プロローグ〜後継者〜
多重世界一パラレルワールドには、その全てを管理する「支配人」と呼ばれる者が5人いた。
「おいっ!××××、お前まだ後継者見つかってないのか?」
「×××、てめぇの減らず口はいつになったら治るんだ!!」
「うわー。一応女なのに怖いね〜。責任者と話してる時みたいに優しくなれないもんかね〜。」
「一辺死ね!!」
罵詈雑言の数々を並べているのは、14歳から16歳に見える少女と少年である。どこにでもいるような少女と少年なのだが、持っている雰囲気は別格であった。
少年は今までのおちゃらけた雰囲気を消して、真顔で少女に話しかけた。 「××××、お前だってこの世界で14年の歳月を過ごしてる。生きすぎだろ?何がなんでも…」
「そんなことは分かってる…。だが素質を持った人間がどれほどまでに少ないかお前も分かってるだろ?」
少女は優しい眼差しで色の違う両目を少年に向けた。
「私もこの世界で14年過ごしたのは長すぎたと思ってる…。」
「……。」
「だけど、この支配人の仕事は素質を持った奴にしか出来ないものだ。だから妥協は出来ない。」
「けど、この14年の間に素質を持った奴なら結構いただろ?」
「あぁいたさ…。けどそいつらは優しすぎるから、任せられない。」
少年は溜め息をつくと、少女の肩に手を置いた。 「俺は後継者を見つけた…。他の3人だって見つけてる…。お前も早く見つけて、元の世界に戻れよ…。」
「お前は戻るのか?」
「俺は戻って人生をやり直す。」
そうか、と少女は呟いて目を少年からそらした。 「一応私も後継者は見つけている…。だが、まだ生きているからもうしばらく待つよ…。」
少女の呟きが沈黙を生み出した。