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第4話

 学園に入学してから1ヶ月が経ったころ、学校の帰りにギルドに寄った。最近は夜のパーティの後片付けの依頼しか受けてないので、汗も拭かず、依頼の申請を済ませてから、家に帰るようにしていた。



「ケイ様、ちょっとこちらへ」


 カミラさんに呼ばれて、面談室に通された。……何かやらかしただろうか、俺。


「ケイ様に、指名依頼が来ています」


「指名依頼ですか!?」


「そうです。何をされているのですか? 最近、迎賓館などのパーティの後片付けの依頼で、指名依頼まではなかったものの、ケイ様に頼んで欲しいという方が増えてはいたのです。そして今日、指名依頼が入りました。それも相場の10倍です。普通では考えられません。なぜなのでしょう?」


「魔法で頑張ったからですか?」


「魔法?……なるほど、ケイ様はいろいろ変わったオリジナル魔法を使われますからね」


「あの10倍って、多くないですか?」


「それだけの価値があるのでしょう。その日はどうしてもケイ様にお願いしたいようです」


「依頼主を聞いてもいいですか?」


「ロベルト様です。ご存知ですか?」


「はい、最初の依頼でお世話になって、その後も何度か依頼を受けていますね」


「どうなさいますか?」


「指名依頼は断れましたよね?」


「はい、何の問題もありません。断りますか?」


「確認をしただけで、ロベルトさんの依頼なら受けますよ」


「そうですか、ありがとうございます。あと、この指名依頼を達成されますと、Eランクにランクアップされます」


「そういうものなのですか?」


「本来であれば、ケイ様の受けられていた雑用系の依頼では、FランクからEランクへ上がることはありません。しかし、今回の指名依頼とその他総合的な審査の結果、問題ないと判断されました。実際、ケイ様の戦闘能力はEランクでも問題ありませんので、当然の結果であると思いますよ」


「ありがとうございます。俺は都市から出れないのであまり意味がないのですが、認められるのは嬉しいですね」



 そして、3日後の指名依頼当日。今日は急がしそうなので少し早めに行った。表の庭もライトアップされている。大勢のお客様が来られているのだろう。


 もう裏門の守衛さんは顔パスだ。


「ケイ君、お疲れ~」


「お疲れ様で~す」


 これでいいのだろうか? そして、建物の管理人室に入ると、


「失礼します、ケイです」


「ケ、ケ、ケイ君、助かったぁ」


「おい、ロベルトさん! ケイ君を呼んでいたのか! やるじゃないか。もう無理かと思ったよ。いや、そんなことよりも洗い場に急いでくれ。取り皿とシルバーが足りないんだ!」


「シェリーさん? って他の方も?」


「そうなんだ、みんなヘルプで来てるんだ。俺たちの首だけじゃ済まない事態なんだ。急いでくれ!」


「わかりました。取り皿とシルバーですね!」


 大変なことになっているようだ。シェリーさんをはじめ、いくつかの迎賓館の管理責任者さんたちが泣きそうになっていた。


 

 洗い場に着くと、


「「「ケイ君!」」」


「「「なんで、お前らケイ君知ってんだよ!」」」


 執事服の3人が、ハモっている。3人とも違う迎賓館の執事さんだ。


「とりあえず、取り皿とシルバーですね。すぐ洗います!」


「「「そうなんだ、頼む!」」」


 また、ハモっている。仲がいいのだろう。



 今日は、遅くなった。少し前に日付が変わってしまっているが……


「ケイ様、お疲れ様です。今日は大活躍だったみたいですね」


 ギルドに着くと遅い時間なのに、カミラさんが出迎えてくれた。


「もう知っているんですか?」


「はい、私も警備責任者として依頼を受けていましたので。今日は三大大国の一つ、エイゼンシュテイン王国の国王の孫娘のお披露目パーティだったので、多くの護衛や警備の依頼がギルドに来ていたのです。危うくパーティが失敗するところだったようですよ」


「よくわからないですが、感謝はされました」


「そんなものですよ。本来、冒険者の仕事は裏方であってそんなに華々しいものではないのです。……あっそうでした。こちらが報酬と新しいギルドタグです。お確かめください」


 無事、報酬と新しいギルドタグをもらうことができた。報酬はなんと5万ルリだ。普段ロベルトさんところの依頼の報酬は3000Rなのに、10倍どころではなかった。20%引かれて4万Rになるんだけどね。あと、タグの縁取りが白色から黄色に変わった。



 次の日、学園で、昼休みの時間、知らない人から呼び出しをくらった。勇者の息子が呼んでいるらしい。良いことは続かないね。


 ちなみに俺はこの学園の中では、ぼっちだ。ほとんどの人が国や種族でグループを作っているのでどうしようもない。……こともないんだろうけど、努力をしていないので言い訳ができない。


 この学園には学食があるみたいだ、初めて知った。一階は広い空間にたくさんの机やイスが並べられ、大勢の学生で賑わっている。


 食堂の入り口すぐ横の階段を、呼び出した人の後について上っていくと、突然、高級感あふれる廊下に変わった。扉が並んでいるので個室になっているのだろう。

 一番奥の扉から部屋の中に入ると、大きなテーブルに5人の人が右側に端から並んで座っている。俺も促されて5人の隣に座った。……この5人も前世の記憶持ちかな?

 向かいの席には誰も座ってないが、その後ろに怖そうな騎士が並んで立っている。隣の人と話せる雰囲気ではない。そのまま1時間ほど待っていると、こちらの席は15人になった。向かいには、まだ誰も座っていない。授業はどうなるのだろうか? 結構イラついてる人もいるようだ。



 それから30分ほどして扉が開いた。4人の少年少女を引き連れた、金髪碧眼で刺繍の入った制服を着たイケメンが笑顔で入ってきた。全員立ち上がって頭を下げたので、慌てて俺もそれに倣った。皆お辞儀をしているので、コイツが勇者の息子なのだろう。そういえば、コイツ王族だったね、忘れていたよ。


「みんな、楽にしていいよ。僕たちは仲間だ。同じ故郷を持つ仲間じゃないか。まずは、座ってくれ」


 いつオマエと仲間になったんだ。俺はこの学園で、まだ一人も友達がいないんだよ。


 みんな座り始めたので、俺も座った。


「みんな知っての通り、僕は、アラン・シュトロハイム。勇者の息子だ。そして、あと3年すれば、僕が勇者だ!」


 はじめて名前を聞いた。有名なのだろうか? それと、あと3年ってどういうことなんだろう? あとでフレディさんに聞いてみよう。……あっまだ続くみたいだ。


「僕が確認したかぎり、君たちは前世の記憶持ちだ。間違いないね」


 皆、頷いている。俺も頷いた。


「あの爆発で殺されたのだよね?」


 皆、頷いている。俺も頷いた。


「よしっ少し聞いて欲しい。僕たちは、望まずこの世界に来た。そして、帰ることもできない。しかし、僕たちには、力がある。そして、知恵と知識を持っている。こんなちっぽけな世界に縛られず、新しい世界を作ろうではないか! 創造しようでないか!……そのためにも、まず、国を作りたい。そして、君たちの力を、知恵を、知識を、僕に貸して欲しい。もし協力してくれるのなら、できるかぎりの望みを叶えよう。金でも、地位でも、女でも……僕には、それを叶える力がある。信じてついてきて欲しい!」 


 何人かは共感して目を輝かせているようだ。でも殆どの人はどん引きしている。俺もそうだが……


「すまないが、みんなのステータスカードを確認させて欲しい。これからの計画には必要なことなんだ。……お前たち、行けっ!」


 アラン達の後ろにいた騎士たちが、俺たちのステータスカードを確認している。それを紙に集計しているのだろう。


 ステータスカードで思い出し、俺の魔眼で見たアイツら5人うちの1人の名前が黄色なんだが、犯罪まがいのことでも気付かずにやっているのだろうか?


 集計が終わり5人が話し合っている。



「大変申し訳ないが、ケイ君、アリサさん、リムルさん、君たち3人の力は、まだ必要ではない。今日はもう帰ってくれて構わない。しかし、僕たちの国が出来たら、ぜひ来てくれないか。歓迎しよう」


「「「失礼します」」」


 ヤバい、扉の前で次期勇者に頭を下げているとき、顔が綻びそうになった。横の二人も笑いを堪えているのだろう、震えている。顔を上げたとき、ちらっと見えただけだが、何人かが羨ましそうな顔をしていた。


 扉を出て、3人とも無言で、そして、早歩きで食堂を出た、その瞬間、


「「「お疲れ様でした」」」


 3人の声が揃った。そして、笑った。学園の中で初めて笑ったかもしれない。


「ケイさんでいいですか? 私はアリサ、この子はリムル。少し話をしませんか?」


「呼び方は呼び捨てでも何でも構いません。それと、二人とも授業はどうしますか?」


「私たちは、授業中に呼び出されて先生も知っているし、もう中途半端だから今日は休むわ。リムルもそれでいいでしょ。ケイさんはどうしますか?」


「俺もいいですよ。少しは担任の先生が事情を知っているし。あと、どこで話をしましょうか? ここは、目立つでしょう」


「私たちは女子寮だから、ケイさんは入れないし。ケイさんどこかいいトコ知りませんか?」


「……俺の家ぐらいしか思いつかないんですが?」


「ケイさんの家、寮じゃないんですか ?あっケイさん奴隷だから契約主さんの家ですか? でも私たちが伺っても大丈夫なのですか?」


 アリサさんが俺の首に視線を移しながら聞いてきた。


「寮といえば、寮なんでしょうけど、大丈夫ですよ」


 もし寮なら、俺が寮母? いや寮父?


「じゃあ、お願いします。行きましょう」



 3人で学園から家に向かって歩きだした。道すがら話した内容だけど、自然と前世や過去の話でなく、学園に入ってからの話になった。無意識に警戒していたのだろうか? もう“探知魔法”にも怪しい反応はないのにね。


 少しまとめると、アリサさんは、人間族で、黒髪黒目だ。服飾コースで、裁縫と算術のスキルを持っているらしい。リムルさんは、ドワーフ族で、茶髪茶眼、見た目が幼女だ。鍛冶コースで、鍛冶と算術のスキルを持っているらしい。……生産系のコースでも、制服はスカートじゃないんだね。


 クラスの自己紹介では言わなかったが、隠す必要がないので俺のスキルも伝えた。


 そして、家の前に着いたとき、二人が堅まった。


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