12 綾子覚醒
綾子が茫然自失に陥っている頃、フェンリルのルプスはマジックバッグをもったタケルを連れ去り、ねぐらにしていた洞窟につれて行った。
「おい、ここに俺を連れてきて何させるつもりだ」
「決まっておろう、魔石とアイテム拾いだ」
「ああ、なるほど」
「この空を見ていつ人間どもが調査隊を派遣してくるか分からん。この周りには結界が張ってあり早々辿り着く場所ではないが、ダンジョンとなれば別だ。その前にノーム達を移さねば、中から外から外敵に襲われることになる」
「綾子のレベルアップが急務なわけだ」
「一階は頼んだ。ゴブリンとスライムしかおらんから、問題なかろう。ノームにもタケルのことは伝えておく」
ルプスは返事も聞かぬまま、走って行った。
「綾子、大丈夫か?説明できるやつが誰も残ってないが」
まあ、今ぼやいていても仕方がない。タケルは早く帰れるようにルプスの後を追い、アイテムを拾うまでだ。
早速、ルプスの通り道がてら潰されたゴブリンらしきものが、光となって消えていくのが見える。
「行きますか」
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「絆された私が、バカだった」
「まま…」
目を覚ましたのか、後ろから心配そうな声が聞こえた。
「ん、大丈夫よ。メル」
ここは大丈夫じゃなくても虚勢を張ることも大事。
ママになったんだから!
足元に重みを感じれば、靴の上に前脚をちょこんと置いて、こっちを窺っている子狼ルクスジュニアがいた。
「ジュニア」
抱き上げて頭を撫でると、頭をずりずりと綾子に擦りつけた。
「まま?」
「そうよ。ジュニアも家の子」
ちぎれんばかりにシッポを振る。そのシッポがバシバシト腕にあたって痛いのだが、流石にやめろとは言えない。
「ちょっと待って」
土魔法クリエイトで椅子を作成。まあ、背もたれがあって座れたらいい。
リュックを下ろしてメルを中からだして、右手に抱き座った。
ジュニアは足元から軽くジャンプをして、左膝を占領した。
二つの毛並みの違うもふもふを堪能しながら、目の前の現象をみていた。
小屋や畑を囲んでいた柵が勢いよく広がっていく。
田舎の風景だったものが、完全に村にまでは広がったんじゃないかという大きさだ。
それに応じて家も小屋という大きさだったものが、どうみても屋敷だ。
畑だったところは、畑のままで屋敷近くにある。それ以外の土地は草原。青々とした草が緩やかに流れる風に靡いている。
ノームが耕す畑になるってことかな?
私が望んでいた自給自足の生活を営んでいたのだろうから、きっといい畑になるんだろうな。
流れゆくこの景色をまるでドキュメンタリーのように見ていた。
たった一軒の小屋しかなった村が、こんなになりました。というテロップつきで。
どこまで発展していくのだろうか。どう考えてもダンジョンより目につくだろうな。突然魔の森に村が出来てるんだから。
でももう考えるのはやめた。どうせ答えは出ない。全部管理者のせいにして、ファンタジーを楽しむのだ。
自分のレベルがどうなってるのかとか、この所有地は私でいいのだろうかとか。
全部管理者に任せてしまえ。どうせそのつもりでフェンリル唆したんだろうし。
私はどこに向かっていくんだろうかという疑念はのこるが、まあ、今はこの子たちを育てるってことが分かればいいか。と精神上安定するので思うことにした。
「ままー、まんま」
「お腹空いたよね。先に食べちゃおう」
まずはおわんに肉じゃがを盛って、二匹の兄フェンリルの前に出した。
「どうぞ」
契約をしていないので念話が出来ないため何を話しているのかわからないけど、表情を見ていると美味しいようだ。
「ジュニアにはこんにゃく以外ね」
下に下ろして器にいれてあげると、こちらもガツガツと食べ始めた。
「メルにはハチミツ」
まだまだ食べたりないという顔をするフェンリル三兄弟には、次にかぼちゃスープをだしてみた。
お肉の姿がなく、ただ黄色い水に始め戸惑っていたが、ジュニアがはぐはぐし始めたのを見て、お椀に顔を突っ込んだ。
先ほどではないけれど、いけるらしい。
次を期待してお椀を綺麗に舐めていたが、流石に頑張っている二人の分まで食べるのは、気が引ける。
「もうちょっとだけ、二人の帰りを待とうか」
先ほどから変化し続けていた風景も落ち着きを取り戻したようなので、止まった気がする。きっともうすぐ帰ってくるのだろう。もしお肉が足りないようなら、タケルにうさぎ肉捌いてもらって、フライパンで焼けばいい。
だけどただ待っているだけなのもつまらないので、ここでやることといえば、家の探検でしょう!
みんなを引き連れて、家の方へと向かっていった。
面構えは完全に老舗の旅館だ。
異世界に来て冒険というよりは、命の洗濯に来たといってもおかしくない風貌だ。
「みんな家に入る前には綺麗にして入ろうね。クリーン」
これは、お風呂も部屋もめちゃ期待が出来る!
中に入ればただ古き良き時代というよりも、和モダンでスタイリッシュ。こんな家・別荘が欲しいと思わせる癒される空間。
なんて、贅沢な。
たぶん私の部屋だろうと思われる部屋には、大きなキングサイズのベッドがどーん!にソファとテーブル。部屋の隅にはトイレ(水洗!これ大事)・その横には一人で入れるぐらいのお風呂が付いてあった。
ここでも充分だけど、要望にあわせて大浴場は別にあるはず!
部屋の奥に行くとそれは、あった。
ヒノキ風呂だ!しかも外の窓が開けられるようになっていて、露天風呂の雰囲気まで味わえる。そとには見事な竹林があるが、それが無造作に生えているわけではなく見事に計算された配列で、めったに味わえる風情ではなかった。
これは一本取られた。
「わかりましたよ、わかりました。町に行って色々状況を掴みましょう。冒険者として活躍できると思ってないので、そこは要相談で。基本は商人にでもなりましょう。ノームたちが作ったものを売ったり、フェンリルが狩ったものを売りに言ったり、回復薬作って売ったり、とにかく経済をまわして見ますよ。それがあなたの狙いなんでしょうから。思うところはありますが、素直に屋敷は嬉しい。ありがとうございました」
『頼んだぞ』
「たのまれました」
まず私はポイントで錬金道具を交換して、スキルのレベル上げから頑張りますかね。
これから一切の自重しない、綾子の無双がはじまる…?
次回『ポイント交換と食事』




