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どう思うか

 「メリークリスマース!」


 クラッカーの音を合図に2人だけのクリスマスパーティが始った。私の誕生日の時もそうだったけど、いつもお祝いは日付が変わるタイミングから始める。


 12月24日 午前0時。これから2人で過ごす1度目の、素敵なイヴが始るのだ。


 目の前のトナカイがシャンパンの栓を抜いてくれている。ポンっと弾けた音がするとコルクは天井にぶつかり床に落ちてきた。奏矢はそれを拾いに立ち上がりテーブルの上に置いた。


 


 奏矢はトナカイの帽子をかぶっている。私がドンキで選んだのだ。2人で買いに行った時私が奏矢はこれね?とトナカイを差し出すと、奏矢は一瞬何か言いかけて飲み込んでいた。嫌だと言いたかったんだろう。でもすぐ後にいつもの調子でかしこまりました。と言っているのを見てクスクス笑ってしまった。


 私はこれでいいやーとサンタの帽子を選んだ。だって私が主人で奏矢が従者だもの。関係性がピッタリだった。それで終われば良かったんだけど……。奏矢が余計な物を手に取った。下着がきちんと隠れるかどうかも怪しいようなミニスカサンタの全身衣装を持って来たのだ。スカート自体あまり履かないのに、こんな超ミニとは生まれてこの方縁が無かった。


 もちろん嫌だった私は、変態っ!馬鹿じゃないのっ?と奏矢を罵ったのだけれど、奏矢は笑いながらトナカイ帽子を眺めている。こいつ……交換条件かっ!笑顔が憎らしいものに見えてきた。


 でも奏矢が選んでくれた初めての物でもあった。少なくても私に着て欲しいと思ってるんだよね?似合うと思って持ってきたのかな?普段奏矢の要望なんてないんだもの。仕方無く受け入れる事にした。これを着て見せてあげるのがクリスマスプレゼントだからねっ!


 そんな訳で私は今、ミニスカサンタ衣装に身を包んでいる。でも着てみてから本当に後悔した。少しでも動いたら見えてしまうじゃないか!もちろんさっきのコルクも奏矢に拾ってもらう。私が拾いにいったら大変な事になるのはしなくともわかる。


 それに恐らく…… 奏矢は数回撮影をしていた。例のごとく固まっていたもの。どうしてこうなんだろう。でも今日だけはいいよ。特別。頑張ったんだからちゃんと見てね。





 薄いやや黄色味を帯びた液体がグラスに注がれていく。右手の親指と人差し指でグラスの下の方をつまむ。どうにもこの持ち方は慣れないなぁ。奏矢を見つめる。グラスを合わせる。



 --乾杯。



 今日のチキンやケーキはお店で買ってきた。奏矢は作るって言ってたんだけれど、私の意見を押し通した。その時間を奏矢と話す時間にしたかったからだ。


 お店のチキンも……ケーキもおいしいけど、やっぱり奏矢が作ってくれた奴のほうが美味しいな。だって私の為だけに作ってくれるんだもん。それはすごく単純な事なんだけどやっぱり嬉しい。




 食後のシャンパンを喉に流し込む。喉を潤したいのは緊張のせいでもあった。

  

 奏矢に自分の気持ちを伝える事を決めていた。





 なんて伝えよう。すごく悩む。私の奏矢に対する気持ちは多分<好き>で一緒にいたいと思っている。でも奏矢が私に向ける物はそれと同じじゃない。感情が無いっていうのもある。それ以前に奏矢は女性の為に作られたアンドロイドなのだ。私のためにではない。たまたま私の所にやってきたのだ。女性に奉仕するのが奏矢の役目。私が好きといえばもちろん受け入れてくれるだろう。でもそれって作業的なもの?だって奏矢は主人の命令にNOとはいうはずないよね。



 でも、人間同士の恋愛だってもちろん相手の気持ちも大切だけれど、一番は自分が相手をどう思うか、まずは自分の気持ちが大切よね。私は奏矢のそばにいたい。とりあえずそれでいいのかもしれない。




 食器を片付けた奏矢が部屋に戻ってきた。そこに座って?とベッドを指差して少し離れて座った。



 「奏矢、あのね」


 瞳を閉じて小さく空気を吸い込み静かに少しずつ吐き出す。それからゆっくりと目を開けた。



 「奏矢とずっと一緒にいたい。奏矢の事が好き」


 奏矢は何も言ってくれなかった。お互いの目を見つめながら時間だけが過ぎていく。


 しばらくすると奏矢は私の膝の上に頭を乗せて寝転んだ。顔は向こうを向いていて見えない。


 ちょっとぉと言っても黙ったままだ。


 ねぇ、奏矢ぁ?


 奏矢ってばぁ?


 何度か名前を呼んだ後、ようやく奏矢が口を開いた。


 「膝枕っていいですねぇ」


 私が何言ってんのよ、というと奏矢はこちらに顔を向けた。


 その後ゆっくりと目を開けた奏矢は静かな口調で語りだした。



 「綾乃さんに秘密にしていた事が2つあります」


 




 

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