第3話
冒険者ギルドを出た後は、他に用事もないので、宿に戻った。
「ウリボーお帰り、2階の奥の部屋に用意しておいたぞ。……兄ちゃん、わかってるなっ!」
おっちゃんは、鍵を渡しながら、俺の手を強く握ってきた。
「もちろんです。わかってます」
おっちゃん、心配しなくても、間違いは犯さないよ。
2階に上がり奥の部屋に入ると、広かった。12畳ぐらいありそうだ。部屋の隅に布団が積み上げられている以外、窓はあるけど、何もない部屋だった。
「アゼルさん、広くないですか?」
「たぶん、おっちゃんがケイのこと、気に入ったんだろ」
いや、違うと思うよ。……アゼルさん、本当に心が読めるんだろうか。
「とりあえず、汗を流しますか? 井戸とか水場とかあるんですか?」
「外にあるよ。でもお湯を頼めば、持ってきてくれるよ」
なるほど、そういうシステムだったんですね。
「じゃあ、俺がタライにお湯を沸かしますので、皆さん、先に汗を流してください」
俺が、サタン様から貰った大きなタライにお湯を沸かして、部屋の外に出ようすると
「ケイ、どこに行くんだ?」
アゼルさんが聞いてきた。
「いや、俺は外に出るほうがいいでしょ」
「なんでだ?」
「そ、そうです。後ろを向いておいてもらえれば、構いません」
アゼルさんの疑問に、マリアさんだけが動揺しながら同意したが、キアラさんもリムルさんも頷いている。
「そうですか、じゃあ、後ろを向いてます」
いいのか……いや、これ、振り向いたら見えるのに、振り向けないし。中で待つほうが辛くないか。
「ケイさん、見てください。これ、アリサさんが作ってくれたんです。今いるメンバー以外では、最初にケイさんに見せようと思っていたのです。どうですか?」
と言われたので振り向くと、マリアさんが上半身ブラジャー姿で胸を張っていた。髪の色に合わせて薄い青の可愛らしいブラジャーだ。他の3人も、髪の色に合わせているのだろう、アゼルさんが赤、キアラさんが黄色、リムルさんが黒色だ。
でも、なぜ茶髪のリムルさんだけが、セクシー系デザインの黒なんだ。他の3人は、可愛い系なのに……茶色の下着が嫌なのはわからないこともないけど、リムルさんの体型で黒のセクシー系はないんじゃないか。
「んっ!」
すみません、考えていることがバレたんですね。
「マ、マリアさん、駄目ですよ。ブラジャーもパンツと一緒で、あまり人に見せるものじゃないんですよ」
キアラさんが、マリアさんに注意しているが……そういえば、この世界でブラジャーを見たことなかったね。
「す、すみません」
なぜか俺が謝って、後ろに向きなおした。
「そうなんですか、こんなに可愛いのに……でもケイさんにしか見せてないし、問題ありませんよね」
「はい、私もケイには、ちょっと見てもらいたかったんです。私、前世でも、ブラジャー付けたことなかったから、嬉しくて。でも、この喜びって、私と同じ前世の記憶を持っている人にしか伝わらないじゃないですか。だから、ケイさんなら、わかってくれると思って」
いや、わからねぇよっ! 初めて着けたブラジャーの喜びなんてっ!
しばらく後ろを向いて、音だけを楽しんでいると、
「ケイさん、どうぞ。お湯も綺麗にしておきました」
みんな、汗を流し、すっきりした顔をしている。
「ありがとうございます」
マリアさん、水の浄化もできるんですね。……なぜだろう。ちょっと損した気分なんだけど。
俺が服を脱ごうとしているのに、みんな、後ろを向いてくれない。まぁ、俺は気にしないんだけどね。
みんなに見つめられながら、パンツを脱いでいると、
「ふふっ」
リムルさんが、鼻で笑いやがった。前世のとき、24才で死んでるから、きっと人並みに経験があったのだろう。いや、もしかして、今世でも経験があるかっ!?……リムルさん、わかってるよ。でも、まだ大きくなるはずなんだよ。それに、膨張率もあるしね。
俺も汗を流し終わり、アリサさんからもらったパンツを履いたが、いい履き心地だね。いつ採寸したんだろう。
たらいの残り湯を“掃除機魔法”で吸い取ろうとしていると、
「ケイさん、魔法袋に吸うつもりですか? 私、水なら消せますよ」
そう言ったマリアさんが残り湯に手を浸けると、どんどん残り湯が魔力に変換され、周りに散っていった。
「ありがとうございます。マリアさん、そんなこともできたのですね」
「ええ、爺やに習って、なんとか身に付けることができました。でも、水しかできませんし、これにも魔力を使うので、普段はあまり使いませんが」
そうなんだ。でも、ベルさんは変換した魔力を吸収してたと思うんだよね。ベルさん、万能過ぎるね。
寝る場所で少し揉めてたけど、俺が真ん中で寝ることで落ち着いた。が、朝起きると、全員、俺に抱きついていた。今、冬だし寒いからね……
身支度を整え、朝食を済ませると、まだ日の出前だけど、外が明るくなってきているので出発することにした。
一階に降りると、すでに大勢の人が朝食を摂っていた。みんな、夜の移動は避けたいんだろうね。
「夕べは、お楽しみだったようですね」
おっちゃんに宿泊料の金貨1枚を手渡すと、俺の手をギシギシと握り締めながら、そう言ってきた。後ろの4人が顔を赤く染めているのだろう。さらに、おっちゃんの手に力がこもり始めた。
「あっいえ、何もありませんよ」
とは言ったものの、どう見ても何かあったようにしか見えないよね。
「まぁいい。兄ちゃん、ウリボーのこと、頼んだぞ」
おっちゃんは、俺にしか聞こえないように小さい声でそう呟き、手を離してくれた。
「おっちゃん、ありがとう」
アゼルさんが、おっちゃんに礼をいうと
「おおっ、ウリボー、気を付けてな。みんなと仲良くするんだぞ」
そう言って見送ってくれた。みんなそれぞれに礼をいい、宿を出た。
宿の裏で、アゼルさんに馬車に馬の繋ぎ方を教えてもらいながら、お願いしてみた。
「アゼルさん、しばらく俺に御者を任せてもらえませんか」
「いいぞ、ケイは疲れないだろうから、飽きたら言ってくれ」
「わかりました。そのときは、お願いします」
俺が疲れにくいの、アゼルさんは気付いていたんだね。
街の門で、通行料を支払い出発したけど、通行料ってけっこうバカにならないね。何か効率のいい収入を考えないといけないね。
「アゼルさん、馬が2頭ですが、1頭では無理だったんですか?」
少し経費の削減から考えてみよう。
「ああ、この人数なら1頭でも引けるんだけど、何かあったとき、2頭いると安心なんだ」
なるほど、わかりにくいけど、わかりやすいね。人もそうだけど、馬も怪我や病気、何があるかわからないからね。あと、魔物や盗賊もいるだろうし、2頭いるほうが良さそうだね。昔からの商人の知恵なんだろう。素人の俺が考えるとまた失敗しそうだし、止めておこう。
「ケイさん、私も手綱の引き方を覚えたいです」
しばらく馬車で走っていると、キアラさんが言ってきた。
「いいですよ。じゃあ、俺の膝に座ってください」
「わかりました、お願いします。」
キアラさんは、素直に俺の膝の上に座った。
あれっ! キアラさん、まだ子供だと思っていたけど、いいお尻に育っていたんだね。そういえば、昨日のブラジャー姿を見たとき、おっぱいもCカップぐらいはありそうだったね。マリアさんとアゼルさんのおっぱいが大きくて印象薄かったけど、もう15才だもんね。
「しまった。私も知らないことにしておけば良かった……」
マリアさんが何か言ってるが、放っておこう。
キアラさんは、身長が150cmぐらいしかないので、俺の膝の上にすっぽりと納まっていいね。
キアラさんに、アゼルさんやマリアさんから聞いたことを説明しながら進んでいくと、
「なるほど、お馬さんと気持ちが通じ合えば、あまり何もしなくていいんですね」
キアラさんは、理解が速く、すぐに手綱の扱いに慣れていった。
でもね、知らずやっているのだろうけどお尻で確認するの止めてくれるかな。催してる俺も悪いけど、そろそろ限界だよ。
違うことを考えながら、耐えていると、
「ケイさん。教会で炊き出しはしないのですか? 私、楽しみにしてたんです」
そういえば、俺が炊き出しをしながら世界を廻りたいって話していたね。
「旅に出る前に、学園都市の教会で確認したんですが、ロワールまでの街道沿いの町や村は、人通りも多く比較的裕福で宿場町も兼ねているので、あまり炊き出しをしないほうがいいみたいです。食事も大切な収入源ですからね」
「たしかにそうですね。ご迷惑になる場合もあるんですね」
キアラさんが、少し残念そうにしていたので、
「ではロワールに着いたら、キアラさんの修道院でやりませんか? あっ、でも男の俺は手伝えないんでしょうか?」
「それがいいです。週に1度だけですが、炊き出しの日があるんです。修道院の中には、ケイさんは入れませんが、炊き出しは、修道院の外でやるので大丈夫です。その日は重い荷物を運んだりするのに、近所の男性の方も手伝ってくれるんです」
「なら良かった。皆さんに喜んでもらえるように頑張りましょう」
「はい、がんばりましょう」
なんとか耐え切り、お昼休憩に入った。
「マリア。ケイさんがいつも料理を用意してくれてますが、このお金をどうしますか?」
キアラさんが、マリアさんに確認している。
「そうでしたね。ケイさん、あと何日分ぐらいお持ちなんですか? 食材の購入費は積立金から出してもらうつもりだったのですが」
「たぶん、5人ならしばらくは大丈夫だと思います」
実際、パンだけでも1200個ぐらいあるからね。
一日100個で、1000個の注文だったのに、取りに行くと毎日120個ぐらいあったんだ。おっちゃん、サービスしてくれ過ぎだろう。
「そうですか。では少し考えないといけませんね。午後の御者はケイさんにお任せして、みんなで考えましょう」
マリアさんがそう言ってくれているけど、
「あのう、食材は学園長がくれたものですし、構いませんよ」
「駄目です。ケイさんが、爺やに確認してもらって学園長に支払っていたのを知っているのですよ」
バレていたんですね……
午後は、1人で御者をすることになった。……あっても困るけど、ないとなると寂しいね、おっぱいやお尻の感触。
それにしても、平和だね。広大な農地の間をぬける街道に沿って馬車を走らせているけど、野犬やゴブリンなどの低ランクの動物や魔物の反応が少し離れたところにあるだけで、街道まで出てこないんだね。
今日は、まだ日が高いうちに次の街に着いた。
やっぱり学園都市から離れて行くごとに、規模も小さくなるし、人の賑わいも寂しくなっていくんだね。
また宿はアゼルさんに任せ、冒険者ギルドに向かった。
ここでも、カウンターのお姉さんから熱烈な歓迎を受けたが、諦めるしかないのだろう。
宿に戻り、部屋に入ると昨日よりも狭いとはいえ、10畳ぐらいはあった。十分に広いね。
「アゼルさん、昨日もでしたが、こんなに広い部屋でもいいんですか?」
少し申し訳なくなってきたので、アゼルさんに聞いてみた。
「大部屋は、だいたいこのくらいの広さだから気にすることない。それよりも、お湯を用意してくれ、みんな、待ってる」
「すみません、すぐに用意します」
俺が、タライにお湯を用意すると、
「ケイさん。みんなで話し合って決めたのですが、お料理のお返しに、みんなでケイさんの身の回りの世話をすることになりました」
マリアさんがそう言うと、みんなで俺の服を一瞬で脱がせてしまった。
「さぁあ、ケイさん。お湯に入ってください」
言われるがままにお湯に浸かると、みんなで体の隅々まで、タオルで擦ってくれいる。……これ、めっちゃ気持ちがいいね。
でも、気持ちがいいと……
「ケイ、辛くないのか?」
アゼルさんが聞いてきた。そういえば、知識だけはあるんだったね。
「ケイさん、辛いんですか?」
キアラさんが、不安そうに聞いてきた。
マリアさんは、顔を赤くしている。
リムルさんは、ニヤニヤしている。
「いえいえ、気持ちがいいですよ」
俺がそう答えたが、
「キアラ、男は溜まると辛いらしいんだ」
アゼルさんが真面目な顔して、キアラさんに説明している。
「何が溜まるのですか?」
キアラさん、そんなことも知らなかったんですね。
「そういえば、そうだな。マリア、何が溜まるんだ?」
ああ、アゼルさんも知らなかったんですね。
「そ、そ、それは……」
マリアさんが顔を赤くして俯いてしまった。知っているんだね。
「アゼル、どうしたらいいんですか?」
キアラさんが諦めて、行動に出るみたいだ。……マズいね。
「ああ、それは、知ってるんだ……」
「駄目っ! 今のケイさんにそれをやると嫌がる。もっと焦らさないと駄目。そのうち自分から言ってくるから」
アゼルさんが手を伸ばし説明しようしたところで、リムルさん止めた。……コイツ、侮れないな。
「そ、そうなのか」
アゼルさんは、素直に従うようだ。
「ん、そう。キアラ、後でやり方、教えてあげるから我慢しなさい」
リムルさんがそう言うと
「わかりました。お願いします」
キアラさんも素直に頷いている。
「あのう、リムル、私にも教えてください」
マリアさんもやり方までは知らないんだね。
「ん。私に任せておけば、大丈夫」
リムルさんは俺のほうを見て、ニヤニヤしながらそう言った。……リムルさん、見た目は一番幼いのに怖い子だったんですね。
その後は滞りなく体を洗ってもらい、体を拭き、服まで着せてもらった。
その後、女性陣が汗を流すので、後ろを向こうとすると、
「駄目。ケイさんの裸を見て、私達が見せないのはフェアじゃない。ケイさんも見てもいい」
また、リムルさんが囁いてる。
「リムル、ちょっと恥ずかしいです」
そうだよね、キアラさん。もっと言ってくれ。
「そう、その恥ずかしさが大事。ケイさんは恥じらいを大事にする」
この悪魔、なんでそんなことまで知ってるんだ……




