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多重世界  作者: 欠陥製品
2/5

第1章〜始まりの朝〜

「まだ生きているからもうしばらく待つよ…。」

そんな言葉を聞いて私は起きた。時計に目を向けると針は5:30を示していた。

「少し早いかな…。」

そっと呟くと床に足を付いた。顔に片手をあて夢の内容について考えてみた。

最近ずっと同じ夢を見てるから、何かの暗示なのだろうか?夢は体の不調を表していると言われているから、どこか悪いのだろうか?

考えてみても疑問しか浮かばなかった。

「とりあえず、どう時間を潰そうかな…。」

もう一度時計に目を向けたが針は10分しか進んでいなかった。

「仕方ない。朝ごはんでも作りますか…。」

ベットから立ち上がり、一階のキッチンに向かった。

いつもなら両親のいるリビングも今日はいない。今、家にいるのは兄貴と私の二人だけ。両親は商店街の福引きでハワイ旅行が当たり、大喜びでバカンスに行ってしまった。

私が朝ごはんを作り終えたら、タイミングを計ったように兄貴が起きてきた。

「…。おはよう、妹よ。」 「最初の沈黙はなんだい?バカ兄貴。」

「バカとはなんだねバカとは。」

「テストで学年最下位のやつだから、バカって言ったんだよ。」

「くっ…。何も言い返せない…。」

兄貴は少しうつむきながら席に着き、私の作ったハムエッグにかぶりついていた。私もフライパンを洗い終えると席についた。

「バカ兄貴や。相談に乗ってはくれぬか?」

「バカをカッコいいに変えるか、1000円くれたら、相談に乗ってやってもいいぞ。」

兄貴は無関心な様子でハムエッグを食べ終えて席を立った。

「俺、今日バイトだから7時くらいには帰る。だから夕飯作っといて。」

「ハァ知らねーよ!!今日は兄貴が作る日でしょ!?このあいだもそんなんでばっくれやがっただろ!?」「このあいだのは嘘だけど今回は本当だよ〜。じゃあそういうことで行って来まーす。」

「おいっ!待てバカ兄貴!」服を掴んで止めようとしたが、兄貴はそれをヒラリとかわし嵐のように家を出ていった。兄貴がいなくなると沈黙が襲ってきた。時刻は6:30。

「少し早いけど、そろそろ私も家を出ますか…。」

点けっぱなしのテレビを消そうとふと画面に目をやった。テレビでは星座占いがやっていた。

「今日の最下位はみずがめ座のあなた!とても不運な一日、車には気をつけて…。」

「下らない…。」

まだ占いは続いていたが、強制的に止めさせた。リモコンを投げ捨て、玄関に足を向けた。今日はお気に入りのスニーカーで学年に行こうと考え、実行した。

まだまだ時間があるので、通学路をのんびりと歩いていたら、後ろから声をかけられた。

「おはよー。すまんが今日も宿題写さしてくれ。」

「またやってないのか?だからお前はいつまで経ってもバカなんだよ!!」

「そう喚き散らすなよ。せっかくの美人が勿体ないぞ。」

「……おだてても無駄だ。バカに宿題は見せないと今決めた。」

「今かよ!!……じゃあどうすれば宿題見せてくれるんだ?」

ハァ…、と私は溜め息をつくとバカのために止めていた足を動かした。

信号機は青色。後ろからついてくるバカを無視して私は横断歩道に足を踏み入れた。

その瞬間、周りの風景が一気に歪んだ。

「ハァ?なにこれ?」

私は状況が飲み込めず、その場に立ち尽くしていた。

「おいっ!!雨晴(あまはれ)轢かれるぞ!!」

バカの声が聞こえた瞬間、歪んでいた風景が元に戻った。しかしそれはもう遅かった。

信号機は赤色。私が見えていないように車が横断歩道に進入してきた。 私のわき腹に車のボンネットが衝突する。鈍い痛みとともに私は数秒間宙に浮いていた。

そんななか私が最後に見たものは、蒼と紅の色の違う瞳を持った少女の笑みだった。

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