プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
「始めまして、私は“神界転生部異世界転生課”担当のエリスです。よろしくお願い致します」
「はぁどうも、“シンカイテンセイブイセカイテンセイカ”ですか?」
「はい、そうです。あなたは髭右近啓太郎さまでよろしいですね」
「はい、そうです」
なんでこの人、俺の名前を? っていうか、ここはどこなんだ? いやその前にこの人、綺麗すぎるだろう。
俺は混乱していた。真っ白い8畳ほどの部屋のまんなかで、エリスと名乗った金髪美人のお姉さんとテーブルを挟んで座っていることはわかるのだが、なぜこんなところにいるのか、いくら記憶探っても思い出すことはできなかった。
「綺麗すぎるだなんて……あっ今からいくつか確認と説明をさせて頂きますがよろしいですか?」
「えっ今、口に出てた?……構いません。よろしくお願いします」
やっべぇ焦りすぎて思ってること口に出ちゃったよ、でもまぁ本当のことだしいいか。
「いいえ……私たちは、あなたの世界で言うところの神の使いである天使ですから人の心ぐらいは覗くことができます」
「へっ?」
天使? ちょっと危ない人なんだろうか? 宗教の勧誘?
「私は危ない人でも宗教の勧誘でもありません、落ち着いて聞いてください……あなたは今から50日ほど前にお亡くなりになられました」
「あっ!」
思い出した、某イベントに参加してたら、いきなり目の前で爆発が起こったんだった。
「それで、死後の世界で、転生で、天使なんですね?」
「落ち着いていますね、急にお亡くなりになられたのに、ご理解が早くて助かります」
「さすがに、あの爆発では死ぬでしょう?」
「まぁ確かに、あの爆発で約37万人の方が亡くなられましたから」
「じゃ、エリスさんもお忙しいのではないのですか?」
「お気遣いありがとうございます。しかし、この転生部では時間を止めることができるので、順番にご説明させて頂くだけですから、大丈夫です」
「なるほど、ではよろしくお願いします」
37万人かぁ……でもなにが爆発したんだろう? その辺りも説明してもらえるのかな? あと時間を止めるか……便利だね。
「便利ってそれだけですか、まぁ便利ですけど……ではまず確認させていただきます。髭右近啓太郎さま、享年38才でお間違いないですね?」
「はい」
「転生先ですが、異世界になります」
「えっ異世界!」
あぁ最初にエリスさんが言ってたっけ異世界転生課って、いやまず聞こう。
「ありがとうございます。啓太郎さまの世界でいうところの剣と魔法のファンタジー、勇者も魔王も存在します。文明的には中世ぐらいと考えてもらえれば結構です。本来寿命で亡くなられた方は、そのまま記憶をリセットされて転生されるだけなのですが、今回、啓太郎さまのように、不慮の事故で亡くなられた方には、特典を付けることができます。そのために、この『神界転生部異世界転生課』が存在しています」
「はい」
なるほど、最近はやりのチートな能力、勇者召喚、みたいな感じかな?
「いえ違います、先程申しましたように啓太郎様の記憶は、なくなります。そしてなんの努力もなしに優れた能力を身に付けることなどできません。これはどの世界でも、どんな才能あっても不変です。世界の理です。まぁ啓太郎さまはご理解頂いているようですが……」
「はい、なんとなくは」
まぁ努力は必要だよね、死ぬ前の世界でもそうだったし。
じゃ特典って何だろう?
「そうですね、特典の説明をさせていただきます」
「お願いします」
うん便利だね、心を覗く能力っていちいち喋らなくてもいいし。最初はちょっと怖かったけど。
「啓太郎さまは、来世で何かしたいことはありますか? 例えば先程考えられていた勇者や魔王、聖女、貴族、お姫様、騎士、商人、冒険者、農民、奴隷、前世でのご職業料理人など何でも構わないのですが」
「勇者にもなれるのですか?」
「はい、そういう運命を付けることが特典になります。ただ啓太郎さまには、勇者の才能がありませんので、どれだけ努力しても肩書きだけの勇者にしかなれません。たぶん勇者になっても不幸だと考えられます」
「たしかに肩書きだけの勇者はイヤですね。じゃ王様や貴族も統治能力がなければ、不幸になりそうですね」
「絶対ではないのですが、かなり分の悪い賭けになります。あと啓太郎さまの才能、来世ではスキルですが、後天的に料理が出る可能性が高いです」
「なるほどたくさん料理を作れば、スキルが現れるのかな。他にもありますか?」
「あとは算術も出る可能性が高いです。……スキルですが、前世での行いによって決まります。例えば、剣道の有段者であれば剣術のスキルが、啓太郎さまのように調理師であれば料理のスキルが発現する可能性が高いです」
「はい」
うん確かに料理以外で人に誇れるものはなかったよな。一応算盤と暗算は2級だったけど……でもまぁあるだけましか。
「そうなのです。前世の行いによって、スキルがない方も居られるので……それから運命ですが、環境と考えて頂けると分かりやすいかも知れません。王様であれば王子として、魔法使いなら魔法使いの弟子としてなど、生まれ、成長していける環境になります。現実は啓太郎さまの才能と努力に左右されます」
「わかりました、じゃ魔法使いになりたいです。あと白いご飯を食べたいです」
どうせ大した才能はないし、せっかく魔法のある世界に行くなら、才能がなくても魔法使ってみたいし、あと白御飯ははずせないよね。
「魔法使いですか? 啓太郎さまの前世には魔法がなかったのでスキルがないですし、いくら努力しても初級程度しか習得できませんがよろしいですか? あと白い御飯ですが、こちらは少しですが稲作もあるので努力次第で可能です」
「お願いします」
おぉ初級程度でも使えるんや、お米もあるし、いいだろう。
「わかりました。では魔法使いになれて、お米に出会えるような運命を探してみます。しばらくお待ちください」
へぇ運命とは環境みたいなものか、なるほど農奴なんかに生まれたら死ぬまで農奴だろうし、環境って大事だよね。
「えっ!、あれっ!」
「どうしたのですか、エリスさん」
なんかトラブル?
「……なるほど、大丈夫です。啓太郎さま、来世のあなたに闇の加護が発現致しました」
「闇の加護?」
加護? スキルとは違うのか?
「はい加護です。スキルの上位互換だと考えていただいて結構です。この闇の加護ですが、闇魔法の習得の難易度がかなり下がります。ただ来世には闇魔法の使い手が3人しか居られません。さらに習得方法や鍛錬法が一切残っておりません」
「ということは、闇魔法は使えないということですか?」
なにこの上げて落とす感じ、まぁもともとなかったものだし、っていうかなんでいきなり闇の加護が?
「すみません。まず闇の加護の取得条件から説明させて頂きます。この加護は、前世で同族を30万人以上殺された方に発現します。ただ今回は特別でして取得者が啓太郎さまにお譲りになりました。あまりこういったことはないのですが」
「30万人以上ってことは、あの爆発ですか? えっ私が殺したってことになっているのですか?」
「いえ違います。元取得者の方が望んでおられるだけです。あの事件ですが、加害者の方が魔道具を作ってしまったようです。啓太郎さまの元の世界には確かに魔法はありません。でも魔力はあるのです。加害者の方は幼い頃から毎日少しずつ瓶のなかに魔力を溜めており、あの日啓太郎さまとぶつかり、瓶を落とし爆発が起こりました。さすがに知らなかったとはいえ、罪のない37万人もの方を殺された加害者をそのまま転生させることはできません。罪を償っていただくために、今は別の者が話をしているのですが、認めようとされないのです。それどころか、あのときぶつかった啓太郎さまが悪いと思いこんでおられるのです。こちらとしましても危険な闇の加護を加害者に持たせたまま転生させるよりも、本人の希望どおり闇の加護を啓太郎さまへと移させていただきました。ですので、啓太郎さまには何の罪もございません」
「良かった。……あと気になることが、闇の加護は危険なのですか?」
言ったよね、エリスさん。危険な闇の加護って。
「闇魔法が危険なだけで、闇の加護は危険ではありません。加護があっても努力しなければ闇魔法は使えませんから」
「じゃ転生後、闇の加護があることによって、命が狙われるとかはないのですか?」
「はい、通常、加護は本人にしかわかりません。自己申告すれば追われるかもしれませんが、まず誰も信じないでしょう」
「わかりました。で話を戻しますが、闇魔法は習得できないのですか?」
よかった変なもの貰ったのかと思ったよ。あとこれ大事だよね、危険らしいけど。
「大丈夫です。闇魔法はもちろん他の魔法も習得、鍛錬できる運命が出来上がっております。あとこの運命なら半年後には、お米に出会えるはずです」
「ありがとうございます、そんなに早くお米にも出会えるのですね」
さすがエリスさん、お米覚えてくれていたよ。
「最後に運命ですが、外的要因によって変わることはありません。でもご自身の意思によっては、変えることが可能ですのでお気をつけください。といっても、今、話していることも転生すれば忘れてしまうのですが」
「お気遣いありがとうございます。運命は自分で切り開けるのですね」
「以上で確認と説明を終了致します。なにか質問はありませんか?」
「いえ、大丈夫です」
「では転生して頂きますので、ゲートまでご案内いたします」
あぁもうエリスさんとの会話も終わりかぁ。あの服恥ずかしくないのかな? 完全に透けてるし、今なんてお尻の割れ目まで透けてるし、実際、気になって半分以上頭まわってなかったんだよね。あと10才若かったら、会話、成立しなかっただろうな。
「あの啓太郎さま、煩悩がだだ漏れですよ」
「す、すみません」
あぁそうか、エリスさん心を覗けるんだった。でも考えるなといわれても無理だし、目を閉じても頭に焼き付いてるし、どうすれば……
「構いません、啓太郎さまが悪いわけではありません。悪いのはこの制服考えた上司です。いくら頭に焼き付いても、転生すれば忘れてしまうのでお気になさらず。……ではこちらのゲートを潜っていただけますか?」
「これが転生ゲートですか?」
なんだろう? 空港の金属探知機みたいなゲートだな。入ればいいかな。
「えっ!」
俺は突然眩い光につつまれた。