興味のない人
「あっ、やっと起きてくれた! ねぇ、こんなところで何してるの? 風邪ひいちゃうよ」
寝起きのオレには刺激の強すぎるほど大きく明るい彼女の声
「・・・・・・・・・・・・」
うるさい、そう思いはしたがあえて何も言わなかった
「わかった! 迷子なんでしょ? はたまたドラマチックに生き倒れとか?」
ニヤニヤとオレの顔を覗き込んでくる
だから、視野に彼女の姿が嫌でも写った
20代前半って感じで
透き通るような青い瞳、短くカットされたオレンジ色の髪
あまい何かの花のような香水の匂い
白とピンクの混ざったヒラヒラとしたワンピース
あえて例えるならお姫様って感じ
いまどき何処で育ったらあんな服着たがるようになるのやら
「・・・・・・そんなとこ」
いろいろとツッコミどころは、今はとにかくどうでもよかった
まずこの人に興味が無いし、めんどくさい
オレにとってはそれが行動原だからだ
「こら、寝るなー! アタシの話聞いてよー!」
唇を吊り上げながら訴えてくる
「なんで?」
「なんでって・・・。せっかく会えたんだからお話しようよ♪」
お話ってアンタ。子供じゃあるまいし
「いや、オレいま忙しいからさ。また後にしてよ」
「じゃあ、また後でならいいのね」
「そうだな」
「約束だからね、後でお話しようね」
じつに実の無い会話だった
彼女のその言葉を境に場は急に静寂に包まれた
この階には人がいない
そういえば彼女以外には一人も見ていない、子供も大人でさえも・・・・・・
もう彼女の声はまったく聴こえない
オレは気を取り直してまたしばらく、瞼を閉じた