ドアを開けた
周防さんに繋がると状況を話した。階段から落ちた事、返事が無い事。周防さんはすぐに車で行くから部屋にいるようにと言っていた。
奏也を部屋へと担ぎ込む。180cmの男性にしては軽かったのかもしれない、が火事場の力のせいかもしれない。
荷物も適当にかき集めた。
震えが、止まらない。
頭の中は真っ白で何かを考える余裕もない。
チャイムが鳴って周防さんの顔が見えた。2人で奏也を車に運んだ。
綾乃も車に乗ろうとするのを周防さんが制止する。
「大丈夫だから、とりあえず落ち着いて家にいて。何かわかったら連絡するから」
綾乃は軽く頷くと車のテールランプを目で追い続けた。
部屋に戻って上着を羽織る。7月なのになぜこんなに寒いのだろう。
閉じたままの携帯電話を見つめる。その日は携帯が鳴る事は無かった。
翌日学校を初めて休んだ。
電話が鳴ったのは14時くらいだった。
周防さんは明るい声で修理がほぼ終わった事を告げた。特に異常な点もないと思うが、一応後少し調査すると言っている。
良かった。ようやく安心すると睡魔に襲われた。
夕方過ぎに目が覚めた。今日1食目の食事を作る。
最近ずっと料理して無かったな。奏也の料理している後姿を思い出す。
本当に良かった。自分が突き飛ばしてしまったその前に、奏也に対して恐怖を感じていた事など忘れていた。
いつもより長めにゆっくりとお風呂に入り、出た後にアイスを食べた。夕方まで眠っていたせいでまだ眠くなかった。1人でボーっと過ごしているのも久しぶりだった。
丁度0時になろうとする頃、電話があった。名前が表示されているディスプレイを見て慌てて電話に出る。
「もしもし、奏也大丈夫なの?」
「はい、全く問題ありません。それよりもお休み中で無かったでしょうか?」
平気だよ、起きてるよと答える。
今まで奏也の方から話題を振ってくる事などなかったのに今回は違った。
「今日は七夕です。星が綺麗ですよ」
日付が変わって確かに7月7日になっていた。
織姫と彦星が見たい。そう思ってベランダに出たが周りの建物でよく見えなかった。
仕方ない、外に出てみよう。念の為1枚だけ上に着て玄関のドアを開けた。階段を降りて行くとアパートの入り口の方に小さな光が見える。
光が段々と大きくなる。誰かいるようだ。携帯の光のようだった。
さらに近づいて行く。と、急に綾乃は走り出した。
「奏也っ!」
駆け寄って気づくと抱きしめていた。大丈夫?ゴメンね。ゴメンね?子供のように泣きじゃくった。
先程も問題無いとお伝えしたじゃないですか。そう言って奏也は綾乃の頭を撫でている。
見上げるといつもの笑顔があった。でも昨日と違う。なぜか全く怖くなかった。
「いつまでこうしてらっしゃるおつもりですか?私は一向に構いませんが」
微笑みかける奏也の目は意地の悪いものに見える。なっ、なっ、なっっ!
「ち、違うわよっ!今AIのセーブ中なんだから大人しくしてなさいよっっ!!馬鹿!!!」
そういってどうにか誤魔化した。
1分後くらいに、これでよしっと言って奏也から離れた。声上ずってなかったかな?
静寂の中、下を向いて足わすらしている綾乃に奏也が語りかける。
「1日振りに会えた乙姫様、一緒に星を見て頂けますか?」
そう言って奏也は星空を見上げた。
物語序盤のクライマックスシーンでした。
結構ドヤ顔で書いてしまいましたが、お気に召して頂けましたでしょうか(笑)
はしょってるせいで感情移入できているか不安ですが、どうにか・・・
若干 文中語句の ど から始るタイトル縛りに後悔してきました^^;