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第17話

「アルガス帝国? “また”何かのトラブル?」


「“また”ですか?」


「そうよ、“また”よ。聞いているわよ。いろいろ首をつっこんで、トラブルに巻き込まれているみたいね。楽しそうでいいじゃない。あと、恋愛要素が入れば、私が小説にしてあげたいくらいよ。……でも、どうして女の子に手を出さないの? ベルは仕方がないにしても、今、一緒に住んでいる子だっているのに。キアラちゃんだったかしら、ケイ君にかなりほの字なんでしょう」


 ここでも、“また”か。やっぱりトラブル体質なんだろうか。……あと、いつ本題に入れるんだろう? 1階の賑わいを見ると、この世界でも女性は恋愛話が好きなんだろうけど。


「キアラさんは、困っているときに助けた俺に依存してるだけで、しばらくして落ち着けば離れていきますよ。あとの二人は、食べ物に集っているだけでしょう」


 あの2人には、キアラさんが友達を作れる、きっかけをくれたので、感謝もしているんだけどね。


「冷静で面白くないわね。たぶん、君ならその状況から恋愛に持っていけると思うのに……まぁいいわ。本題に入りましょう。ケイ君、先に言っておくけど、私も“闇魔法”については知っているからね。使えないけど、きっとケイ君よりも詳しいから、無理に隠して話さなくてもいいわよ」


「そうなんですか!」


 たしかに、使える人は俺を入れて4人か。存在自体は認識されているし、文献や伝承に残ってないだけで、個人的に知っている人や研究している人が居てもおかしくはないか。


「そうよ、古代遺跡を研究するためには、“闇魔法”は外せないからね。まず、ケイ君は古代遺跡についてどこまで知っているの?」


「ほとんど知りませんが、今では文献や伝承が残されていない3000年前に滅んだ文明で、遺跡を調べるために各国が戦争や紛争を繰り返していることぐらいです」


 グレンさんに聞いたことだけどね。学園の授業でも、その程度だった。扱いに難しいから気をつけるように言われただけだ。


「一般常識程度ね。それと黒龍の森に遺跡があったでしょ、見つけられなかった?」


「たぶん場所はわかるんですが、近づいていません。なので、遺跡かどうかわかりません」


「そうなの、どうして近づかなかったの?」


「まず、俺の戦闘能力では、魔物の群れを倒すことも避けることできません。あと、元狼人族族長のグレンさんから災いの素だと聞いていたので、近づかないほうがいいような気がしたんです」


「普通なら賢い選択ね、ケイ君なら問題なかったと思うけど。アルガス帝国のこともあるし、今、上流階級で知られている古代遺跡についての情報から説明するわね。ケイ君も見たことがあると思うけど、冒険者ギルドや教会にある石版は、古代文明の遺物なの。あと、勇者の聖剣や聖女の杖なんかもそうだと信じられているわね。それに、今ある大国の首都は、ほとんど古代遺跡の上に作られているはずよ」


「石版に関しては確定なんですね。でも、勇者の聖剣や聖女の杖、首都にある遺跡は確定ではないのですか?」


「石版は、私が研究して、私が作っているから間違いないわ。でも、聖剣や杖、首都にある遺跡に関しては、研究されているのか、本当にあるのかもわからないわ。各国はあると主張しているけど、公開も利用している形跡もないからね」


 石版って、ミシェルさんが作ってるの! 


「石版は、ミシェルさんが研究して利用しているんですよね。じゃあ、どうして各国は利用している形跡すらないんですか?」


「始めにも言ったけど、“闇魔法”の術式が係わっているからよ。“闇魔法”の理論を理解してないと何もわからないはずよ」


「じゃあ俺はもちろん、術式化の過程のわからないベルさんにも理解できないのですか?」


「そうだと思うわ。たぶん、サタン君も無理ね。理解できるのは、私とラルス君だけよ」



「ここまでは大丈夫です。では、なぜアルガス帝国が遺跡に関係あるんですか?」


「少し違うわ、関係ないから問題なのよ。アルガス帝国は遺跡を持っていないの。だから、強引に国土を拡大して、遺跡を探しているのでしょうね。見つけても使えないのにね」


「なるほど、遺跡は災いの素ですね。……石版について、もう少し聞いても大丈夫ですか?」


「ええ、いいわよ。何を知りたいの?」


 やっぱり、ミシェルさんは何か隠しているんだろうね。あまり自分から話そうとしないし。マウイ様みたいにもっと素直なら楽なのに。


「冒険者ギルドにある石版は、どこの支部とも情報を共有しているのですか? もし共有しているのなら、情報を統括しているところがあるのですか?」


「面白いことを聞いてくるわね、前世の記憶かしら。その通りよ、各支部、情報は共有されているし、統括している母体は、この図書館にあるわ」


 母体?……SFに出てくるマザーコンピューターみたいなもんかな。ということは、この図書館って重要施設なんじゃないの!


「じゃあ、ランクアップの評価や査定もその母体がやっているのですか?」


「その通りよ。もちろん、教会の石版も同じね。情報は共有されているし、母体はこの図書館にあるわ」


「もしかして、ミシェルさんは、犯罪者の名前の赤色を白色に戻したりできるのですか?」


「私には、無理ね。ラルス君ならできるはずだけど、彼はやらないわね。たとえ、ケイ君や私が赤色になってもね」


「それは、なんとなくわかります。……ミシェルさんにできなくて、ラルスさんにできるということは、“闇魔法”を使えることが必要だということですか?」


「そうよ」


「では、“闇魔法”って何なんでしょうか?」


「その質問では、答えられないわ。もう気付いていると思うけど、私は全てを説明するつもりが無いわ。ケイ君の知識や経験が追いつけば、いくらでも話してあげてもいいと思っているけどね。聞きたければ、もっと具体的に聞いてちょうだい」


 まだ、知るには早いってことか、いや、そんなニュアンスでもないか。


「では、神は、教会が使っている石版の母体を作った人なんですか?」


「そう考えてもいいし、母体自体が神だと考えてもいいんじゃないかな。まぁ神はいないと考えてもいいけど」


 くそっ、答えになってないし。ちょっと、攻め口を変えるか。


「冒険者ギルドにある転移ゲートは、誰が作ったんですか? 家にあるゲートはサタン様が作ったらしいのですが」


「うふふっ、上手く来たわね。冒険者ギルドの転移ゲートはラルス君と私よ。Sランクの冒険者にしか使えないように制限を設けているのは、戦争に利用されないためね。サタン君が作れるのには、理由があるの。ケイ君は、魔族についてどこまで知っているの?」


「まず、デス諸島を統治していて、今はサタン様が統治者です。このアーク大陸では、差別対象で、戦争もしていましたが、今は不可侵条約が結ばれています。そして、以前は交易も盛んに行われていましたが、今では交流が少ないです。ただし、アーク大陸からの移住は可能ですが、そのためにアーク大陸の統治者達からは良く思われていません。

 次に、魔族は体内に魔石を持っています。これは、魔物と魔物でない生物との違いと一致するため、差別原因の一つになっています。しかし、ステータスカードを持っているので、人であることは間違いありません。

 あとは、比較的魔力の保有量が多い種族であるということぐらいでしょうか」


「それは、アーク大陸の人が持っている魔族に対する見解ね。まだ、足りないわね。ヒントをあげるわ。魔族の歴史を調べなさい。そうすれば、“闇魔法”に対する見解も広がるわ。簡単なのは、サタン君に聞くことね。ケイ君になら教えてくれると思うわ。……人生は長いわ。そんなに焦らなくても、すぐには変わらないわ」


 もうあまり話してくれそうにないか……



「話が変わりますが、シュトロハイム王国のアラン様がアルガス帝国のパーティに参加していたのですが、アラン様の意図がわかりますか?」


「そうね、あの子のことだから、ステータスカードの名前の色に対して意識の低いアルガス帝国に亡命でも考えているんじゃない。シュトロハイム王国にいれば、何不自由なく過ごせる上に、王にまでなれるのにね。何を考えているのかしら。ケイ君のほうがわかるんじゃない」


「そう言われるとそうかもしれませんが、名前の色に対して意識が低いとは、どういうことですか?」


「それはね、あの国は、未だに侵略と内乱を繰り返しているのよ。だから、赤色や黄色の人が大勢いるので、あまり気にする人が少ないのよ。まぁ、それだけ国内が乱れているということでもあるんだけどね」


「そんな国に、亡命を考えますか? あっ、わかりました。彼なら考えそうです」


 アランは、きっと、勇者は勇者でも、違う勇者なんだろう。


「そうでしょ、普通は考えないけどね」



 このあと、ベルさんとの生活について話していたけど、帰ることにした。


「今日は、ありがとうございました。魔族の歴史について調べたら、また来てもいいですか?」


「もう帰るの? 別にいつ来てもいいのよ。私は暇だからね」


 きっとこれ以上、古代遺跡や“闇魔法”について話してくれないだろう。……ピザ生地も待っているからね。




 家に帰り、ピザ生地を確認すると、いい感じに膨らんでいた。


 膨らんだ生地を、きれいにした作業台に乗せ、軽く捏ねて中の空気を抜く。その生地を100gずつ取り分け、めん棒で伸ばしていく。10inインチのサイズにしたければ、90gで十分だが、細かいところはいいだろう。

 そして、伸ばした生地を、250℃に温めた“オーブン魔法”で1分30秒ほど、焼いていく。こうして焼いておくと、伸ばした生地を重ねてもくっ付かないので便利だ。


 今日は、シンプルにトマトとバジルのピザとチーズガーリックピザだ。今のところ、チーズは、ハードタイプの乾燥させたチーズしか見たことないので、塊りを削って粉チーズにして使う。


 まず、トマトとバジルのピザだ。伸ばした生地に朝仕込んだピザソースを塗り、スライスしたトマトを乗せ、バジルを千切って乗せ、削ったチーズを乗せ、250℃の“オーブン魔法”で7分焼く。あとは、切れば完成だ。俺には無理だが、もし500℃ぐらいまで温度上げれば、40秒ぐらいで焼ける。薪で焼くピザ釜は凄いね。


 次に、チーズガーリックピザだ。伸ばした生地に削ったチーズを乗せ、250℃の“オーブン魔法”で7分焼く。焼きあ上がったピザにガーリックチップを乗せる。あとは、切れば完成だ。簡単だが、これが一番美味しいと思う。完全な主観だけどね。


 キアラさん達が、喜んでくれるといいのだが。


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