吉祥院先輩と出会い
Q乙女ゲームとは
「そう、蓮が迷惑をかけたみたいだね。代わって僕が謝るよ」
「あ、いえ。大丈夫です」
「そうそう。れーちゃんだってマカロン食べれて幸せそうだったし」
「蓮」
「…ごめんなさーい」
まったく反省してないだろう御子柴くんを吉祥院先輩が諌める。よくぞ言ってくれました、吉祥院先輩。御子柴くんはもう少し反省すべきだ。
「それよりですね、御子柴くん」
「んー?」
「れーちゃんって何ですか?」
ずっと気になっていた私のあだ名らしき呼び方。御子柴くんは急に悪戯を思いついた子供のような顔をした。
「何って、玲奈ちゃんでしょ?だかられーちゃん」
「……私達仲良くないですよね?」
「だって叶人さんが聞いちゃったから、ゲームは無効でしょ、もう」
元々ゲームはしてないけど、今の私の言い分だと確かにそうなる。
「……それ、人前で呼ばないで下さいね」
「しょうがないなぁ」
そんなに呆れた声を出されても、そうしなきゃ私まで怖がられちゃうから仕方ないじゃん。
「鈴木さんは案外普通の子なんだね」
「案外って……。能力者じゃないし、当たり前ですよ」
「それもそうだね」
何を考えているのか欠片もわからない表情で吉祥院先輩が口元を綻ばせる。
「それより叶人さんは何しに来たんですか?」
「ん?たまたま前を通りかかったら声が聞こえたからね、確認の為に。案の定どこかの誰かさんが使ってたわけだけど」
「うっ…………」
「まぁ今回は不問にしてあげる」
「まじっすか!ありがとうございます」
さてと、そう溢して吉祥院先輩が立ち上がると椅子が床と擦れて音を立てた。
「僕はそろそろ行くけど二人も早く帰りなよ」
「はい」
「はーい。仕事、頑張って下さいね」
「君もね、蓮」
ひらひらと緩く手を振って去る吉祥院先輩を後目に、身構えていたほど怖そうな人じゃなかったなーなんて考える。その思いが御子柴くんにも伝わったのか、喉で微かに笑っていた。
「いい人そうでしょ」
「はい。御子柴くんよりは確実に」
「……結構ずけずけ言うよね、れーちゃん」
私が持ってる前世のゲーム知識は見た目と名前、それからおおまかな性格くらいだけど、御子柴くんがおしとやかな主人公にどんどん惹かれていくのは覚えてたから(単純だなーって呆れてたし)思ってることは言わないとね。それにもし、万が一!私が御子柴くんを好きになったとして、その時知識を利用して好きになってもらったと思いたくもないし。
「大人しそうな顔してるのにさぁ」
「それ遠まわしに地味だって言ってます?」
「あ、バレた?」
「バレバレです」
いい加減な人だけど話すのは楽しいななんて思っていたら、御子柴くんもそう思ってくれていたのか背もたれにもたれながら笑った。
「なんか楽しいわ」
「私も意外と楽しいですよ」
「ね。能力者と非能力者なのに、なんでだろう」
「御子柴くん…………」
なんでそんな悲しそうな顔してるんですか。
「……変な顔してますよ」
「んはは!やっぱれーちゃん最高」
ふっきれたように笑う御子柴くんは、どこかまだ悲しそうだった。
Aこれじゃないやつ
次回から本格的に恋愛っぽくする。予定。頑張りまする。