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始まりは災禍の予兆から

何も無い真っ暗な空間に二人の少女がいた。

一人は全てを明るくしてくれるような淡い桃色の髪をした少女。そして向かいあっているのは、影に隠れながらも輝きを失わない決意をもっているかのような銀色の髪をした少女。

二人は対照的な存在のようにも見えた。


「本当は、私にはこんなに大きな輝きを持つ資格はない」

真っ赤な髪をした少女は真っ直ぐに銀髪の少女を見つめていた。


「ならば、その全てを奪い、私が貴女になりましょう」

銀髪の少女は強い口調でそう答えた。銀色の髪が穏やかに揺れていた。


****


夢を見ていた。

何かの暗示なのかと思っていたけれど深く考えないことにした。


「サンライト……スフィア=サンライト!」

声が聞こえる。ああ、うるさいなあ。良いでしょ眠いものは眠い…。ふっと外を見る。相変わらずの青い空だ。こういう日は空を眺めながらボーッとしていたい気分になる。


「聞いているのか、サンライト」

「……はい」

しぶしぶながら顔を上げると、目の前に険しい顔をした先生がいたので、そっと目をそらした。白い顎髭を生やした初老の男性。それが、エリファス先生だ。普段は温厚な性格だけど怒るとやたら面倒くさい。


「魔法の基礎属性を答えてみろ」

ムッとした表情で問題を出された。

はいはい、この程度の問題ね。楽勝楽勝。


「<火>、<水>、<土>、<風>であり、個人個人で使える魔法は1種類と言われていますが、稀に2種類以上の属性魔法を使える人もいます。また、皇帝の血筋の者は、<光>の属性魔法も使うことができ、そして公王の血筋の者は<闇>の属性魔法を使います」

無愛想な顔で言ってやった。ちなみに私は<火>属性の魔法を使える。


「…正解だ。もっと真面目にやれば、いずれは帝国内でトップの魔道士になれると思うんだがな…」

「指揮官クラスにはなりたいですけど……そこまでは興味ありません」

「もったいないな」

ああ。どうでも良い。心底どうでも良いと思った。


「それより、講義の続きをお願いします」

「お前にそれを言われるとは思ってなかったよ」


ラファエル魔法学校。そこは未来の帝国軍の中核を担う魔法師を育成するための学校だ。能力順にS、A、B、C、Dランクに格付けされており、私はSランクとして将来を有望視されている存在だ。鍛えように寄っては、1個師団を壊滅できるほどの魔法師になれるらしい。けれど、正直そこまでできるつもりはない。国に貢献する意識が低いのではないかと言われると、ごもっともであるが…。



講義が終わったあと、外でぼーっと草むらに寝そべりながら空を眺めていた。心地良い風が吹いている。長い桃色の髪が、そっと私の顔にかかる。そっと払ったあと、おもむろに『扇』を手にとった。装飾が施されていない鉄製の扇。これが私の魔法を発動させてくれるもので、ちょっと変わってる媒介だねと以前に言われたことがあった。魔法の媒介は人それぞれだ。銃であったり剣であったり、はたまた自身の拳であったり。その人に合ってるものを使うようになっている。


そして、何かの本で読んだけれど、『和服』というのが好きでそれを着ている。だから、周囲と比べると私はちょっと浮いている存在だ。別段、気にはしていないけれど。やっぱり着るものは可愛いものが良い。たとえそれがちょっと変わっていたものだとしても。



「スフィアちゃーん」

ぼーっとしていると声をかけられた。


「ああ、マリか」

私の数少ない友達の一人。

黒のショートカットをした明るく元気で活発で私の正反対のタイプ。そこに、ちょっと憧れがあるのかもしれない。


「すごいよね。スフィアちゃん」

「簡単よ。あの程度の問題」

「そうなのかな…? でも、さすがSランクだよね」

「………」

常に優秀じゃないといけないのよ…私は…。


「…どうかしたの?」

「いや、なんでもない」

「そういえばさ、公国と戦争になるって本当なのかな?」

戦争か。嫌だな。できれば起こらないで欲しい。


「さぁ…どうかしらね…。インバート公は領土の拡大を狙ってるみたいだしね。

帝国は豊かな領地で成長した国。それに対して、公国は商業や工業で成長した国だから、さらに自国の発展を望むなら、領土の拡大は必須なのよ。互いに持ちつ持たれつの関係を築いてはいるけれど、それがどこかで崩れたら…」


そう、どこかで崩れたら。例えば、突然の奇襲攻撃とか。

本当に戦争が起こらないことを願うばかりだ。


「スフィアちゃん詳しいね」

「勉強していれば当然のことだけど」

「……そうだね」


マリは、ちょっとバツが悪そうな顔をした。


「あ!」


何かを思い出したように声をあげた。本当に表情がコロコロ変わる面白い娘だ。


「なに?」

「スフィアちゃんは、2属性の魔法が使える人が、この学校にいるって知ってる?」

ちょっと期待を込めた声で言われる。


「知らないけど」

「魔法銃をつかってる人なんだけど」

魔法銃か…。使ってそうな人いっぱいいそうだけど…。


「名前ってわからないの?」

「うーん……。ごめん、忘れちゃった」

肝心なことを忘れるとういことを改めて知った瞬間だった。


「で、なんで私にそんなことを?」

「もし、知ってるなら紹介して欲しいなーって」

はぁ。そういうことか。強い人には憧れるのは当然のことよね。


「まぁ知らないなら良いや。でさ、スフィアちゃん、あと勉強を教えてほしいんだけど…」

マリは、上目遣いで手を合わせる。


「……今度、なにか奢るという条件付きで」

「やったー! ありがと、スフィアちゃん」

はぁ、こういう表情で頼まれると断りづらいんだよなぁ。


髪がゆれる。季節は春。さらさらと穏やかで暖かな風が吹いていた。


初めての小説を書きました。色々と拙い部分が見られると思いますが、暇つぶし程度に楽しめていただけたのなら嬉しい限りです。

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