1 プロローグ
行き当たりばったりで浮かんだ話を書き始めました。
慣れていないので読みにくい内容になるかもしれませんが、温かい目で読んで頂けたら嬉しいです。
――――えーと。
これって需要あるの?
意味不明な言葉が零れる。当然それに返ってくる言葉はない。
だって、あり得ないじゃない。信じたくないのが一番かもしれない。
「あのー誰かいますか?」
遠慮がちに叫んだ言葉は、風のざわめきの中に溶け込んで消えていく。
うーむ。マジで?
気が焦るのを冷静に冷静にと呪文のように唱えて、腕を組んで暫く悩んだが、いい案は浮かばない。
こわごわと一歩踏み出してみたが、草の擦れた匂いと土の音はそれが現実のものだと物語っていた。
どーするのよ、これ。
人間本当に驚いたときは何も出来ないって、本当なんだね。
考えることを放棄して、ただ色彩豊かなお花畑が広がっているのを見ていた。
会社員しながら主婦している藤川綾子45才。夫一人に子供なし。島国日本で一軒家に別に不満もなくそこそこに楽しく暮らしていた、はず。
しかも今日はたまにはととった有給休暇を有意義に、家庭菜園の収穫をしていた。先ほど収穫したのはトマトで、これから夜ご飯は天ぷらと決めていたから、大葉とパプリカを収穫しようとしていた。
今あるのは、トマトと持っていたスコップと収穫用のボールのみ。ここでこんな状態で過ごせと言われたら、間違いなく詰む。
くらっと立ちくらみを起こした隙に、いきなり転移するとか普通じゃありえない。
バカみたいに呆けてしまっても、仕方ないはずだ。
それにしても…本気で…ここ、どこよ。
まさか、まさかのラノベの主人公の始まりとか、いわないわよね?
無理矢理こじつけて、ここが異性界でその生活が始まったというならば、まだ生き残れる可能性が残るけど、どこかの狭間に落ちてずっと一人でこの空間にいるとか、一番あり得ない。
まだ一歩しか踏み出していない。見渡す限り同じようなお花畑にしか見えないから、絶対に同じ場所に戻って来られないと思う。だったら一歩戻って元の世界に戻れるか試すべきだ。
そう決心した綾子は、先ほどまで立っていた場所に一寸の違いもないように足底を合わせるように一歩下がった。
これでどうだ。
暫く待ってみたが、何かが変わる様子はなかった。
心臓の鼓動が大きく跳ねた。
本気で、どうしよう。
そこから動くことが出来ずに、そのまましゃがみ込んだ。
ぐらりと視界が歪む。
――――えッ
気がつけば、自分の家の庭で何事もなかったように同じ姿勢で戻っていた。
……。
………。
これって元の世界に戻って来たってことでいいのよね?
目線だけで辺りを見渡すが、どこをみても自分が知っている庭だった。
……あぁ―――。良かった。
毛穴という毛穴から噴き出る汗を拭うこともせず、綾子は座り込んだ。
十代の子達がラノベで活躍する話は多々あったが、人生の折り返しを曲がってしまったおばさんがこんな事項に巻き込まれるとか、一体誰得?需要がどこにあるわけ?
読者にも、向こうの世界でも貢献できるネタが何処にもないのに。
まあ、あそこが異世界だと決まっていたわけじゃないし、確かめるすべは何処にもないけれど、それでも戻って来られて良かった。
暫くして立とうとして立つことも出来ないのには、笑うしかなかった。腰が抜けるってこんな感じになるんだ-。
結局家の中に入ることが出来たのは、それから体感で30分後だった。
―――あ、トマト向こうに忘れた。
*****
じゃーん!俺様登場!!
ようこそ、仮想世界……に。
あ、あれ?
何でいないの?
先ほどまでこっちに来てたよね?
なんで来ておいて、すぐにいなくなっちゃったわけ?
困るよ。
困ってるよ。
今日こそはノルマを達成しないと首だと言われてるんだから。
俺様を可愛い!!ってなで回して、ご飯くれて契約なんかしちゃってくれないと、本気でまずいんだけど。
どうしよう。
どうしたらいい?
チュートリアルは後でもいいけど、契約の証食事を俺様に与えるというのがなされないと、明日からニート確定だよ!
何か、何でも良い。食べるものが欲しい。
短い足でピョンピョンと跳ねるように飛んで先ほどまで綾子が居た場所までやってきた。
ん?
これは、トマト。
……。
トマトか。
うさぎである俺様に、トマトとか。なんてミスマッチ。
それでもこれしかないなら、食べるしか望みはない!
意を決してうさぎである者はトマトにかぶりついた。
ピコン
ゲームの中で聞くような電子音が鳴った。
仮契約が成されました。一週間以内に本契約へと移行させて下さい。出来なかった場合には、クーリングオフとなります。
な、何とか食いつないだ。
あとは先ほどの彼女が何者であっても、チュートリアルを受けて貰う!
紅い目の奥をさらに紅くした俺様うさぎはない指をぎゅっと握りしめ、決意を新たにした。
9月末までバタバタしているので、ゆっくり投稿となります。