信作の出来上がりだ。


「これでいいかな」

「かまわない」

「じゃあ、はっちゃん。どれぐらい溜まるのかわからないから、一度今日の夕方来るね。その時何かあれば言って。じゃあね」

蜂って表情読めないし、念話にも抑揚ないし、テイム出来ているとわかってもちょっと緊張する。

今までが懐かれすぎだとも言えそうだけど。

さあ、早く果実樹を植えないと。

ここに連れてきた責任は果たしたい。

果実樹のそばに行きかけると、幾つかの視線が飛んできた。


……。……視線が痛い。

メアも私の緊張感が伝わっていたのか、始終無言で身動き一つしてなかった。

はっちゃんから離れた途端にお腹空いたのに我慢が出来なかったのか、先ほどの甘いハチミツの匂いで刺激されたのか、もぞもぞとリュックの中で動いている。

「先にお昼ご飯にしようか」

「おおー!」

ジュニアが一番喜んでいた。

仕方ない。おにぎりはご飯食べてから握ろう。


ということで、3分クッキング!

庭から分葱をとってきました。

キッチンで寸胴鍋でお湯を沸かせます。

(キッチンは全て魔道具。電気コンロみたいな感じになっているのでボタン一つで火が通る。


その間に持ってきたさつまいもを洗い、ピーラーで皮を剝き水につけます。

分葱を切ります。

フライパンを火に掛けます。

さつまいもを水からあげて水分を拭いたら、熱したフライパンに油を注ぎサツマイモを入れる。

お湯が湧いたら乾燥麺のうどんを入れます。太さは色々ありますが太いとゆで時間が長くなるため、細麺で。

さつまいもを裏返し、反対側からも火を通す。

うどん3分経ったらざるにあげます。水で麺ををしめたら、お椀に入れてめんつゆを垂らして出来上がり!

さつまいもも出来たら、トッピングどん!

分葱は私だけ。


常に腹を空かせているルプス一家には、組み合わせと言うよりあるもので水増ししかない。

大の器に兄2 中の器にジュニア 

いつもより大きめの器でテンションが高いのか、シッポがちぎれそうなぐらい振られている。

では、「どうぞ」

メアにはハチミツを掬って食べさせる。もぐもぐしているあいだに、自分のうどんを啜る。

うん、美味しい。

メアにあげる。啜るを繰り返して昼食終了。


いつものお代わり分ぐらいは次いでいたので、何とか持ったがやはりお代わりが来た。

まあ、うどんが目の前にあるのが見えたら、欲しいよね。

同じようにうどんをついで、つゆそそいでさつまいもどん。

肉じゃないから、物足りないとか兄は言うかと思ったが、良い子だ。あるものを食べるらしい。


「これで終わりだからね」

「わかったー」

「兄ちゃんは午後は休んでも、狩ってきても良いよ」

「じゃあ、ちょっと狩ってくるよ」

「うん、気をつけて」

「はーい」

「メアとジュニアはここでお昼寝」

「ままはー」

「木を植えるのよ。蜂さんに食事あげないといけないから」

「わかった-」


さてはっちゃん一族はテイムされたとは言え、こっちの勝手でここに連れてきたんだから環境ぐらいは整えてあげないと。

ポイントで出した果樹を持ち上げ予定の場所に運ぶ。

それにしても明らかに自分より大きいこの木が一人で担げるとか、どんどん人間離れしていくなーこの身体。安全第一だからいいんだけどね。この身体だったら土建の仕事しているおじさん達にも余裕で勝てると思う。ただ人間重機とか言われたら泣くけど。

一応おばさんといえども、女心は複雑なのだ。


さて、急ごう。早く植えきらないと、また晩ご飯に追いかけられる。

人間、もう一人は欲しいな-。



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