第2章〜決意〜
改行のミスと亀並の投稿スピードで、すみません。
目を覚ますと、360度本棚に囲まれた図書館のようなところにいた。
「やっと来てくれた。」
鈴を鳴らしたように澄んだ声が後ろから聞こえた。振り向くとそこには、シルクハットを深くかぶった白い髪の少女がいた。
「此処はどこでしょうか?」 「此処はどこでもない、パラレルワールドの中心だよ。」
意味不明な返答が返ってきた。白い髪の少女がシルクハットを取ると、蒼と紅の瞳が見えた。
それは私の記憶の一番最後に刻まれている顔と同じだった…。
「……!!あなたは何者ですか!?」
「私はパラレルワールドの支配人の一人、ラビット。それよりも、どこか痛む所はないか?なにせ車に轢かれた後、すぐに連れてきたからな…。」 意味が分からなかった。脳がきちんと起動してくれない。私が返答せずにいたら、ラビットさんが心配そうな顔をして近づいてきた。
「やっぱりどこか痛むのか?ドックのやつめ、また治療魔法手抜きやがったな…。」
耳元でブツブツとラビットさんが呟いているが、言葉の最初から最後まで意味が分からなかった。パラレルワールドの支配人?連れてきた?治療魔法?全てが分からなかった。けど分からないながらも考えてみた。考えて考えて考えてみた。そして一つの結論にたどり着いた。
「そっか…。これはあの夢なんだ…。」
私の呟きにラビットさんが反応した。
「そうかそうか!!やっぱりあの時感じた視線はお前さんのものだったのか!!これほどまでに素質があるとは思わなかった!!」
これは嬉しい誤算だ。とラビットさんは私を見て、笑いながら言葉を続けた。その笑いと言葉は私にとって、不気味なものでしかなかった。
即刻この場を離れようと周りを見渡したが、壁は全てが本棚で埋まっていて、扉一つなかった。天井を見上げても先が見えぬほど高く、床は一枚の大理石でできているようでスキマ一つないもので、状況を打破するカギは一つも残されていなかった。
「失敬。あまりにも嬉しくてね。心配しなくてもいいよ、取って喰うような真似はしないから。」
「…。そんなこと言われたって、信じませんよ。とりあえず、私を元の場所に返して下さい!!」
ラビットさんは笑うのを止め、真面目な顔で私を見つめてきた。「元の世界に戻りたいのか?戻ってもお前さんは、事故に会って死んでるんだよ。だから今戻ったら、痛みに苦しみながら死ぬだけだよ。それでもいいの?」
「え…。」
「それなら、君は素質が大いにあるから私の跡を継いでほしいのだが…。」
またブツブツと何かを呟いているが、声が小さくて聞き取れない。まだ脳はきちんと起動していないが、少ないヒントで状況を整理することに努めた。
パラレルワールドとは多分、多重世界のことだと思う。そして目の前のラビットさんは、その多重世界を管理しているということだろう。会話に出てきたドックという人(?)も多分ラビットさんの仲間か何かで、多重世界に関わっているんだと思う。最後に治療魔法のことについて考えてみたが、全然意味が分からなかった。
ここで状況を整理するのを止めた。我ながらよくもこんな状況で冷静に分析していて驚いた。
「む…。落ち着きを取り戻したようだな。」
ラビットさんが、見つめてくる。
「で、お前さんはどうする?元の世界に戻り、痛みに苦しみながら死ぬのか…。あるいは私の跡を継ぎ、パラレルワールドの支配人となってくれるか…。道は二つに一つ。お前さんが好きな方を選択するといい。」
私は今、ラビットさんから選択肢を二つ提示された。一応、選択する方は決まっている。が、それを声にするのが恐い。
「……一つだけ聞いてもいいですか?」
「?何でも聞くといいぞ。」
心のどこかでつっかかっていたことを声にした。
「パラレルワールドの支配人になったら…。兄貴に会えますか?」
「あぁ、会えるよ。」
その言葉を聞いて私は自分の選択を、本当は声にするのも恐いけど述べた。
「私は……。パラレルワールドの支配人を継ぎます。」