第3章〜準備〜
「そうと決まれば、早速準備に取りかかろう!」
ラビットさんは満面の笑みで私の腕を掴み、馬並のスピードで本棚に向かって走り出した。
「ちょっちょっちょっと待った!!ぶつかる!!本棚にぶつかる!!転ける!!マジで死ぬ!!」
私の必死の制止の声はラビットさんには届いていなかった。
私の2度目の人生はここで終わるのか…。と覚悟を決めて目を閉じた。しかし、いつまで経っても痛みはやってこない。恐る恐る目を開けてみるとそこには、今まで居た360度本棚の部屋ではなく、長テーブルが一つだけ置かれている部屋が広がっていた。
「どうかした?顔色が悪いけど…。」
「…。少し死ぬ覚悟をしていたのですが…。」
「此処は私の世界だから、滅多なことがない限り死なないよ。」
ラビットさんは笑顔で答えてくれた。
「じゃあとりあえず、マウスの所に行って服を今日中に仕立ててもらって、すぐに着替えようか。」
「服を仕立ててもらうのは分かるのですが、すぐに着替える必要性が見当たらないんですけど…。」
現在私は西ノ宮中学の制服を着ていて、別に汚れているわけでもないので着替えなくてもいいのでは?と思っていた。
「う〜んとね、別にその服でもいいんだけど…。万が一グリムとかに襲われたら困るから、マウスの防御魔法の織り込まれた服の方が安心なんだよね。」
また意味の分からない言葉が出てきたが、後で質問することにしてスルーした。
「では、マウスさんの所まではどうやって行くんですか?」
またラビットさんの馬並のスピードについていかなくてはいけないと思うと憂鬱だった。
「それでもいいんだけどね〜。」
「えっと…。なんで私の心の声が聞こえてるんですか?」
「心読んだから。別に私が走ってもいいんだけど、そうすると徹夜して3日は走らなきゃいけないんだよね〜。」
思考が一時的にストップしてしまった。再び思考が起動した時に考えてみた。
あの速さで三日徹夜しないと行けないんじゃ、どうやって今日中に行くのだろう。
「デュラハーン!!馬車出して〜。」
少し間の抜けた声が部屋中に響いた。
「主、馬車の用意が出来ました。」
壁から、スタイルの良い女性が現れた。自分の首を持って。……、さぁ息を大きく吸って
「キャ―ーー―!!」
悲鳴炸裂。何かの本でデュラハンについては少し知っていたが、実物は初めてです。とても綺麗な人なのに、自分の首を持っているだけですごく恐いです。
「……。主、私は何か恐がらせることをしましたか?」
「……存在?」
二人で冗談を言いながら、楽しそうにアハハとか笑っているのがとても不気味で仕方ありませんでした。
「じゃあ、馬車でマウスの所まで行きますか。」
「そうしましょう!エンヴェル、リーマ。」
ドドドと地響きのような音がしたと思ったら、壁から馬が二頭、馬車を引っ張って現れた。しかし二頭とも首がない。…、さぁ息を大きく……。そこでラビットさんに口と鼻をおさえられた。
「あぁー、もうその下りはやったからいいの!!さぁ馬車に乗って。」
「ぜぇーはぁー…。鼻をおさえる必要ありませんよね!?マジで死ぬかと思…うわ、押さないで下さいよ!!」
無理矢理馬車に詰め込まれ、出発した。エンヴェルとリーマは普通の馬では考えられない程のスピードで駆けていた。
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