第1話 召喚されて異世界へ
「勇者様が……召喚されましたぞ姫!!」
「姫様はあちらでお倒れになっております!!」
「何!? 姫様を自室へ運び出せ!!」
あ、うん。なんでしょうねこの光景は。人が忙しなく部屋中を動き回っている。凄く綺麗な服を着た金髪の女の子が倒れている。
なんでこうなったのか、順を追って説明したいと思う。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
五月中旬の日曜日。俺たちの通うとある県立高校では、体育祭を行っていた。一学年8クラスで、それぞれのチームカラーで競い合っていた。俺が居るのは黄色ブロックだ。現在の種目は、高得点を狙える「ブロック対抗リレー」である。俺はチーム席で自チームの応援をしていた所で急に視界がブレて、気が付いたら周りを知らない人達に囲まれていた。
俺を囲んでいる人達は、不思議な格好をしていた。白い布のようなものを、全身を覆う様に羽織っている。見た感じだと聖職者か何かの人達で、羽織っている布のようなものには、豪華な刺繍が縫いられている。全身を金と白で身を包む人達が、俺を見て驚愕の顔をしている……いや、俺達を見て、だ。
今頃になって気が付いたのだが、ここに来たのは俺だけじゃなかったようだ。俺を含めて男2人、女3人の5人だ。一人知っている奴が居るのだが、スルーの方向で……。
「勇者様が……召喚されましたぞ姫!!」
「姫様はあちらでお倒れになっております!!」
「何!? 姫様を自室へ運び出せ!!」
はい、説明終了。
見知らぬ人達が慌てていた。勇者というのは多分俺達の事だろう。俺達を喚んだのが姫で、その姫は俺達を召喚したから魔力切れやらで倒れてしまったのだろう。ま、良くある話だ。
異世界からの訪問者(て、言っても俺達連れてこられた)である俺達を放ったらかしにしないで下さらない? 何か哀しくなってきたんだが……。
「あの、すみません」
突然、凛とした声音が俺の鼓膜を刺激した。反射的に声の主の方へと顔を向ける。そこにいたのは、俺と同じ学校規定のジャージを来た、すらっとした体型、一目見たら女性と勘違いする程整った顔立ちをしている男と名乗っている、「音無楓奏」十七歳であった。俺はこいつを知っている。
音無楓奏は、俺が通っている高校の副会長だ。仕事をテキパキとこなし、整った顔立ちに温厚な性格は、女子には人気があった。だが、そんな凄い奴である楓奏に、とんでもない秘密があった。
こいつは女の子である。そう言われたらそうかも、と思うかもしれないが、彼女が自分から男と名乗っているため、皆は男だと思っている。一言で言えばボーイッシュなので、男でも女とでも間違えられる。俺の通う学校の生徒会長である女性も、楓奏が女ということを知らない。これを知っているのが、楓奏の家族と俺だけであった。
「此処は何処なんですか?」
楓奏が慌てている人達に向かって聞こえるように声を張る。此処が何処だかなんて分かりきっている事ですよ。そう、異世界に決まってるじゃないか!! やっと、異世界に来れたんだな俺。夢が叶った。叶うはずのない夢が今叶ったのだ。
やべ、目から水が流れ出てきた。それだけ嬉しいってことだな。
「こ、此処はブレイブグリード城の地下にある召喚の間と呼ばれている場所です」
うん、楓奏の質問の仕方が間違いだったな。あれじゃあ、今ここに居る俺たちの場所が何なのか? と、聞いている様なもんだ。
「ブレイブグリード城? 聞いたことのない城だな」
「なんですと!? ブレイブグリード城を知らないですと!?」
「ああ、聞いたことがないな」
「ここアールセル大陸の中でも、最も大きく、それで最も美しいと言われている城ですぞ!!」
「アールセル大陸っていうのも聞いたことがない」
それもそうだろ!! だって俺達異世界人ですから!!
「そういえば勇者様は、昔から異界の者を喚び出すと……それならば、何も知らないのもおかしくはないですな……」
「異界? 此処はボクたちが居る世界とは違う世界なのか?」
「はい」
「なるほど、分かった」
「なんでそんなにあっさりしてんの!?!?」
はっ!! 勢いでツッコんでしまった。やばい、俺の存在が楓奏にバレてしまう!!
「ボクにツッコんだ奴は誰だ!!」
やばい、楓奏さんがお怒りのようだ。あいつは変なところでキレるおかしい奴だからな、取り扱いには気を付けなければならないはずだったのに……。
「ボクに対してツッコミをしてもいい奴は――」
辺りをキョロキョロと探す楓奏だったが、俺がバレるのは時間の問題だった。やがて俺を見つけた楓奏の瞳が大きく見開かれた。楓奏は驚いている様子で、俺は心底嫌な顔をしていた。
「双魔君!? ど、どうしてここに!?」
そう、こいつは俺のことが苦手だ。必ず話しかけると慌て出し、顔を赤くして俯いてしまう。口調もはっきりとした物言いが、急にゴニョゴニョと聞こえない音量で話し出す。普段との差があり過ぎて、どれだけ俺のことが苦手なんだと思っている今日この頃。
「楓奏と一緒に召喚されたんだろう」
「えっ? そうなのか!? それは良かった!!」
「何が良いんだよ……俺は嫌なんだが」
「な、なんでそんな酷い事を言うの?」
「あー、ごめんごめん。本当は嬉しいんだよ」
「わ、私も嬉しい!!」
なんで、こいつはこんなにも嬉しそうなんだろう? あんなに笑顔になって……可愛いな……こいつ!!
「ゆ、勇者様が二人……」
聖職者のような格好をした男性が硬直している。それも無理はないだろう。だって勇者が二人も召喚されたのですもの、それは驚きますわ。だけど、あと三人召喚されているのですけどね……。
「えっと、異世界から召喚されてこちらに来ました神代双魔と言います。歳は十五です。決して私は勇者ではないのであしからず」
初対面の人には自己紹介が基本だろう。当たり前の事を当たり前のようにやる俺は……すげぇカッコイイな……。
「は、はぁ……。わ、私はこの国《グレイズレイン》唯一の聖職者である『アルモデルス=アルモナガール』という者です。聖天属性という神の魔法を使う事が出来ます」
へえー、国唯一の聖職者なんだ。この国がどの位の規模なのかは知らないが、国に一人ってのは少ないと思う……。
はっ!? さっき魔法とか言ってなかったか!?
「この世界には魔法が使えるのか?」
興奮していたのだが、それをなんとか押さえ込んであくまで冷静に聞いた。
「ええ、ありますとも。もしや、勇者様達の世界には魔法が無かったのですか?」
「ああ、魔法が無い代わりに科学という物があった」
「科学が……。こちらにも科学はありますよ」
「なに!? 魔法と科学がある世界なのか? そんなこと聞いたことがない」
「ですが、実際に双方存在しております……」
「それはすごいな……」
魔法と科学が存在する世界……なんてワクワクする世界なんだ!! どうせ亜人やら魔物やらがいるのだろう。やばい!! 冒険したくなってきた!!
「ところで勇者様方、後ろのそれは何ですか?」
手を使い俺達の後ろを指す聖職者さん。後ろになんかあるのか? 確認しようと振り向く。
そこにあったのは先程、共に召喚された女性が三人。まるで、纏めて捨てられた粗大ゴミのように積み上げられた彼女たちの姿だった。どうしてそんな召喚のされ方をされる!? これは奇跡的な召喚だぞ!? 俺は素早くジャージからスマホを取り出し、連写機能が付いているカメラアプリを起動し、ひたすら指を連打! 連打!! 連打!!! 二十枚くらい連写したところでアプリケーションを終了し、電源ボタンを押してポケットにしまった。カシャカシャと撮影音が鳴ってしまったが問題ない。……これは盗撮なのか? 否、違うだろう。もし、盗撮だったとしても、国家権力はここまで届かない。俺の勝ちだな。
「今のはマジホですよね?」
「何ですかマジホって!?」
「これの事ですよ」
そうやって取り出したのは、金のカバーをつけた黒いスマホだった。なんだあれ……カバーの趣味悪っ!! この聖職者さんはセンスの欠片もないな。って、この世界にスマホだと!!?一体全体どういうことだってばよ!!
「あれ、もしかしてマジホ知らないんですか!? あれもマジホだと思ったのですが……あっ! 勇者様方の世界の物だったんですかあれ?」
「あ、そうです。スマホって言って、通話やメールが出来るんですよ」
「あ、こちらと同じなんですか。でも、これはマジホ、《マジックフォン》と言って、魔力を原動力にしている魔導具なんです!! これ、もの凄く高かったんですから!!」
いやいや、そんな事誰も聞いてないからね。でも、この世界は魔法科学という科学で、俺達の世界、地球よりも技術力は上で、何もかもが進歩している。と、聖職者さんから色々と聞いた。なんか負けた気がした。
「皆女の子だったぞ、あれ」
残りの召喚された者たちの所に行っていた楓奏が、親指を女の子の塊の方に向けながら、こちらに戻って来た。確認してきた事を聖職者さんに話す楓奏。話を聞いた聖職者さん――アルモデルスさんは、何かを考えた後、取り敢えず来賓室へ行きましょう、と言ったので、来賓室へと向かう事にした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
豪華な装飾をされた廊下を歩いていると、前にいたアルモデルスさんが止まった。どうやら此処が来賓室らしい。扉には日本語で『来賓室』と書かれていた。……いやいやいやいや!! なんで!? なんで日本語なの!? いやさ、なんで異世界に来ているのに言葉が通じるのだろうか、と思っていたけどさ、まさかアルモデルスさんが日本語話してたとは思わなかった。しかも字も日本語とか、なんかダサい。
「こちらでお休みになられて下さい。姫様を連れて参るので、御寛ぎ下さいませ」
「はあ」
「ああ、分かった」
姫様だってよ姫様。姫様の顔が見えなかったが、すごく可愛いのだろう。それが王道であり、当たり前だからだ。
しかし、この部屋も凄いな。廊下も装飾が凄かったが、この部屋は、申し訳程度に物が置かれており、苦痛に感じない。この配置は中々いやらしいな。
や、やっぱり楓奏と二人きりは落ち着かない。ソファーに座りながら、この部屋の感想を頭の中で考えていたのだが、やはりこの気まずさは収まらない。
チラッ、と楓奏を見ると、ソファーに座りながら、顔を俯かせて何かを呟いている。じゅ、呪詛かなんかを唱えているのでしょうか楓奏さん!? 私何かしましたか!? したのなら謝らさせて下さいごめんなさい!!
「ね……な、なあ、神代」
「えっ? な、なに?」
「こうやって二人で話すのは久しぶりだなっ!!」
「そういえばそうだな。楓奏は生徒会の仕事があったから。……こうして話すのもゴールデンウィーク以来か?」
「あの時の旅行はとても楽しかったなあ……ねえ、また二人で行きたいねっ」
「俺はもう懲り懲りだ。お前が女なのに男と言うから、一緒に男湯入らなくては行けなくなった時はとても焦ったぞ」
「な、なんでそんな話をするんだよ!!」
「その後、俺がお前をおぶって浴槽まで行った時は色々と危なかった。主に下半身が」
「か、下半身ッ!!」
「はは、顔真っ赤にして可愛い」
「かかかか可愛いっ!?!?」
「おいおい、あんま大声出すなって」
「だって双魔君が可愛いって言うから~」
なんだこれ!? 俺たち付き合ったカップルみたいじゃんこれ!! えっ!? 違和感無いんですけど……。
「うっ、うんっ……ほぇ? ……えっ!? ここどこ!?」
騒がしかったのだろう、共に召喚された女性達の内の一人が起きた。
ショートカットの茶髪に、つり上がった鋭い瞳。何故か瞳は蒼い。スラリとしたスタイル。触れたら切れてしまいそうな雰囲気を身にまとった女子高生。服装は何故か水着。水泳部なのだろうか?まあ、体育祭をやった日が休日だったし部活かなにかだろう。そんなことより胸がでかい。一体、何を食べたらあんなになるんだ? 柔らかそうで、動きに合わせて揺れ動く胸は最高だった。ご馳走様です。
彼女の身体を穴があくほど見ていたからだろう、彼女は顔を真っ赤にしながら体を引き寄せ、まるで俺から胸を隠すように丸まり、しゃがみこむ。ああ、なんて可愛らしい生き物だろうか!!
「あまりこっちを見ないでくれ!! 気持ち悪い!!」
「いや、男なら絶対に見てしまうぞ、その体。だって綺麗だから。スタイルが良くてつい見とれてしまった。その事で不快な気持ちになったのならば謝罪をしよう」
「ふぇ!? 綺麗ってそんなことにゃい。ふぁ!?」
やばい。めちゃくちゃ可愛いのだがどうしよう。なんかつり目の猫みたいで愛らしい。何この愛玩動物!! ペットにしたい!!。
「ペットにしたい!!」
「ぺぺぺペットぉ!? ……出来れば恋人が良いなぁ」
「あ、いや、今のは気にしないでくれ!!」
「え? あ、うん。分かったよ」
(嬉しいのか嬉しくないのか分かんないやぁ)
そんな事を考える女の子であった。
「そ、そうだ!! 自己紹介でもしよう。俺は神代双魔、呼び方は双魔でいい。歳は十五、好きな食べ物は鶏の唐揚げ、特技はこれと言って無いが、強いて言うなら反射神経や運動神経、身体能力などが異常な程高い、って事ぐらいだな……」
「わ、私は水蓮寺波音と言います。双魔さんと同じく十五歳です。水泳部に入ってます。泳ぐ事が大好きで、温泉に行くと必ず泳いでしまいます」
「ははっ、これからよろしく、波音」
「いいいいきなり呼び捨てですか!? 何を考えてるんですか双魔さん!? 」
「いや、同じ地球から召喚された者同士仲良くしよう、ってことだったんだが……」
「そ、そうだったんですか!? なんか勘違いしてすみません」
「いやいや、良いんだよ気にしなくて。俺は気にしてないから落ち込まないで」
「双魔さんって優しいんですね……。……好きになっちゃいます」
「え? 最後の方が良く聞こえ――」
「何なんだ!? 二人でイチャイチャして!!」
あ、楓奏が忘れられてたからキレだした。イチャイチャって、そんなことしてないのだが……。
「だ、誰なんですか双魔さん?」
「えーと、俺の通っている学校の副会長の――」
「音無楓奏だ」
「だそうだ」
「へぇー、凄くかっこいいですね」
「あ、ありがとう」
「双魔さんとはどういう関係ですか?」
「双魔君は……こいび――」
「親友だ!!」
こ、こいつ!? 頭が可笑しくなったのか!?
(おい、お前は男のフリをしなくちゃいけないんだぞ。分かってんのか?)
(当たり前だろう。一種のジョークだと言うことが分からないの双魔君!!)
(アホか!! 分かるわけないだろう!! こいつ何口走ってんのかと思ったよ!!)
「あの!! 何をコソコソ話しているのですか?」
「いや、何もないぞ何も。怪しい事なんて何一つない!!」
「はあ、それなら良いんですが……」
「ちょっと波音さん。君はさっきからなんなの? 双魔君の方ばっか見てにへら~、ってだらしない顔して気持ち悪い」
「そ、そそそんな顔してません!! 音無さんの見間違いです!!」
「いいえ、ボクはしっかり見てましたー」
「大体何ですか!! なんで親友である音無さんがグチグチ言うんですか!? 可笑しいですよ」
「あぁー、もう!! さっきからうるせーんだよ!! しばくぞゴルァ!!」
いつの間にか口喧嘩に発展していた楓奏と波音。徐々にヒートアップしていく口喧嘩。そこに、耐えきれなくなり、召喚された女性二人目が遂にキレだした。
言葉遣いが悪い女の子ってなんか良いよな……。
「人様が寝ている所で何うるさくしちゃってんのお前ら!! ここを何処だと思ってんだよ!! オレの縄張りの屋上だぞ、屋上!!」
この子、此処が屋上じゃなく異世界って気付いてないみたいだね。いや、それは気付かないとしても、此処が室内だとは気付いて欲しかった。
「屋上じゃないけどね!! 室内だけどね!!」
突如話し掛けられたからだろう、ビクッと身体を震わせてから、バッとこちらに顔を向け、その眼で俺を捉えた瞬間、その鋭く細められた目は大きく見開かれた。
「な、なんでこんな所に男がいるの!? 確か此処は女子高だったはず!? な、なんで女子高に男が――」
「取り敢えず周りを見て!!」
「えっ!? な、何で周りを見なくちゃいけないのよ――」
「ここどこ? 屋上じゃない!! ここどこなの!!」
やばいなあの子。なんか情緒不安定な感じがしてきた。男の俺を見た瞬間にあんな反応されると、なにかあったのかと思ってしまう。ヤンキー口調も理由があるのかもしれなくなってくるな。
「取り敢えず落ち着いて。俺は神代双魔って言うんだ。出来れば君の名前を知りたい」
「オ、オレは焔坂緋姫ってゆーもんだ!! 文句がある奴は片っ端からぶっ飛ばすぞこのやろー!!」
「だ、だから落ち着いてって。君には何もしないから。絶対に」
両手を上に挙げてバンザイのポーズをとり、危害を加えないことを証明する。それで、少しは落ち着いた緋姫を、女子二人が宥めながら自己紹介をした。
「な、なんだよお前!? 男なのか!?」
「ボクは男だ!! 失礼だな!!」
「けど、あまり男だと感じないし、それに発作も起こらない……」
「発作? 君は男が苦手なのかい?」
「えっ? あ、うん。小さい頃にね、お父さんに虐待を受けたの。……その恐怖が頭から離れなくて、毎晩毎晩夢に出てくるんだ……。何でお前は男に産まれなかったのか、と」
「虐待って……女の子にそんなことをする奴がいるなんて……!!」
「音無さんっ!? 何か体からオーラみたいのが溢れてますよっ!?」
「え? あ、本当だ。これは何だ?」
緋姫の辛い過去の話だったのに、波音がぶち壊しやがった……!! なにあの子!? まさか天然なの!? だったら恐ろしい子よ!!
それに、楓奏から溢れ出ているオーラ、というよりも陽炎のようなモノは、恐らく【魔力】だろう。元々、生物が持っている魔力が異世界に来たことによる影響により、本来持っている魔力が覚醒したのだろう。
「あー、それは多分魔力だろう」
「魔力って何だ?」
「ゲーム等に出てくる魔法を使うためのモノ。また、便利な力そのもの」
「双魔さんって、色々と物知りですよね」
「まあな、伊達にサブカルチャーを好きになっている事はあるな」
「双魔さんって、アニメとかマンガとか見るんですか!?」
「なんでそんなに驚いてるの!?」
「いえ、ちょっと意外でして……」
「そんなに意外かな? 俺がアニメとか見るの?」
「ええ、だってバリバリの体育会系だと思ったので」
「うん、確かに体は鍛えてるから筋肉がついてるけど、俺は帰宅部だよ!!」
「勿体無い!! そんなかっこいい容姿をしているのに!!」
「……俺、かっこよくないから……」
「まさかこの人は自覚が無いんですかっ!?」
「そう、こいつは昔からそうなんだよ――」
そこで、コンコン、と扉を叩く音がし、中にアルモデルスさんが入ってくる。
「勇者様方、姫様をお連れしました」