どこにいても
「ちょっと綿が多すぎじゃない?」
ミニチュアのクリスマスツリーを少し遠目に見つめながら、腕組みしている綾乃は右手の人差し指を顎へと当てて考える。
「このくらいでしょうか」
雪役の白い綿を少しずつ減らしながら奏矢は綾乃の顔色を伺った。
んー、そんなもんかなぁ。あとはてっぺんに星ね! しょうがないからそれも奏矢にやらせてあげるわ。そういって綾乃はお姉さんぶっている。
……に星だってば。
……や?
「奏矢?」
「ああ、すみません。何でしたっけ」
「てっぺんに星つけてね?」
かしこまりました。奏矢がそういって星をつけるとようやくツリーが完成した。
もうすぐクリスマスがやってくる。街は至る所に装飾を施されクリスマスソングが流れ、お祝いムード1色になっている。それは綾乃の心も同じであった。
奏矢と、初めて誰かと2人で過ごすクリスマス。自然と浮かれてしまうのも無理は無い。聖なる記念日に告白でもしちゃおうかしら。そんな事まで考えていた。
それが本当に<好き>なのかはわからない。でも一緒にいたいと思う。どこにいても奏矢の事を考えてしまう。たとえ相手がアンドロイドでも、そばにいてくれると安心する。自分が奏矢を必要としている。その事実だけで十分だった。
周りのムードに流されて浮かれているのも確かなのだが、少し気になる事もあった。
海に出掛けた頃からほんの少し気になっていたのだが、奏矢の口数が減った気がしていた。いや、口数が減ったというよりは、どこかボーっとしているような。
初めはプールに出掛けた時みたいに撮影でもしているのかと思った。色んな物を撮影してフォルダにいれて。その作業をしている時は奏矢は若干<固まって>いた。
またやってるのね。そう思って余り気にもとめていなかったのだが、最近<固まっている>時間が長くなってきた。人間でいうと物思いにふけっているというか、ボーっとしているというか。
さっきのツリーの時だって綾乃の話が聞こえていない感じだった。不安になって奏矢に聞いてみたものの、これで何度目ですか?本当に心配性ですね。奏矢はそういって笑っているだけだった。




